第48話「女たちの戦い」
回想
日本国・エド城(徳川ヒデタダの居城)・広間
「私ひとりの手で育てていくとお約束したのに、結局頼ることになり申し訳ございません」と、徳川ヒデタダの前で泣き崩れるキサヒメ。
「顔をお上げくだされ。キサヒメ」
***
若き日のウルヴァはキサヒメの目の前に刀を投げ捨て「勝手にしろ」と、出て行く。
泣き咽ぶキサヒメをヒデタダは抱きしめぽんぽんと背中を叩く。
「のちのことは心配するな。儂が面倒を見る」
「それはなりません。ヒデタダ様。お腹の子は私ひとりで育てなくてはならないのです」
「キサヒメ⋯⋯」
「私の贖罪です」
***
「私が母に捨てられた経験からあの子を必ず育てると決意したのにもかかわらず、あの日の母と同じ結果となってしまいました。
子供育てながら働ける環境がなかなか見つからなくて、今は、あの子に食べさせるのがやっとのことです」
「もうよい。案ずるなキサヒメ」
キサヒメの母は、幼きキサヒメをアマテラスの神社の前に置き去りにして捨てたあと、自ら命を絶っていた。
かつてのようにヒデタダはキサヒメを抱きしめぽんぽんと背中を叩く。
ヒデタダは手で触れてキサヒメが当時と違いひどくやつれていることを理解した。
「マサユキと言ったか。儂によい考えがある」
***
「なりませぬッ!」と、激昂するお江与の方。
「よりによってキサヒメを側室になどと。私は認めません!」
「聞いてくだされ、お江与様」
***
回想
「儂によい考えがある」
「?」
「儂の側室となりなされ」
「私がヒデタダ様の⋯⋯」と、戸惑うキサヒメ。
「あなたをあなたの母上と同じ道を辿らせたりはしない。マサユキは小姓ではなく儂の子として育てる。それにはあなたという母上がちゃんといなくてはの」
***
「考えられませぬ。侍女だった分際で側室など。考えられませぬ! 考えられませぬ! ヒデタダ様は、なぜこのような屈辱を私に!」と、ヒデタダの周りをぐるぐると回って動揺を隠しきれないお江与の方。
「落ち着きなされ」
「あの者は人間ですぞ!」
言い放ったお江与の方の言葉に「江ッ! 」と、ヒデタダは怒鳴る。
年上で位も高いということもあり、お江与の方に対して今まで声を荒げることもなかったヒデタダの激昂にお江与の方は目を見開いて驚く。
「もとはといえばお前がウルヴァを陥れるためにキサヒメを無理矢理結婚させようとしたことがきっかけではないか! そなたのしたことによって幼きキサヒメの子が不憫に生きている! これはそなたの罪じゃ!」
お江与の方は、大きく開いた口を震わせながらその場に泣き崩れる。
***
飛行型海賊船ハウンドシップの船内
「これがヒデタダ公から聞いたグールド・グレモリーの過去だ」と、生活安全部一同(火条ツカサ、直江尊、織田ラルフ、黒雛かなみ)と月代サヨにグールド・グレモリーの生い立ちを語るキャプテン・バロック=冠庭トオル。
「グールド・グレモリーは、レオノールでの一件で地球の記憶を手に入れた。だがそれは記憶の一部でしかない。先代が身を呈して地球の記憶をバラバラに破壊したからな」
「(尊)あんたが言うように生活安全部を潰そうとしているのがグールド・グレモリーなら、あの男はその力を使って何を企んでいる?」
「できることはただ1つ。歴史の改変だ。だが奴が手に入れた記憶の範囲だけでは自分の生きた人生分までしか遡れない。そこから逆算できる未来予測も限られる。ましてやお腹の中にいる頃の記憶が見れたとしても手出しすることができない」
***
ベッドの中で裸で抱き合うグールド・グレモリーと芽衣姫。
「それで母上様は?」
「ヒデタダ公の身を寄せてすぐに病に伏せて亡くなった。女の幸せというものを手にした矢先だ。
