遣わされし者の迎撃
ベレー帽の男が、店の入口付近の窓から、チラチラと外の様子をうかがっている。もちろん、看板は〝閉店〟にしてあるので、追加の客は入って来ない。
客も店員も、恐怖に引きつった表情で、両手を挙げている……大将を除いて。
「おいおい。大将、飛びかかりそうな勢いで、犯人を睨んでるぞ?」
ヒソヒソと彩歌に話し掛ける。
「そうね。でも、下手に動いたら、ここにいる全員が、危険な目に合うわ」
……それは僕たちも同じだ。好き勝手に暴れるわけにいかない。
銃なんかでは、僕と彩歌に傷ひとつ付けられないだろう。
けど、それに巻き込まれれば、他の人たちは無傷では済まない。
『タツヤに至っては、今、地球上にある核兵器を全て使っても、ほとんどノーダメージだ。しかし、タツヤ、アヤカ。今は私を介して話すんだ。通常会話はキミたち以外を危険に晒す事になる』
そうだった。日本語なので言葉は通じないけど、あいつらを刺激したら、状況が悪化するかもしれない。
……っていうか、核の総攻撃でも死なないのか、僕。
『何をしている。そこのガキ4人だ! こっちに来い!』
武装集団のひとりが、自動小銃を向けて怒鳴っている。
『タツヤ、4人だけがピンポイントで危険に晒されている。やはり〝歴史〟が修正を加えようとしているのは明らかだ』
昨日死ぬはずだった、ライナルト、ダニロ、ラウラ、ハンナの4人は、しなやかで頑丈な〝歴史〟に、殺されようとしている。
……しかし、同じ子どもの姿なのに、僕と彩歌が武装集団のご指名から除外されたのは何故だろう。
歴史さん、ちょっと強引過ぎじゃね?
『タツヤ。キミたちは、どう見ても外国人だ。言葉が通じない可能性があるからだろう』
なるほどな。万が一、ドイツ語が解らない子どもを人質にしたら〝ついて来い〟とか〝静かにしろ〟とか、命令出来ないという事か。
『タツヤ。歴史の修正は、時間と共に速度と強度を上げていく。早くしないと、さすがのキミ達でも、守り切れなくなるぞ』
確かに、4人の運の無さは、どんどんヒドくなってきてる気がするな。
『タツヤ、アヤカ、どうしよう……』
ラウラが小さな声で震えながら言う。
『みんな、心配しないで大丈夫。必ず助けるから。今は大人しく、あいつらの言う事を聞いて』
彩歌がそう言うと、4人は静かに頷いた。
『早くしろ! ぶっ殺されたいのか!』
ヒゲの男に急かされて、4人は立ち上がり、男たちのもとへ歩いていく。
『ブルー、4人の運命を変える方法は無いのか?』
もし、このピンチを切り抜けても、次のピンチがやって来る。4人を救うには、歴史を根本的にねじ曲げなければならない。
『考えられる方法は2つある。まずひとつ。〝地球の危機〟に4人を関わらせる方法だ』
4人が、ほんの少しでも、地球の寿命を延ばす方向に関われるなら、救星特異点の効果を受けられる。彼らの運命を曲げる事が出来るだろう。
しかし、オランダで出会った〝正体不明の敵〟が現れた今、4人が地球の寿命に関わってしまう事は、大きなリスクを背負うことにもなる。
『もうひとつは、別の特異点に4人を助けてもらう方法』
〝救世主〟の栗っち、〝機械仕掛けの神〟の大ちゃん、〝外来種〟のユーリ。
3人の特異点は、遠く離れた日本に居る。4人を救うには、少々、時間が掛かり過ぎるかもしれないな。
『ブルー、念の為に、栗っちと大ちゃんに、声を掛けておこう』
ユーリはまだ、ブルーを介した通信が出来ない。まあ、大ちゃんに伝えておけば、なんとかしてくれるだろう。
『タツヤ、ダイサクは丁度、ユーリと一緒に居る』
マジで? 確か日本は今、夜の9時過ぎぐらいだぞ?
