第30話「戦火の少年」
国際評議場 4F 国際軍フロア内にある取調室
国際軍隊員の男が黒い特殊部隊員の格好した男を取調べている。
その様子を国際軍大佐 直江カネツグはマジックミラー越しに見ている。
そこへ隊員が来て資料を手渡す。
「元国際軍の隊員です」
「⋯⋯」
手渡された資料は男の履歴書。氏名欄に"瓜生蒼太"と書かれている。
「(パイロットを残して人質ら130名が姿を消したハイジャック事件。実は、機内にはもう1人残されていた人物がいた。それはパイロットに拳銃を突き付け行き先を変更させようとした男」
***
回想
コックピットに乗り込んだNEXTAの隊員たち。
「ひっ!」と、慄いて両手をあげるパイロット。
隊員が振り向くと両手を上げて立っている瓜生がいる。
***
瓜生は取り調べに対して「これは正義だ」と、不敵な笑みを浮かべて答える。
***
国際評議場に繋がる道路
立ち込めた土煙が晴れると、グレートファイヤーグリフォンの爆撃によってできた大きな溝が道路を分断するように延びている。
立ち往生する黒塗りの車の車列。
車から飛び出して来た帯同者たちはレオノール国語で対岸にいる国際軍の兵士たちに罵声を浴びせる。
ついには足元に転がる小石を拾って投石をはじめる。
感情をむき出しに暴徒と化す帯同者たちをサングラスを掛けた男たちが「止めろ」と制止をかけている。
***
国際評議場 4F 国際軍幹部会議室
国際防衛大臣レオス・アルベルト、国際外務大臣ランザ・ハーキン、国際文部大臣イルタ・ハウザら
国際政府の閣僚らが巨大モニター越しに混乱する現場の様子を見つめている。そこにグールド・グレモリーの姿はない。
「(ランザ)民度の低さが露呈しますなぁ」
「(レオス)これで合併国の代表とは」
嘲笑う閣僚たち。
***
走る1台のパトカー。
運転しながら無線で連絡をとる黒崎京馬。助手席にはレイラ・レオノールがいる。
「そうなんです。レイラ、レイラ・レオ⋯⋯と、とにかくレイラさん、レイラ様が長官に会いたいと」
***
国際評議場 廊下
スマホを耳にあてて通話しているグールド・グレモリー。
「分かった。要人専用の地下駐車場を開けておく。そこに連れて来てくれ。エージェント」
***
国際評議場 4F 国際軍幹部会議室
官僚が入って来てレオスに資料を手渡す。
「ドルス空港にて撃墜されたゼノデオと3ヶ月前レオノール国派遣で投入されたゼノデオと型式が一致しました」
「そうか⋯⋯」
「それと拘束されたハイジャック実行犯の身元が判明しました。瓜生蒼太 24歳。彼もまたレオノール国で消息を絶った国際軍隊員の1人です」
「(ラドルフ大佐)何ということだ⋯⋯」
***
ドルス国際評議場 国際軍フロア 控え室
フェリス・グレモリー、天影台アカネ、氷城冷菓、泊馬騎士が待つ控え室に
直江カネツグ、直江尊、火条ツカサ、火条アルテ、織田ラルフの4人が入ってくると、
フェリスが苛立ちを隠せない様子で尊に詰め寄る。
「レオノール国の姫を中心にいったい何が起こっているのかしら?」
「3ヶ月前、レオノール国の治安維持のために派遣された国際軍の部隊が行方不明になっていた」
「それが今回のハイジャック事件とどう関係があるの?」
「(カネツグ)徳川イエミツ星帝宛にレイラ・レオノールを国王への推挙と、国際政府の閣僚に加えるようにとの内容が書かれた親書が届いた。
そこに同封されていたレオノール国新政府の閣僚名簿に消息を絶った国際軍の隊員たちの名前があった。それだけじゃない。
人質となっていたはずのレイラ・レオノールとその帯同者の一団が星帝との謁見を求めて大挙として国際評議場に迫って来ている」
「お兄様が依頼してきた車両の一団の足止めというのはそのことだったのね」
「(尊)死んだと思われていた国際軍の隊員は実は生きていた。そして今回の騒ぎを起こした」