母はおそらく自分の体がもう長くないとわかっていて、私をヒデタダ公に託したのかもしれん」
「?⋯⋯そのときの母上様のことはわからないのですか?」
「ああ。私が今、持っている記憶だけではな。それに、なぜあの男が母の名を冠った学園を作った理由さえ分からない。いや、理解できないと言った方が正しいか。母への贖罪のつもりか、だとしても不快だ」
「星帝も私と同じなのですね。家族が欲しい⋯⋯」
***
飛行型海賊船ハウンドシップの船内
「より良い条件での歴史改変。そのために星帝の力を行使してこれから世界の仕組み大きく変わるはず。そのとき必ず立ちはだかるのが生活安全部(お前たち)だ。そのための排除」
「⋯⋯」となる生活安全部一同。
***
東京やスメラギ国では着実に復興作業が進められている。
首都国ドルスでも、建設ラッシュがはじまっていて経済が活気付いていることがうかがえる。
世界中に流れるニュースも連日、グールノミクスによる経済成長の加速が報じられている。
***
首都国ドルス・国際評議場・閣議室
星帝グールド・グレモリー(国際警察機構長官兼務)らグールド政権の閣僚が集まっている。
閣僚の顔触れは渡辺ノブサダ、マーリュ・レオノール、レオス・アルベルトといった前政権と同じ役職のまま留任されている者に加え初入閣を果たした国々の首脳が選出されている。
この閣議で次年度に国際警察機構の国際警察省への昇格と、経済活性化のための大規模金融緩和案が決定した。それともうひとつ国際評議員の定数を45人に削減するという重要な法案が閣議決定された。
これは世界の国と地域を45のブロックに統合再編するというもので、各国の領土は全て国際政府のものとする案も含まれていてより国際政府の力が強まるものである。
***
3日後
スメラギ国・グレモリー家屋敷のリビング
紅茶を嗜みながらティータイムを過ごすフェリス・グレモリー。
そこへグールドが入ってくる。
「あら、お兄様! お戻りになられたのですね」
「すまない。しばらく家を空けてしまった」
「お忙しいのは何よりです。お兄様のお力で改革がどんどん進んでおられるご様子。さすがですわ」
「ありがとうフェリス。これから世界の姿が大きく変わる。やらなくてはならないことはたくさんある。フェリスが立ち上げた治安維持部隊も順調なようだな」
「はい。ウラヌス騎士団は市民からの評判も上々で生活安全部にとって変わるにふさわしいかと。ところでお兄様。改変後の世界では私はどのようになっているのでしょうか」
「(笑って)安心するんだ。君は改変後の世界でも変わらず私の妹だ」
口に運ぼうとしたティーカップの手が止まるフェリス。
「⋯⋯」と、言葉を失う。
***
華僑院神社(安守の屋敷) 広間の和室
ローブを着た天使たちが小柄で長い金髪の少女=タリウスに詰め寄る。
「アマテラス様! 今すぐ神罰大執行のご下知を!」
「ご下知を!」「大天使様まで失った今。我らにはこの手しかありません!」「アマテラス様!「アマテラス様!」と、口々に勇ましく声を荒げる天使たち。
天使たちを統括していた大天使ミハエルがフェリスたちの部隊、ウラヌス騎士団との戦いで戦死したため、抑えが効かなくなっている。
おどおどと言葉に詰まるタリウス。
持っているヘリオスの杖が震えている。
「待て、神が困っている」と、屈強で寡黙そうな男=レギルが割って入る。
「神様ちゃんは今はその時じゃないとお考えなんだよ」緑色の短髪で活発そうな女=エレナが答える。
「人間の分際で神の考えを述べるとは無礼な」
「は? 下等種のあんたらが上位種の私たちに舐めた口聞いたらどうなるか分かってんじゃん? 他の仲間みたいに死んじゃうよ」
「⁉︎」と、口ごもる天使たち。
「さぁ行くよ。神様ちゃん」