『大波神社で、宴会中のようだ』
……何の宴会だよ。
とにかく、声を掛けてみよう。えーっと。
『栗っち、大ちゃん、ユーリ、聞こえる?』
『おー! 聞こえるぜー!』
『たっちゃん! どうしたの?』
『やー! たっちゃん! アヤちゃんはー?』
良かった。全員に聞こえている。
『ちょっと聞いて。実は、ドイツで事件に巻き込まれてるんだけど……』
僕は、昨日と今日の出来事を、手短に説明した。
『なんだよ、タイミング悪いなー! 俺、おととい、エストニアまで行ったんだぜー?』
大ちゃんは、ガジェットの修理をするため、大昔に落ちた隕石に含まれている〝地球に存在しない金属〟を採りに、近くまで来ていたらしい。
……で、エストニアってどこだっけ?
『変身して飛んでいけば、5~6時間で着くけど、それじゃ、時間かかり過ぎだよなー』
果たして、大ちゃんが来るまで4人を守り切れるだろうか。
……5時間あれば、歴史は、4人を皆殺しにするかもしれない。
『ねえ、たっちゃん、僕の〝救世主〟としての効果って、かなり〝ご都合主義〟な感じだよね』
『そうだな栗っち。救世主の能力は、ギャグ漫画も裸足で逃げ出す位に、ご都合主義だ』
『でね、もしかして僕が、たっちゃんと彩歌さんに、〝救世主として〟その4人を救って欲しいと、お願いしちゃえば、それ、僕の能力の範囲に入らないかな?』
いやいや、さすがにそこまで融通きかないだろ、マンガじゃあるまいし……
……まてよ? 栗っちが思い付いた事なら、あるいは?
『やってみようか、栗っち!』
マンガ並みにご都合主義な〝救世主〟の能力に、期待しても良いかもしれない。
救世主は、奇跡を起こすのが仕事だもんな。
『うん! それじゃ、いくよ? 〝お願い、たっちゃん、彩歌さん! ライナルト、ダニロ、ラウラ、ハンナの4人を、助けて!〟』
『主よ、仰せのままに』
『絶対に助けるわ!』
これでどうだ? 救世主の効果は現れるのか?
……あれ?
『タツヤさん? どうかした?』
『いやなんかちょっと、モヤモヤした物が、スゥッと晴れた気がして』
なんだろう? なんか少し、スッキリしたんだけど……まあいいか。
『これはすごいぞタツヤ。キミ達のステータスを表示するよ?』
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内海 逹也 Utsumi Tatsuya
AGE 11
H P 8888888888888888888888888
M P 13
攻撃力 889
守備力 8888888888888888888888888
体 力 151
素早さ 897
賢 さ 126
<特記事項>
救星特異点
不老
星の強度
摂食不要
呼吸不要
超回復
真空耐性
熱耐性
電撃無効
不眠不休
光合成
詳細表示
病毒無効
土人形 Lv87 ← NEW!
使役:火 Lv1 ← NEW!
使役:水 Lv1 ← NEW!
使役:風 Lv1 ← NEW!
使徒 ← LIMITED!
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藤島 彩歌 Fujishima Ayaka
AGE 11
H P 2071
M P 584
攻撃力 278
守備力 1798
体 力 153
素早さ 532
賢 さ 276
<特記事項>
救星特異点
魔法 Lv18
不老
高耐久
超回復
病毒無効 ← NEW!
魔界の管理者:Lv1 ← NEW!
使徒 ← LIMITED!
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うわ! 確かに、僕も彩歌さんも、すごい数値になってるな!
『タツヤ、それもそうだが、問題は、特記事項の一番下だ』
『……! 使徒?』
『そうだ。キミたちは、天使になったんだよ。期間限定だけどね』




