説明しよう
『今回のパターンは極めて想定外なので、今わかる事だけだけど……』
そう前置きして、ブルーは彩歌の今の状況を説明する。
『まず〝不老〟。キミはこの後、20歳ぐらいまで成長した後、老化しない』
「不老長寿……! 魔道士や悪魔が目指す、ある意味、究極の到達点……まさか魔法以外の方法で私が手に入れるなんて……」
彩歌は、喜んでいるとも悲しんでいるともとれる口調でつぶやいた。
『あと〝超回復〟。私の欠片は、キミの体を正常に保とうとする』
「怪我が、すっかり治ってる。魔力も、凄い速さで回復したわ……」
自分が怪我を負っていた箇所を確認する彩歌。
『〝耐久性〟も、上がっている』
「ちなみにブルー。今の彩歌さんだと、さっきの魔物の赤い玉の魔法、いくつぐらい受けられる?」
「赤い玉……あれは、煉獄の魔法。体の内側から沸騰して、爆発してしまう死の魔法」
へぇ……そんな恐ろしい魔法だったのか。通りで、ちょっとチクっとしたわけだ。
『アヤカが、今現在、受けきれるのは12発だ。13発で死亡する』
彩歌も僕も、ブルーの言葉に驚く、。
「すごい! そんなに受けても平気なの?!」
「少なっ! なんでそんなに弱めなんだ?!」
ほぼ同時に叫ぶ。
「ええっ! 少ないって……! 達也さんなら、あの魔法、いくつ受けられるの?!」
「大体、2000兆ぐらい……だったっけ?」
『あれから少し同化が進んだので、今は1999兆9661億9967万8821発だ。サバを読みすぎだぞ』
その数を聞いて、唖然とする彩歌。
『タツヤ。キミは完全に同化していなくても、地球とほぼ同じ強度を持つ。〝不老〟と〝星の強度〟は最も重要なので、いち早く獲得する特性なんだ』
なるほど。確かに、僕が死んじゃったら元も子も無いもんな。
『アヤカは導き手ではない。〝不老〟などは欠片の性質上、自動で受け継いだが、強度はオマケのようなものだ』
まあ、即死するような魔法を12回も受けられるだけで、驚くべきオマケなのかもしれない。
『あと、先程からちょっと勘違いをしているぞ? タツヤ』
「え? 勘違いって?」
『キミは〝いくつ受けたら死ぬ?〟と聞いたので、その数を答えたが、私が言ったのは〝同時に〟受けた時のものだ』
ブルーは、少し間を開けてさらに続ける。
『キミはあの赤い球を、1999兆9662億17万1487発〝同時に〟受ければ死ぬ』
あ、また増えてる。いや、そんな事より〝同時に〟って……?
『小分けに攻撃を受けても回復するさ。キミにも〝超回復〟は付いてるんだから』
マジで? ……本当に不死身だな、僕。
『ちなみにアヤカも、13個分〝同時に〟あのエネルギーを受けなければ、死なないよ』
「煉獄の魔法ほどの術を、13個も同時に撃てる悪魔や魔道士は、まず居ないわね」
彩歌はクスクスと笑う。
『今後、時間が経つにつれて、アヤカの回復力や耐久性は上がっていく。そして、様々な特殊能力を身に付けていくだろう』
「特殊能力?」
『今現在、タツヤが身に付けている能力は、救星特異点、不老、星の強度、摂食不要、呼吸不要、超回復、真空耐性、熱耐性、電撃無効、不眠不休、光合成だ』
最後のがちょっと気になるが、結構色々あるんだな。
「ブルー。〝救星特異点〟ってあれだよな。歴史は頑丈で、簡単に変えられないけど、星を救うためなら変更できるっていう……」
『そうだ、タツヤ。その特性があるから、キミは地球を救える』
「えっと……僕は、睡眠が要らないらしい。彩歌さんも、そうなるかもしれないし、ならないかもしれない」
『そうだね。この先タツヤが身につける能力の、5~6%は、アヤカも使えるようになるだろう』
彩歌はハッとした表情をして、呪文を唱える。
「HuLex Thel STaTs Ne」
『アヤカ、今のは、自分の能力の詳細を知るという魔法だな』
ブルー、よく覚えているな、呪文。
「ええ。頭の中に、詳細な数値で表示されるの。やっぱり……さっきは気付かなかったけど、生命力と守備力の数値が、文字化けしちゃってる……」
魔法が文字化けって。よっぽど規格外なんだな……
「他の数値も、かなり凄い事になってる……あと特記事項の欄に、不老と超回復と高耐久……それと、これは!?」
「どうしたの? 何か特殊能力が載ってる?」
彩歌が、驚いた表情のまま僕を見て、こう言った。
「救星特異点」