タリウスを隣の部屋に連れて行くエレナとレギル。
***
「神様、なぜ黙っている」
「私は神見習い。神様ではない」
「タリウスちゃんさぁ。神様は今あんたしかいないんだよ。もう少し神様らしくしなよ」
「だけど私は⋯⋯」
***
回想
スメラギ国・アマテラスの里
森の中にある神社が燃えている。
逃げ惑う天使や神たち=アマテラスの民
「どうしてだ⁉︎ アマテラスの里は絶対不可侵のはず!」と、神の男。
「行政執行だ」と、ブラックジョーカーバーサーカーフォームがゆっくりと近づいてくる。
周囲では、ヴィダルファングとシルバルドが神や天使を斬り倒し、社の破壊活動をしている。
炎の中を走って逃げるタリウス。
ヘリオスの杖を使って戦っているセリウスの姿。
「お姉様!」
「タリウス早く逃げなさい!」
駆けつける天使たち。
「セリウス様はアマテラス様の名を継ぐお方。お守りせねば!」
だが、セリウスと天使たちはブラックジョーカーバーサーカーフォームの圧倒的な力の前に散る。
***
華僑院神社(安守の屋敷) 広間の和室
「あのお方が我らの神で本当に大丈夫なのか?」
「口を慎め! 神になれるのはもうあのお方しか残っておらんではないか」
と話す天使たちの会話が隣の部屋にいるタリウスに聞こえている。
「私に神が務まるわけが⋯⋯」
「やれやれだね。タリウスちゃん。私たちに任せなよ。派遣されてきた私たちゼロノイドに」
不敵な笑みを浮かべるエレナ。
***
買い物の帰り道を歩く火条アルテ。
そこへ1台の黒塗りの車が止まる。
後部座席側のウィンドウが開いてグールドが顔を出す。
***
夜・高層ビルの上階にある高級レストラン
貸切でグールドとアルテの2人しかいない。
出された料理に手を付けないアルテ。
「アルテミア・グリティシア。今、グリティシア王国がどうなっているか聞き及んでいるか?」
「(小さく頷いて)ネットニュースの小さな記事を見つけました⋯⋯」
「旧国民は、君の言葉通りグリティシア帝国を建国しようと必死になっている。皆、君と新たな国王の帰りを待っている」
「⋯⋯もうツカサは国王ではありません⋯⋯離縁しましたから」
「私に提案がある。私に協力していただけないか?」
「?」と、顔をあげるアルテ。
「私は地球の記憶を手に入れた。協力して貰えば私がこれから創る改変後の世界でクーデターの起こらないグリティシア王国の世界線を構築すると約束しよう。
そうなれば、君は今でも豪華絢爛の中で踊る皇女様のままだ。あの頃の日常が取り戻せる」
「⁉︎」と、見開いたアルテの瞳に輝きが戻る。
エントラスで開かれたパーティーで国王である父が見守る中、社交ダンスを踊る自分の姿がよみがえるアルテ。
「私は何をすれば?」
「フェリスの立ち上げた部隊に参加して欲しい。それは君にとって新たな生活安全部となる」
「!」と、ハッとするアルテ。
「世界が改変されれば火条ツカサと出会い生活安全部として過ごした日常はどうなりますか? ツカサたちとの思い出は?」
「もちろん失われる。君にとってどっちの生活が大事だったのか。考えるのは容易いだろ?」
「そうですね。決意致しました」と、笑顔で答えるアルテ。
そのアルテの瞳に輝きはない。
***
オリジナル火条ツカサによって破壊され立ち入り禁止地区になっている瓦礫の市街地
そこへ陣を展開するフェリス率いるウラヌス騎士団。
慌ただしく戦闘配置をしているアーマードギア部隊。
伝令のアーマードギア隊員がフェリス、泊馬騎士、桐川トウカがいる本部に駆けつける。
「天使掃討作戦の準備が整いました!」
「ごくろうさま」
フェリスが次の指示を出そうと口を開きかけた瞬間、「指示は私が出します」と、芽衣姫がやってくる。