「(カネツグ)ハイジャックの実行犯も消息を絶った隊員の1人だ」
「ちょっと待って。星帝にレイラ姫を国主と認めさせることが目的だったらハイジャックは何のために?」
「(カネツグ)そこまではまだ分からん」
「(尊)彼らは最新型の人型機動兵器が導入されるほどの実力部隊だった。その部隊を率いていたのが隊長のハバード・ロイジャー。彼を含めた30名による編隊だった。
だが、レオノールに入国を確認したのを最後に音信が不通となった。それから5日後、隣国グルドラシルに設けられた駐屯地に隊員2名の遺体が送られてきた」
「(フェリス)遺体が⋯⋯」
「(尊)それが何を意味しているのか。国際軍の敗北。そして世界の恒久的な平和を掲げ世界をひとつにしようとしてきた国際政府の大失態だ」
「(カネツグ)それによって我々は全員が生存している可能性を諦めて30名全員を殉職と判断した」
「だから表沙汰にはなっていないのね」
「遺体にはいくつかの写真が添えられていた」と、尊は数枚の写真をフェリスに手渡す。
写真にはボロボロの服装で瓦礫の上に立つひとりの少年が何かを訴えるような目で写っていた。
残りの写真もレオノール国民の日常が写し出され、どれも生活水準の低い環境で暮らしていることが見て取れる。
「(ツカサ)よくわかんねぇけど、みんなとにかく姫様を救出しようぜ」
「(アルテ)そうですね」
「(フェリス)依頼は果たしましょう」
「姫様はここだ!」と、グールドがレイラを連れて入ってくる。
***
同・地下通路
口を真一文字に結んで進むハバード・ロイジャー。
***
回想
国際評議場に繋がる道路
「ハバードさん、民衆を止められません」
「想定内だ」と、ハバードは車のドアを開けて
「参りましょう。姫」と、車中を覗くとレイラの服を着て目に涙を溜めた別人の女性が座っている。
「チャルタ⋯⋯」
"ドン"と、ドアを閉めるハバード。
拳を握り締めその場を立ち去る。
***
「(なぜだ。姫)」と、地下通路を進むハバードは、広い空間に出ると、突然足を止める。
ハバードの目の前に生活安全部の4人が立ちはだかる。
「(尊)大佐が睨んだ通りだ。ここを通ると思ってたぜ。なんせ星帝を非常時に逃がすための隠し通路だ。裏を返せば星帝に会うための一番の近道だ。あんたが知らないはずがない」
「お前たちは何なんだ⁉︎」
「(ツカサ)キサヒメ学園生活安全部。高校生さ」
「高校生? ふざけるな」
ハバードはギアコマンダーを取り出す。
「変身」
ハバードは恐竜を彷彿させるようなフォルムに黒い禍々しいオーラに包まれたアーマードギア=ティラノスアーマーに変身する。
「(ラルフ)え?僕たちのと似たアーマードギア」
「(アルテ)私たちのアーマードギアはウルヴァさんが作ったものしかないはず」
「(ツカサ)とにかく変身だ!」
ギアコマンダーを翳してアーマードギアに変身する4人。
「(尊)行くぞ!」
ティラノスアーマーを囲む4人。
各々の武器で同時に攻撃を仕掛ける。
ティラノスアーマーの硬い装甲がそれを受け止める。
腹部に直撃したファイヤーアーマーの拳にもビクともしない。
剣を取り出したティラノスアーマーは回転して4人を弾き飛ばす。
「(4人)うあああッ」
反撃に出るティラノスアーマー。彼の禍々しいオーラとともに放たれる攻撃に4人は圧倒される。
「(ソードアーマー)なんて強さだ」
「ならばこれだ」と、ファイヤーアーマーはフェニックスを模ったレリーフ=フェニックスギアをギアコマンダーに装着する。
「バーストアップ!!」と、叫ぶとファイヤーアーマーの全身の各パーツが変化する。背中にはメカメカしいフェニックスの赤い翼が生える。
「ファイヤーアーマーフェニックスフォーム」
ティラノスアーマーも両腕から大きな爪を展開してビースト形態になる。
ぶつかり合うファイヤーアーマーとティラノスアーマー。
飛行能力を使ったファイヤーアーマーのスピード攻撃が次第にティラノスアーマーを圧倒。
