別次元生命体
メンバーの誰も、話すことを忘れた。
恐らく、件の恒星爆発が起こらなかったら、我々の星系は、数十年後に滅亡しただろう。
それ程の規模と速度を持った超密度の素粒子線なのだ。
「え〜っと、リーダー?リーダー?」
アンナから声を掛けられるまで、呼吸すら忘れていた。
リーダーがこんな事ではいけない!と、我に返った。
「はい、何でしょう?」
何でしょうも、無いものだ。
しかし、それ程の衝撃的な出来事だ。
「この度の出来事、と言うか、未然に防がれた大災害ですが、どの様に考えたら良いのでしょう?」と、アンナ。
「そうですね、事実としては、我々の天体は救われました。しかし、我々の常識では全く計り知れない事象の積み重ねによる結果に、他なりません。この度の恒星爆発を実行した種族は、恐るべき技術レベルの持ち主だと言わざるを得ません。そもそも、通常の恒星爆発で、あの規模の素粒子線を防ぐ星間物質を生み出す事は、ほぼ有り得ません。だとすれば、爆発の切っ掛けを与えた何かに寄って、結果に変化を及ぼしたと考えざるを得ませんね。その何かが、全く計り知れない要因な訳です。我々の技術レベルも、控えめにみても相当なレベルに有るにも関わらず、その基準を遥かに上回っていると言う事です。」
私の話を聞いていたボブが、
「大規模な化学反応の一種でしょうか?」
と、予測し得る"何か"に対する考察を述べた。
「そうですね、その可能性が一番近いとは思います。まあ、所詮一つのシステムの管理部門の人間では、科学者や研究者でもありませんから、これ以上の推測は困難ですね。」
と、多少自虐的な発言をしてしまう程、お手上げな状況である。
この度の恒星爆発に伴う命の管理情報の変動は、ライフシステムに破綻を来さなかった。
これすら、かの種族の仕業だったと考えざるを得ない。
さて。と私。
この度の事象を、出来るだけ理解する努力をしてみよう。
我々の科学力を遥かに超える技術によって、我々は救われたと考えるのは簡単ですが、ことは、そう簡単な話ではないですね。
そもそも、そんな桁外れな技術力を擁する種族が存在するだろう事実、それを意識すると、どうしても荒唐無稽な考えを持ってしまいます。
つまり、超常現象を意図して引き起こす技術とでも言ったら良いのか。
ファンタジーの領域に踏み込んでしまいそうになります。
リーダー、何が言いたいのですか?と、アンナが、焦ったそうに言う。
うん。
我々は、我々の持つ技術力は、ライフシステムを開発し、管理する技術力を有しており、その影響範囲は、あらゆる既に知られた(ここがミソ)探知、察知技術の及ぶ全空間の命全ての管理を可能としています。
しかし当然ですが、そういった要件は、全て我々の常識の範疇に留まっていて、そこから外れる場合は、荒唐無稽とか非常識と考えなければならない要件と言うことになります。
ですが、今回の事象は別次元生命体による活動である可能性が高く、そういった事象、現象は、我々の常識から逸脱した超常現象だと言わざるを得ません。
それを称して、ファンタジーの領域だと表現しました。
もし仮に、と、アンナ。
もし仮に、件の事象の実行者が別次元生命体だとしたら、今回は私たちの星域には利であったから良かったものの、敵対的な結果を及ぼすものだったら、戦慄を覚えます。
確かに、と私。
確かに、そうなった場合、我々はただでは済まない結果になるでしょうね。
ここまでのやりとりで、仲間には理解不能な、私の輪廻転生の経験からの発言に繋がった。
・・・・・。
続く。