「ウラヌス騎士団の指揮官でありグールド・グレモリーの婚約者であるこの私が」
"婚約者"という言葉に振り向いて驚くフェリスと桐川。
芽衣姫は「変身」と、ギアコマンダーを翳して白い翼が生えて女神の姿をモチーフにしたアーマードギア=クイーン・オブ・クイーンに姿を変える。
そこへ「私もいるわ」と、ローズファリテが現れる。
「火条アルテ⁉︎」と、フェリスが驚いているところへエレナとレギル率いる天使の集団が攻めてくる。
「(エレナ)じゃんじゃん殺しちゃうよ」
戦うアーマードギア部隊と天使たち。
レギルは黙々とアーマードギア隊員たちを倒していく。
レギルの豪腕から放たれるパンチで殴られたアーマードギア隊員は一発で気を失ってその場に倒れてゆく。
エレナの拳がアーマードギアの装甲を破壊し、隊員の腹部にめり込む。
笑いながら「楽しい」と、アーマードギア隊員たちをどんどん倒していくエレナ。
「⁉︎ なんなのあの2人」と、驚くフェリス。
「かまってはいられません。天使は殲滅あるのみです」と、クイーン・オブ・クイーンは槍型の杖クイーンデスピアーを天に翳す。
すると、ウラヌス騎士団仕様のAGX-Ⅱツヴァイキャノンの部隊が20機、上空から現れる。
ツヴァイキャノンを地上に放って天使たちを蹴散らす。
身をかがめてうっとおしそうな表情のエレナ。
「ちょっと! レギル、飛び廻ってる蚊トンボ蹴散らしてきてよ」
「わかった」
AGX-Ⅱ部隊の前に10体のエンジェウスが飛来してくる。
その中でもひときわ大きい黒いエンジェウスにはレギルが取り込まれている。
対峙する両軍に割って入るようにビームが降り注がれる。
「何だ?」と、AGX-Ⅱツヴァイキャノンとレギルエンジェウスが見上げると
グレートファイヤーグリフォンパーフェクトモード、ソードライナー、AGX-Ⅱダークソルシエール、ドライグライナーの4機がやってくる。
「いくぜ!」と、グレートファイヤーグリフォンパーフェクトモードはグリフォンソードを手に目でとらえることのできないスピードで両陣営の機体をバラバラに切り裂く。
ソードライナー、AGX-Ⅱダークソルシエール、ドライグライナーも攻撃して両陣営の機体を破壊する。
「これで一気に! パーフェクトフルバースト!」と、グレートファイヤーグリフォンパーフェクトモードはブレストバーニングバーン、グレートグラビティキャノン、ドローンビットからビームを一斉射出する。
ビームによって両陣営の機体は全て破壊され、被弾したレギルエンジェウスは撤退する。
空を見上げたまま立ち尽くすタリウス。
空から落ちてくる機体の破片から逃げてくるアーマードギア隊員たちの前にローズファリテが立ちはだかる。
2丁の拳銃型武器ローズリボルバーでアーマードギア隊員たちを撃つローズファリテ。
「(フェリス)何をやっているの⁉︎」
「何って私は⋯⋯」
「あなたたちは一体何なの⁉︎」と、叫ぶクイーン・オブ・クイーン。
現れたファイヤーアーマーバーニングフォーム、ソードアーマー、シューティングアーマー、ドレスヴァイスブラッディがローズファリテを中央にして立ち並ぶ。
「俺たちは生活安全部だ!」
***
飛行型海賊船ハウンドシップの船内
「(キャプテン・バロック)これで全員揃ったな」
キャプテン・バロックの目の前にアルテを含めた生活安全部全員が揃う。
「(アルテ)はい」
「おかえりアルテ」と、ツカサはアルテの肩をたたく。
「では、これを見ていただこう」と、キャプテン・バロックはスマホをテーブルの上に置く。
すると画面が光り出し、ホログラムで小さな少女が立体的に浮かび上がる。
「はじめまして生活安全部のみなさん。私は地球の記憶です」と、ニコッとする少女。
「えッ⁉︎」と、驚く生活安全部一同。
つづく




