ライフシステム#2
現世に於いて、地球年10年(都合30年)が経過した。
この現世換算で5年の間、文明レベルの生命の変動は多少有ったものの、現在の宇宙を揺るがすレベルの変動は無かった。
天文学的なスケールから言えば、現世に於ける5年間等、一瞬にも満たない期間だろう。
とは言え、その天体に生活する者にとっての5年間は、様々なイベントが有った。
この天体は、現在の地球の様な、政治的経済的宗教的不安定な状況はほぼ無い。
とは言え、それなりの事象は発生する(社会活動が有る以上、当然と言えば当然)。
最近の話題としては、所謂ブラックホールと言われる恒星の成れの果てに関して、天体としての性質とは考え辛い現象が具体的に確認されたとか、個人レベルの地上移動交通手段として、昆虫世界と同等の技術の乗り物は既に実用化していたが、その浮上及び駆動に要するエネルギーを、乗り物自らの自給自足で賄える目処がたったとか(エネルギー保存の法則や〜い)、これ、移動している限り、エネルギーの補給が不要な永久機関になってしまうんだけど、まあ、所詮は機械なので消耗はするが。
ちなみに、この天体に於けるエネルギーインフラの基本は核融合の進歩した仕組みで、廃棄物は発生せず、しかも無駄な熱も発生しない、環境負荷の非常に小さい仕組みを完成している。
この天体を含む星系に於いては、およそ10億年程前にダイソン球相当の構造物を廃棄し、全星系統一の基本方針として、出来るだけ自然に近い環境の中で生命活動を維持することを、最良と考えることとなった。
このエネルギーインフラを支えている質量が、未だに廃棄したダイソン球の残骸だと言うのは皮肉なものだ。
この考え方の背景は、ライフシステムを維持管理している事も決して無関係では無い。
この世界は、文明レベルの低い世界に於いては、所謂神様の世界と考えられる存在だ。
なぜなら生命を司る機関であり、その総量を維持管理する機関であるからだ。
そもそも、生命の総数が一定とは、どう言う事だろうか?
宇宙の成り立ちや、多重次元に関する知識の有る方にとっては、不可解な論理かも知れない。
しかし、では、生命とは一体何なのか?意識とは何なのか?子孫を維持するとは?これらの答えは、現在の地球に於いては宗教しか持ち得ていない(と考える)。
現時点で、現在の地球の意識レベルの種族に対して、正確に説明するのは困難だが、確実に言えるのは、ライフシステムは全宇宙の生命の誕生と死亡を管理しているという事のみだ。
その総数は、現在の地球の文明レベルでは認識不能な数学に基づいており、その規模を文字で表現することは不可能である。
しかし、その管理の基本はプラマイゼロであり、個別の生命の存在を正確に認識管理している。
どの次元の、どの領域の、どの島宇宙の、どの星系の、どの天体に存在しているのか?
但し、その生命を有する生命体の状態は管理も感知もしない。
あくまでも、誕生と死亡だけの管理だ。
それから、もう一つ、存在バランスも重要な管理業務である。
極端な生命数の偏りは、生命活動の破綻に繋がる。
従って、生命活動を維持出来る領域範囲(ハビタブルゾーンを持つ星系等)に於ける、最大生命数
をある割合に維持する事で、安定した生態系の維持に繋がる。
勿論だが、天体の進化途上に於ける生命の爆発時期は、必要な過剰状態(自然淘汰に繋がる状況)なので、その状況は無視する(衰退時期の生態系とのバランスは取れるので、無視が可能。但し、プラマイゼロの原則は不変)。
ハビタブルゾーンを持つ天体に於ける生命の進化の過程は、ほぼパターン化されていて、概ね天体の誕生から地球年で40億年程度経過すると、安定的な生態系に収斂する。
事ここに至って、この天体はライフシステムによる詳細な生命管理下に置かれる(システムによる介入が発生する)。
・・・・・。
続く。