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ミニヨンウォーズ 教室の皇女と高校生ヒーローの3人  作者: ドットオー
第1章生活安全部編
7/52

第7話「拾われた野良犬」

30階はあろう、とある高層マンションの20階部分から、"ドーン!!"と窓を冊子ごと吹き飛ばす大きな爆発が起こる。


***

早朝

爆発のあったマンションの前では警察の捜査員たちが慌ただしく捜査にあたっている。

通勤通学の時間帯のためか、辺りはサラリーマンやOL、学生たちの野次馬で騒然となっている。

張られたKEEPOUTの規制線の外から焼け焦げたマンションを眺める、火条ツカサと火条アルテ。


***

キサヒメ学園生活安全部部室

「爆発なんてこの街でかつてない大事件だ、さっそく生活安全部出動!」

日常の中に起きた非日常の事件にツカサは浮き足立っている。

「僕もこの街に何かとてつもない危機が迫っているようでならない」

と、ウルヴァが続ける。

「少し落ち着け、とにかく聞き込みの場所から確認するぞ」と、直江尊は地図を広げる。

「ラルフは、被害者周辺の情報を集めてくれ」と、パソコンを操作しているラルフにも指示を出す。

「了解!」

「学園とこの街の日常を守る、それが私たち生活安全部です!」

「よっしゃ、燃えてきたぜ」

「お待ちなさい!」と、お嬢様特有の高笑いをあげながら部室に入ってくる、フェリス・グレモリーと氷城冷菓。

「おはようございまして、生活安全部のみなさん。相変わらずしけたツラの集まりですわね。

あなた方にとてもおあつらい向きの事件をお持ちしましたの」

フェリスは、「コレですわ」と、胸元から取り出した一枚の写真を尊の鼻先に突き付ける。

写真には、ひとりの女子中学生が写っている。

「この娘が3日前から行方不明なの。探し出してちょうだい」

「だったらまず警察に頼め。ガチな事件じゃねぇか」

「その警察が本気にならないから頼んでいますの。ましてや昨日の爆破事件が起きてしまっては、そっちの方に掛かりきり。取り合ってもくれません」

「断る」

「一年くらい前からかしら、この街で女性の行方不明事件が相次いでいるの。これで11人目。その女性達は未だ見つかっていない。

なぜか警察も本気で取り合わない、もはや都市伝説扱いですわ。どう?興味が出てきました?」

アルテがフェリスに噛み付く。

「ちょっと待って下さい。生活安全部の部長はこの私です。部長の私を差し置いて部の活動を勝手に決めないで頂けますか?」

「私は理事長。立場をお考えになって」

「私は、グリティシア王国の第一皇女!立場を考えていないのはあなたの方・・・」

フェリスは、人差し指でアルテの口を塞ぐ。

「あなたは、火条アルテ。口には気をつけなさい。この国では、ただの一般人だということ。そしてグリティシアの名を出せば

私は、あなたを警察に突き出さなくてはいけないということ。かわいい生徒を警察に突き出すようなマネ、理事長の私にさせないで。

お・ね・が・い」

「私からも頼む。元いた学校の同級生の妹なんだ」

「(ため息をついて)仕方ない。引き受けてやる」

「よろしい。あと爆破事件は、警察のお仕事です。首を突っ込まないように」

「ええ〜、マジかよ」と、肩を落とすツカサ。

「ラルフ、一年前からの失踪者の情報集めてくれ」

「了解。もうやってる」

「さすがだな」

「では、失礼しますわ」


***

キサヒメ学園 廊下

「生活安全部がどんな活躍しているか見ものですわね。冷菓」

「はい」と、背後でフェリスを睨みつける、冷菓。


***

キサヒメ学園のある地区を管轄とする警察署では、爆破事件の捜査会議が開かれようとしている。

捜査会議室

ざわざわと用意された会議机につく刑事たち。

「先輩聞きましたか?鑑識の結果。被害者、腰から真っ二つに斬られていたみたいですよ」

若手刑事が、ベテラン刑事の本田に小声で話しかける。

「猟奇殺人って奴か。参ったな」

「しかも、たった一太刀で」

「一太刀?いったいどんなバケモンなんだ」

「先輩!アレ見てください」

ひな壇席の方を指差す、若手刑事。

指揮を執る管理官と一緒に入ってくる、安守公彦官房長官。

「何で官房長官が?」

安守は席に着くとマイクに向かって話しをはじめる。

「今回の爆破事件で、政府の重要官僚が殺害された。よって本件を第一級テロと認定する!

