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第33話「望まれぬ後継者」

ドルス国際評議場 最上階にある広間

艶やかな着物やドレスに身を包んだ女性たちが集って交流会が開かれている。

これは"奥様会"、国際評議会の議員の妻、つまり各国のファーストレディーたちが交流する

年に一度のイベントである。

ワイングラスを手にあたりをキョロキョロとしている女性、渡辺ミナ。

ソファに腰を掛ける渡辺ノブサダを見つけると嬉しそうに手を振る。

遠くで手を振っている妻に気づいたノブサダ。

普段、表情ひとつ変えないノブサダもこのときばかりは口元を緩めて小さく手を振る。

扉が開いて星帝徳川イエミツが入ってくると割れんばかりの大きな拍手が起こる。

奥様たちと談笑するグールド・グレモリーのところに「保科マサユキ」と、イエミツの母・お江与の方が侍女を伴ってやってくる。

「お久しゅうございます。お江与の方様」と、深々と頭を下げるグールド。

「そなた、閣僚に取り立てて頂いたとはいえ、あまり兄であるイエミツ公に迷惑を掛けるでないぞ」

「心得ております」

「ふん。ところでそなた、今だ独り身だと聞く。このような場では不便であろう」

「お恥ずかしながら、少々窮屈に⋯⋯」

「どうじゃ? 妾の侍女、芽衣姫(めいひめ)だ」と、お江与の方は同行している侍女を紹介する。

控えめな雰囲気の芽衣姫は、恐縮しながらグールドの顔を見やる。

「は⋯⋯はじめまして」

「照れておるわ」と、笑うお江与の方。

「⋯⋯」となるグールドは芽衣姫の表情を見て、かける言葉が出てこない。

「母上」と、イエミツがやってくる。

「イエミツ公!」

再会を喜ぶお江与の方だが、イエミツは

「少し、マサユキと2人にして頂けないか」と、お江与の方たちをその場から離す。

「マサユキ、レオノールのことは私に一任してくれないか。あまりレオスを怒らさせるな。あやつにもメンツがある」

「⋯⋯」


***

生活安全部たちが乗った飛行戦艦・管制デッキ

火条ツカサ、火条アルテ、直江尊、織田ラルフ、レイラ・レオノール、柳生ロード、フェリス・グレモリー、天影台アカネ、氷城冷菓、泊馬騎士たちが上面がモニターとなっているテーブルを囲んで話し合っている。

「(ラルフ)国際防衛大臣が?」

「(フェリス)そう。レオス・アルベルトは、ヘイムダルの元代表取締役にして現筆頭株主よ。そのヘイムダルも所属する経済団体の後ろ盾があって今の立場にいるわ」

「(尊)経済団体出身の閣僚は他にもいたな?」

「(フェリス)ええ。国際外務大臣のランザ・ハーキンもそうよ。ハイオネスク地域の経済援助は、レオス防衛相とランザ外相の強い意向があるとされているわ」

ラルフはテーブルの上に鉄製の部品を置く。

「これ、レクシオの工場で作っていたものだけど、家電製品の部品じゃない。おそらく銃か何かの部品だ」

「(尊)なるほど。武器の開発や生産は、徳川政権以降、スメラギ国のような開発指定国以外は禁じられている。だが国際政府に加盟していないハイオネスク地域国は適用外だ。

経済団体のハイオネスク地域進出は、密かに武器を生産するため」

レイラは、ハッとする。

「保守的だったレオノール政府が差し伸べられた経済援助の手を取ったのは、軍事開発の技術を取り入れて自国の軍事力を強化するため⋯⋯この経済援助は決して民のためではなかった⋯⋯戦争のため」