「フェニックスライドバーストキック!」と、空中からの必殺キックでティラノスアーマーを壁に叩きつける。
変身が解除されたハバードはその場に倒れる。
近づいて手を差し伸べるソードアーマー。
「真相を教えてくれるか?」
***
同・国際軍フロア取調室
ハイジャックの経緯について自供をはじめる瓜生。
「隊長にも戦争のコマにされる姫様を見ているのは辛かった」
***
回想
レオノール国・王宮・広間
話し合っているレイラとハバード。そして柱の陰から様子を見ている瓜生。
「なぜ私なのです。私が合併国の首相にならずとも国民を救う手立てがあるはずです」
「姫様は希望となるのです。民の希望となり強い国をつくる。それで民は救われるのです」
「希望なんて民は求めていません。伝染病に苦しむ者は薬を、飢餓に苦しむ者は食料を。
あなたたちの乗り物があればそれを叶えるのは簡単なはず! だからお願いです。民を早く助けてあげて下さい」
***
夜
ハバード隊仮設テント
「我らはこれよりレイラ・レオノール様の兵士となる」と、ハバードは隊員たちの前で宣言する。
「待って下さい、隊長! レイラ・レオノールは本部より極秘裏に殺せと命令されているのですよ」
「命令に従うだけが軍人ではない! 我らはこの国の民のために身命を賭す。それが軍人の務めだ」
「しかし、途上国の姫を合併して生まれる新しい国の国主にするのはあまりにも非常識ではありませんか?」
ハバードは、答えることなく意見した2人の隊員を射殺する。
***
ドルス国際評議場 国際軍フロア 控え室
グールドたちに経緯を話しているレイラ。
「私の考えはハバードとは異なっていました。私は私の力で私の考えを同盟国のグールド様に伝えようとドルスに向かいました。
しかし、隣国から乗った民間の飛行機はすでにハバードたちに抑えられていて、乗客乗務員全て私の執事やメイド、ハバードの意見に賛同する若い民達でした」
***
同・国際軍フロア取調室
「政府専用機に仕立てあげられた旅客機に無理矢理乗せられた姫はとても晴れない表情をしていた。俺は鳥かごに囚われた姫の笑顔を取り戻すために、
飛行機を乗っ取って姫のことを知らない国に亡命させようとした」
「それであなたが選んだ国が出身地である日本」
取調官の問いに頷く瓜生。
「だけど、俺はすでに隊長に目を付けられていたようだ。進路を変更して10分しないうちに仲間の操縦するゼノデオに取り囲まれた。
先にドルス入りしていた隊長の手際は早かった。致し方なく当初の予定通りドルス空港に着陸すると速やかに姫様立ちは連れてかれた」
***
回想
滑走路内に待機していたバスに乗せられるレイラと帯同者たち。
***
「空港関係者の中にも隊長の協力者がいたようだ。俺は最後の抵抗で軍無線を使って国際軍に事態を知らせた。隊長が成そうとしていることを公にするために」
***
同・地下通路
痛みを堪えながら立ち上がるハバード。
「想定外は続いた。だが、姫のためだ。私は星帝の後ろ盾を得てレオノール国の再建を成すまでは立ち止まるわけにはいかない」
かつて国のために星帝に会おうと考え学園で暴れたことを思い出したアルテはハッとする。
***
同・国際軍フロア控え室
「姫のお考えとは?」と、グールドが尋ねる。
「レオノール国王政を終わらせる。私は全てを失う覚悟です。伯父である我が国王と会ってください。
古より交流のあるスメラギ国の首相の話なら国王も納得するはずです。摂政も手は出せません。国民のために合併を進めて下さい」
「(フェリス)思いは同じはずのにバラバラだったのね。姫様たちは」
「私がここに来られたのはメイドのチャルタが代わりになって逃してくれたからです。どうしてみんな私のために、こうも危険なことを⋯⋯」
「愛ですよ」と、グールドが答える。
「え?」