犯人は、元国際警察所属のガルド・ゲイザーと認定した」

ガルドの写真が安守の背後のモニターに映し出される。

ボサボサ長い髪で目元は隠れ、野獣の様な雰囲気が漂う男だ。

「奴は、かつて大戦時代、人斬りとして恐れられている。心して掛かるように」

「マジかよ・・・」


***

キサヒメ学園 生活安全部部室

ホワイトボードに失踪した女性たちの写真が貼り出されている。

10代〜20代の女性たちばかり、OLから学生、職業は様々だ。

共通点を見つけるため、部室にひとり残った尊はホワイトボードにかじりついて見ている。

「大変だ!生活安全部来てくれ」と、慌てた様子の生徒会長天影乃アカネが入ってくる。


***

体育館と校舎との間にできた隙間の物陰辺りに、生徒たちの人だかりができている。

尊は、生徒たちの間を割って中に入って行く。

そこには左腕から血を流した男が、校舎の壁にもたれかかり、しゃがみ込んでいる。

アルテとサヨが男の止血をしている。

「(サヨに)警察に連絡は?」

「待ってくれ。俺は警察だ」

男は警察手帳を見せる。

手帳には、男の証明写真とガルド・ゲイザーと名前が書かれている。

「捜査の途中ヘマしてこのザマだ。少し休ませてくれ」

「なら、まず救急車で病院へ」

「あまり騒ぎにしたくない。俺を斬りつけた奴が、まだ近くで俺を探しているかもしれない」

「それじゃあ、あなたがいることで生徒たちが危険な目に合うかもしれないってことじゃないか⁉︎

今すぐ出て行ってくれ」

「待って下さい生徒会長。ケガを負った人を放って置くわけには行きません。尊、生活安全部で

何とかできませんか?」

「それでも生徒の安全を守る生活安全部の部長か⁉︎ケガ人を放って置けないのは分かるが、生徒を危険に晒すわけにはいかない」

「待て生徒会長。先生、この人を保健室で手当てして下さい。あとは生活安全部の部室で匿う」

「なぜだ尊?お前だったらこれがどんなに危険ことか分かるだろ!」

「悪いな。ボロ雑巾みたいになった奴は放って置けないんだ。捨てられた犬みたいでな」

「尊・・・」


***

キサヒメ学園生活安全部部室

治療を終えたガルドがホワイトボードに貼られた女性たちの写真に目を留める。

「お前たちも、この事件を調べているのか?」

「何か知っているのか⁉︎」

「ああ、この女性連続失踪事件を追っていた。この中学生の佐古井リルアもそうだ。

一緒に探していた担任教師の巻坂ハルトも行方が知れない」

ガルドは取り出した巻坂の写真をホワイトボードに貼る。

「高校生たちが興味本位で調べるには少々厄介だぞ。この事件は」

「・・・」

「巻坂は、佐古井リルアが最後に目撃されたレッドワイズの溜まり場を訪れて、

連中に絡まれているのを目撃されたのが最後だ。俺もその情報をもとにレッドワイズに接触を試みたが

突然現れた銀仮面の男にやられてこのザマだ」

「銀仮面の男だと⁉︎」

「何だ知っているのか」

「ああ、あんたを助けた金髪のお嬢様もその銀仮面の男に襲われたことがある」


***

ツカサとラルフは市街地で失踪中の女子中学生=佐古井リルアの情報を求め探し歩いている。

ビルとビルの間の路地を進んでいると、ツカサのスマホに尊から着信が入る。

「これから送る写真の男を探してほしい」

「男?探すのは女の子じゃないのかよ」

「佐古井リルアの担任だ。一緒に送る地図に廃工場に向かって来れ。

レッドワイズのアジトになっていてそこに捕らえられている可能性がある」

「レッドワイズ⁉︎」

ツカサは、スマホに送られて来た男の写真を確認する。

「どういうことだ一体」

「分からん。とにかくレッドワイズに話しを聞いた方が早いってのは確かだ」

尊との通話が切れると、遠くから「助けてくれ〜」と、男の声が聞こえて来る。

男の声と伴に"ズシーン"と大きな地響きがする。

男の声が大きくなるにつれ、地響きも大きくなる。

ツカサとラルフは、振り向くとビルとビルの間から

巨大なロボットの拳に握られた男がヒョイと姿を現す。

「いたぁぁあああああ!」