レイラは、絶望の表情を見せる。

「(フェリス)それともう1つ。経済団体の目的は、ハイオネスク地域の統一を手土産にレオスを星帝にすること。

イエミツ公の任期は残りわずかだわ。経済団体の出身者が星帝となれば世界経済を支配することができる。ひいては規制緩和による軍事産業の復権も」

「私は⋯⋯私は⋯⋯経済援助が民の幸せになると信じて積極的に支持してきた。民の前にも立って演説もしてきた⋯⋯だけど⋯⋯」

泣き崩れるレイラをツカサたちは心配そうな表情で見つめる。

「大変!」と、アカネは持っていたスマホの画面を見せる。

「レオノールの国王が亡くなったって⋯⋯」


***

レオノール国・王宮

キャプテン・バロックとレオノール国の実権を握る摂政ハザルド・ハンキが話し合っている。

「(ハザルド)では、新国王の即位式は粛々と進める」

「(キャプテン)分かった」

「ハザルド様!」と、側近の男が慌てた様子で部屋に入ってくる。

「どうした?」

「急いでテレビを」


***

テレビやネットで星帝イエミツの記者会見の様子が報じられている。

「我々、国際政府はレオノール国の新国王にザドクルム・レオノール氏を推挙することを決めた。

ザドクルム氏は亡くなられた現国王の兄にあたり、まだ幼い皇子が政治を行うには負担が大きいと判断した」


***

「ふざけるなッ!」

会見の様子を大型テレビで見たハザルドは憤慨してリモコンを床に叩きつける。

「愚行を繰り返して、先代国王によって追放されたあの男を担ぎ出すとはッ!何を考えてる」

「如何だったかな? 私の会見は」と、テレビの向こうのイエミツが話しかけてくる。

「⁉︎」と、驚くハザルドとキャプテン・バロック。

「テレビ電話に切り替わったようです」と、側近の男がハザルドに耳打ちする。

「星帝と言えども他の国の後継者問題に口を出すとは如何なものか!」

イエミツは胸元から封書を取り出す。

「私の手元にはレオノール国国王宣下の依頼書がある。判断は我々に委ねられたと理解している」

「(ハバードを思い出して)余計な真似を」と、ハザルドは握った拳を震わす。

「ザドクルム皇子は、国際軍の警備のもと、丁重にそちらにお届けする。数時間のうちにそちらに到着するはずだ。王都の門を開いてくれることに期待する」


***

ドルス国・国際評議場・星帝執務室

イエミツとノブサダがいる。

「(ノブサダ)準備の方は整っております」

「これで王都までコマを進めることができる。あとは我々の勢力を前に戦うか、降伏するか、レオノールの判断を待つだけだ。できれば後者が望ましい。

いずれにせよハイオネスクの統一は叶う」


***

レオノール国領空

空を黒く覆おうほどのゼノデオの大群が飛行戦艦を囲んで飛行している。

その数は5千以上。その中にはシェル隊のAGX-Ⅱたちがいる。

AGX-Ⅱノーマル機を操縦する冠庭トオルは、モニターでレオノール国王都を発見する。

「見えてきた。王都だ」

レオノール国の王都は荒野地帯にあり周囲を高い壁に囲まれている。中央には王宮が確認できる。

ゼノデオを操縦するグランズ・ハルバンから無線が入る。

「この任務が終わればミツハたちはドルスに帰ってしまうんだな。少しでも長くいて欲しい。だから長引いてくれないかと願ってしまうよ」

「(巻咲ミツハ)あら、私を口説いているの? グランズ」

「(グランズ)私は正直者だな。ハハハハッ」

「(トオル)願いが叶ってしまったようだな、グランズ。長引きそうだ」

王都の方からAGX-Ⅱダークソルシエールを先頭に、ゼノデオ、デオドラスの軍勢が向かってくる。

海賊ハウンドの機体にはレオノール国の紋章が付けられ、そのほかの機体にはムルタル国、クンレイン国、ラシームド国の紋章が付いている。

「(トオル)いがみあってたはずの4カ国が手を結んだのか⁉︎」

「(ミツハ)こっちと変わらない軍勢じゃない!」」

「(グランズ)まずいな。帰還できるかも分からなくなった」

「(シェル・ルミナー)みなさんが余計なことばかり話してるからですよ!」

「(グラップ・ロッズナ)まさか、ここまでの戦力が用意できるとは。驚きであります」

両軍は上空でにらみ合いの状態になる。

突如、放たれた一筋のビームが国際軍のゼノデオを破壊する。

見上げる両軍の機体。

