ライフシステム
おぎゃー(記号表記が、面倒なので省略)!?・・・っと、今度はどんな世だろう?
ちなみに、この世では親が居る。
しかも、性徴(見た目)の異なる両親である。
とは言え、嬰児では話が進まないので、少しスキップしよう。
・・・・・。
現世に於いて、地球年20年が経過した。
この天体の公転周期は地球年換算で2年であり、ちょうど10歳になった。
今度の世は、なんと、かの組織が存在する天体に転生していた。
現世の文明ヒエラルキーの最上位に位置する種族に転生し、両親の庇護のもと、非常に居心地の良い子供時代を過ごす事が出来た。
なお、念のため記述すると、私の種族は、そう、・・・、グレイ?!、いやいやいや、まあ、霊長類の一種と考えて良いだろう。
ちなみに私は、この種族の行政中枢地区に隣接したクローン栽培エリアで誕生した。
従って私の両親は実の親ではない。
現在の日本で言うところの養父母となる。
しかしこれは、この種族に於ける子育ての仕組みとしては一般的で、交配に頼らない(ランダムで不安定な遺伝子組合せを持つ子孫発生の排除のため)安定した子孫維持確保システムの、ある種の頂点と言って良い仕組みだろう。
この種族に於ける成人年齢は5歳(地球年10年)であり、個人の持てる能力に応じて、早くから活躍の場を与えられる環境にある。
私は、その膨大な経験に基づく知識により、成人以前より要職に関わる事になっていた。
私の場合、教育課程では数回の飛び級、就職に関しても数回の抜擢により、この年齢では異例な、職業に就いている。
現在はライフシステム中枢制御区域のシステム維持管理部門のリーダーである。
・・・・・。
「おはようございます!」1XXXX(名前の日本語表記は不可能だが、男性に相当する性徴の持ち主なのでボブと呼ぶ)から声がかかる。「おはよう。今日はNN星系で超新星爆発が有ったから、死亡フラグの受信が大量に有ります。システムオーバーフローに注視してください。」「了解しました!フラグフロー監視コンソールのデータを確認して報告します。」「そう言えば、」2XXXX(これまた名前が日本語表記不可能のメンバー、女性に相当する性徴の持ち主なのでアンナと呼ぶ)からの報告を聞く。「WW星系の海洋惑星???(仮にアクアリウム星と呼ぶ)で破壊的な富栄養化状態が発生し、破滅的な規模でプランクトンが発生しそうです。莫大な誕生フラグの送信が予測されます。」複数の惑星を巻き込む超新星爆発とは言え、その星系に居住していた生態系は、ほぼ避難を完了していて、さほど大きな被害は無いだろうと考えられる。天体生命は複数失われただろうけど。それに対し富栄養化状態は、見過ごせない事態だ。そもそもアクアリウム星(スケールは、太陽系の土星程の規模)は、生命活動の活発な惑星で、生命の楽園と言っても過言ではない所だ。そこで発生した富栄養化状態となると、ミクロン単位の生命が、惑星を覆う勢いで繁殖してしまう。ライフシステムの処理能力を心配するレベルのトランザクションの発生が予測される事態だ。
「アンナ、フラグフロー監視コンソールで、アクアリウム星への誕生フラグ送信と、同時に死亡フラグ受信の監視を強化してください。」
私は、アクアリウム星が大規模な誕生フラグオーバーフローと死亡フラグオーバーフローを同時に起すと予想し、緊急処置の準備を開始した。
まあ、結論的には、現在の地球の技術水準では達成していない量子コンピュータに相当するシステムが個人レベルまで普及している世界なので、フラグオーバーフローを捌く程度でシステム障害など、起こり得ないんだが。
ボブもアンナも、ほぼ日常的な負荷集中なので、落ち着いたものだ。
注意すべきは、島宇宙同士の衝突だ。
一般的に島宇宙同士の衝突は、星間距離の大きさから問題になる事は、ほぼ無いと様々な研究から言われていたが、確率の問題で破滅的な災厄になる場合も有る。特に、島宇宙の中心部同士が衝突する場合は、連鎖的な災厄に見舞われる可能性も有り得る。
そうなると、然しものライフシステムでも、捌き切れない事態に陥るかも知れない。
とは言え、既に数億年に渡ってシステムトラブルの発生が無いことから考えると、まだまだ余裕が有るのだろう。
このシステムの設計者の技術水準は、計り知れない。
・・・・・。
続く。