捕らえられている男はまさしく、佐古井リルアの担任、巻坂ハルト。

ロボットは黄色と黒の虎柄のボディに頭部には針のように尖った巨大な

二本のツノがある。

「さぁ、ボルタス。思いっきり暴れようよ。楽しからさ」

と、コックピットのレッドワイズ幹部ルークが不敵な笑みを浮かべ

操縦している。

ボルタスの右腕から電撃が放たれ、駐車している車やビルの外壁を次々に破壊する。

強力な電流が流れたことで、付近のオフィスや商店の電化製品は故障、

信号機も作動しなくなり交通事故が多発。街中はパニックとなる。

「さぁ、さぁ、じゃんじゃん暴れちゃうよ」

興奮が収まらないルーク。


***

地下室の方へと走っている尊。

後ろからアルテが「尊!」と、追い掛けてくる。

「(息を切らして)先ほどはありがとうございます。尊」

「・・・」

「正直驚きました。情に流されない尊なら、あの方を警察に突き出すと思っていました」

「追い掛けてきてまで、俺をディスりに来たのか?」

「ごめんさい。そういうわけではなくて、皇女としての性でしょうか、私はあの様に傷ついた方を見ると

どうしても放って置けなくて。ご迷惑お掛けします」

「俺は大戦の影響で小さい頃から東京のスラム街で育った。血の繋がらない兄妹たちと一緒に暮らしていた。

みんな薄汚い格好して、食べるものにありつくためボロボロになりながら必死に生きていた。あいつ見てたら

あの頃の俺たちを思い出しただけだ」


***

ボルタスは、四方八方に電撃を放つ。

すると、ボルタスにライドファイヤーの跳び蹴りが浴びせられる。

「やっぱり出てきたね。今日は負けないよ」

そして上空からは、フライトモードのAGX-Ⅱの砲撃が飛んでくる。

「また新しいのだ!(はぁ、はぁ)君たちはどんな殺され方が好みだい?痛いの?苦しいの?すぐ死んじゃうのはダメだよ。

面白くないから。じわじわと、悲鳴をあげていきながら人が死んでいくそれが僕の好みさ。

人が痛くて悶えるあの悲鳴。たまらないよねー。あれはいつ聞いても心地いい」

ボルタスの電撃がライドファイヤーを襲う。

「答えは簡単だろ。殺られる前に、お前を倒す」

ライドファイヤーのパンチがボルタスを捉える。

AGX-Ⅱもロボットモードになり加勢する。

「その人を返してもらう」

「そういえば、このおじさん邪魔だね。戦いにくいや」

ボルタスの体から無数の電気ケーブルのようなものが出てきて、天海の全身を縛り上げる。

天海は、そのままボルタスの体内に埋め込まれてしまう。

「クソ!AGX-Ⅱ、さっさと片付けるぞ」

「了解!」

ライドファイヤーは、拳銃型の武器ライドブラスターを取り出す。

AGX-Ⅱも取り出したビームソードで斬りかかる。

ボルタスは、電磁シールドを張ってその一太刀を受け止める。

そしてライドブラスターから放たれた銃弾も簡単に弾き返してしまう。

「じゃあ、今度は僕の番」

ボルタスは両腕を前に突き出し、腕からレール状のパーツが伸びる。

「電磁砲発射!」

ボルタスから放たれた電磁砲に吹き飛ばされるライドファイヤーとAGX-Ⅱ。

道路はエグレ、熱で所どころアスファルトが赤くなっている。

「ヤベェ。こんなの何発も撃たれたらこの街は終わりだ」

「これじゃ、簡単に終わっちゃうかな。じわじわとじわじわと」

攻撃で動けなくなったライドファイヤーとAGX-Ⅱを電気ケーブルのようなもので縛り上げて、電流を流し込む。

「どうだい?僕のビリビリは?」

「うあぁああああ!」

「はは、これだよこれ。この声が聞きたかったんだ」

「このままじゃ、回路が」

「チクショウ」


***

爆発のあったマンションの一室。

ウルヴァは焼け焦げた室内をじっくりと観察している。

「(個人的に気になることがあって見に来てみたが、やはり・・・)」

ウルヴァはふと、足元に光る物体が落ちていることに気がつく。

手に取ってみると女性の髪飾りのようだ。

ウルヴァは、"ハッ"と、胸元から佐古井リルアの写真を取り出して確認する。