そこにはグレートファイヤーグリフォン、スーパーソードライナー、AGX-Ⅲの姿。

「(グレートファイヤーグリフォン)新生グリティシア帝国だッ!」


***

回想

生活安全部たちが乗った飛行戦艦・管制デッキ

巨大モニターでイエミツの記者会見を見つめる生活安全部一同。

「(ツカサ)いったいどうなっているんだ?」

「(レイラ)叔父上は、レオノールを追放されて以降、グルドラシルの庇護下にあったと聞いています」

「(フェリス)おそらく経済団体側の立場ね」

「(尊)ザドクルム氏が国王になれば経済団体の支配で奴隷が横行、だけど皇子が国王になれば摂政の政策によって貧困は続く。どちらに転んでも国民に明るい未来はない」

「(アカネ)私たちにできることはないの⋯⋯」

「国王になります⋯⋯」

レイラが、溢した言葉に驚く一同。

声を震わしながら続けるレイラ、「私が、私が国王になります⋯⋯私が身を引くとで民が救われると考えていました。だけど間違っていました。正しかったのはハバード・ロイジャーです。

私が自ら戦わないとダメだったんです」

「(ツカサ)レイラ⋯⋯」

「(アルテ)ならば、我ら新生グリティシア帝国があなたを国王に推挙するわ」

「(尊)どさくさに紛れて何言いだすんだアルテ。おまけに自分の野望まで挟み込んでないか?」

「お黙りなさい、尊。このアルテミア・グリティシアに任せなさい」

「(レイラ)まさかアルテさんが、あのアルテミア様⁉︎」

アルテはイスに深く腰を掛け足を組む。

「取引しましょう。あなたをレオノール国国王に推挙します。その代わりに旧グリティシア王国の旧領を我が新生グリティシア帝国の領土と認めなさい」

「(フェリス)そうね。国が後ろ盾に付けば国際政府も摂政派も放っては置けないはず」

「(レイラ)だけど、みなさんをこれ以上、レオノールの戦争に巻き込む訳には」

「(フェリス)ここまで来たらいっしょですわ」

「(アカネ)やりましょう。私たちがついているわ」

「みなさん⋯⋯はい。アルテミア様のご提案を承ります」

「よろしい。では我々にはまだ、この戦艦しか領地がありません。手始めにこの地を頂こうかしら」

「はい」

「(アルテ)ヒャハハハハハ」

「(尊)え?レイラのための方便とかじゃなくてマジなの? 相変わらずロクでもないときに闇落ちするな腹黒姫」

「(アカネ)そうだ。みんなでレイラの国を考えよう」

「(ツカサ)おお、いいな」

テーブルのモニターにレオノール国の地図を表示させて

「ここにダムを作りましょう」

「ここには学校を」

ツカサたちはワイワイとレオノール国の未来を地図に書き込む。


***

「(トオル)新生グリティシア帝国だと?」

「あの子たち⋯⋯」と、AGX-Ⅱダークソルシエールを操縦する月代サヨも生活安全部たちの登場に驚く。

「よっしゃこっちから行くぜ。ブレストバーニングバーンッ!!」

グレートファイヤーグリフォンの胸部から放たれたビームでゼノデオの群れが割れる。

続けてスーパーソードライナー、AGX-Ⅲの攻撃が次々にゼノデオを撃墜していく。

グレートファイヤーグリフォンも、グリフォンソードと、グランドランサーを両手に持って

凄まじいスピードでゼノデオを攻撃。

ゼノデオは反応する間もなく手足をもがれ、落ちていく。

「トドメだッ!」と、グレートファイヤーグリフォンから射出されたドローンビットのレーザービームが

ゼノデオを貫く。

空を覆っていた万に近いゼノデオが数分も経たずに3機のロボットに落とされた。

「(グレートファイヤーグリフォン)俺たちは宣言する! 新生グリティシア帝国はレイラ・レオノールを新国王に推挙する!」


***

ドルス空港・離陸間近の旅客機。

チケットを手に自分の座る席を探す黒崎京馬(キョーマ)


***

回想

グールドと電話で話しをしているキョーマ。

「君に頼みがあるレオノール国に行ってくれ。私もあとから向かう」


***

ようやく席が見つかったキョーマ。

キョーマの隣の席には女性が座っている。

「同行者は君か?」と、女性が話しかけてくる。

「あなたは⋯⋯」

その女性は桐川トウカ。


つづく






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