リルアの付けている髪飾りと拾った髪飾りが同じことに気付く。

「二つの事件は繋がっていた・・・」


***

ボルタスから伸びる、電気ケーブルのようなものによって縛られ動けないでいる

ライドファイヤーとAGX-Ⅱ。

「このままじゃ、マズイ」

「ねぇ、次は何して苦しめてほしい?ねぇ」

"ズドーン"と、ボルタスの背中に弾が被弾する。

「なんだよ」と、ボルタスが振り返ると、

バイクモードのソードライダーに乗った、ソードアーマーとローズファリテがボルタスに向かってくる。

ローズファリテが飛び降りて、素早くロボットモードに変形するソードライダー。

ライドファイヤーとAGX-Ⅱを縛る電気ケーブルを瞬く間に斬る。

「大丈夫か?」

「すまない、ソードライダー」

「奴の電気は、あの頭のツノが電極芯なっていてあそこから生み出されているようだ。まずはあれを斬り落とす」

ソードライダーとAGX-Ⅱは、二手に分かれ左右からボルタスに斬り掛かる。

「させないよ!」

ボルタスは電磁シールドで2機を弾き飛ばす。

ビルに叩きつけけられる、ソードライダーと、AGX-Ⅱ。

ソードライダーは武器のライダーブレードをボルタスに投げ付ける。

磁石化するボルタス。「ざ〜んねん」と、ライダーブレードは、刺さることなく、ボルタスの体に張り付いてしまう。

だが、壊れたビルから巻き上がった砂煙や瓦礫がボルタスに大量に吸い寄せられこびりつく。

「しまった!」

「今だ!ツカサ」

ライドファイヤーは、3機のアビリティマシンの大型ジェット機=ライドアビィオン、消防車=ライドラダー、

救急車=ライドエイドと合体してファイヤーグリフォンとなる。

ファイヤーグリフォンは背中に収納されたライドラダーのハシゴを腰に移動し、

そこから大型の剣を引き抜いて構える。

「これでトドメだ」

剣先に炎を纏って飛翔。振り上げた大剣を瓦礫で身動きのとれなくなったボルタスの頭上に振り下ろす。

ボルタスは、真っ二つになり、大爆発を起こして塵になる。

大剣を納め、悠然と佇むファイヤーグリフォン。


***

ボルタスの残骸から上がる炎の中から、ローズファリテがリルアを抱えて出てくる。

ツカサ、尊、ラルフが駆け寄ってくる。

金髪をしたリルアを見た尊は、「首筋を確認するんだ!」と、彼女の髪を

搔き上げると、首筋にコネクトシールを発見する。

「これって理事長の・・・」

「君たちー!」と、ウルヴァとサヨがやってくる。

ウルヴァは、息を切らしながら「これを見てくれ」と、ツカサたちにスマホを見せる。

スマホで再生された動画には、爆発のあったビルに入って行く、巻坂とリルアの姿。

「爆発が起こる1時間前に撮られた防犯カメラの映像だよ」

「そういえば、捕まっていた先生はどうした?」

辺りを見回すツカサたち。


***

スメラギ国総理公邸

ベッドの上の内閣総理大臣華僑院玄徳。

「失礼致します」と、グールド・グレモリーが入ってくる。

「お体の加減は如何でしょうか?」

「障ない」

「安心致しました。では、神に従わぬ天使たちはどのように?」

「始末して構わん」

「はっ」


***

廃工場

背中に大きな切り傷を負い、息を切らして何かに追われている、巻坂。

右足の太ももを切りつけられその場に倒れ込む。

振り返ると日本刀を持ったガルドが立っている。

「よ、よせ、天使の私にその様なマネをしたら、神が黙っていないぞ」

「ハニエル、貴様にはこれでは足りないか」

日本刀を投げ捨て、右手に魔法陣を発現させる。

魔法陣の中から刃先がノコギリ状になった巨大な剣を引き抜く。

「喰ってやる」

悲鳴を上げる巻坂。

ツカサたちが駆け付ると、ガルドの剣は巻坂の頭上に振り下ろされ、真っ二つになる。

尊は、刀を引き抜き「キサマー!」と、ガルドに斬り掛かって行く。

ガルドの姿を見たウルヴァは言葉を溢す。

「やはりお前だったか神殺しのガルド・・・」









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