「身代わりになってまであなたを逃したメイドも、仲間を裏切ってまで知らない土地に逃がそうとした男も、あなたを国王にしようとしたあの男も
どれも愛だ。あなたを愛しているからこそ、そこまでできるのです」
「グールド様、ハバードを、今回のことに関わった者たちを救って下さい」
「お任せ下さい」
***
エレベーターで上階に向う生活安全部の一同とハバード。
「(尊)姫様はこの階にいるそうだ」
「どういうことだ?」
「(アルテ)星帝が姫様とお会いになさってくれるそうですよ」
「! 本当か?」
エレベーターの扉が開く。
「(アルテ)行って来て下さい」
アルテの言葉に「かたじけない」と、ハバードはエレベーターを降りる。
***
同・国際軍フロア控え室
レオノールの写真を眺めるフェリスと冷菓とアカネ。
「この写真を撮った人もレイラ様たちと同じ気持ちだったのですね」
「なぜです?」と、冷菓は尋ねる。
「知って欲しかったのよ。レオノールの今を」
フェリスが写真をめくると裏面に"KAZUMATUKISHIRO"と、サインが書かれている。
「KAZUMATUKISHIRO! カズマツキシロって月代サヨ先生の弟よ」
「え!?」と、驚くアカネ。
***
同・誰もいない広間
「レイラ様! レイラ様! どこですか!」と、ハバードは辺りを見回しながら叫ぶ。
「お喜び下さいませ。星帝がレイラ様にお会いになさって下さいます。これで世界中から援助が受けられます。
病気に苦しむ者には薬を、飢餓に苦しむ者には食料を与えることができます。あなたが国王で豊かな国を作りましょう」
何かが刺さる鈍い音に「!」となるハバード。
***
同・星帝執務室
判をつく星帝徳川イエミツ。
書類を目の前の国際政府官房長官 渡辺ノブサダに手渡す。
「本当によろしいのですか?」
「レイラ・レオノールを戦争指導者として国際指名手配する。これが事態を丸く収めるための最善だ」
***
同・4F 国際軍幹部会議室
「(レオス)グールド長官は、星帝のことを兄さんと」
「(ハウザ)ヒデタダ公もお戯れが過ぎる」
笑うレオスとハウザ。
***
同・誰もいない広間
ハバードの背中に剣が突き刺さっている。
振り向くとヴィダルファングがその剣を握っている。
「喰ってやる」
「⋯⋯」
***
その様子を別室からモニターで見つめているグールド。
「姫様のためだ。腹を切れ」
***
ヴィダルファングはハバードから剣を引き抜くと、すぐさまハバードの首を切り落とす。
***
同・廊下
歩いてくるキョーマ。
反対側から冠庭トオル、巻咲ミツハ、シェル・ルミナー、グラップ・ロッズナが歩いてくる。
トオルはキョーマとすれ違うと何かに気づいた様子で足を止めキョーマの方に振り返る。
「⋯⋯」
「冠庭さーん。何しているんですか?行きますよー」
「あ、ああ⋯⋯」
***
国際軍ハンガーデッキ
大型の戦艦に積み込まれるアビリティマシンたち。
その様子を見ているカネツグと尊。
「俺が用意した戦艦だ。しっかりと姫様を届けて来い」と、カネツグは尊の肩を叩く。
「はい」
***
戦艦・管制デッキ
俯いた様子でイスに座るレイラ。
扉の窓からレイラの様子を見つめるツカサとアルテとアカネ。
「(アカネ)どうしようなんて声をかけよう」
「(ツカサ)姫様だしなぁ」
「(アルテ)ちょっと姫様ならここにもいますわ。ツカサ」
「す⋯⋯すまない⋯⋯」
「(アルテ)ハバードって人や民、国を揺るがすほど多くの人を惹きつける存在感⋯⋯まさか!」
「(ツカサ)姫様が!」
「(アルテ)3人目の救世の巫女!」
戦艦内の無線からラジオニュースが流れてくる。
「国際警察機構は先ほど元国際軍の兵士ハバード・ロイジャー容疑者が来国中だったレオノール国の皇女レイラ・レオノール様を拉致しテロを企てたとして
逮捕に踏み切りましたが激しい抵抗にあったためやむなく射殺したと発表しました。その他、テロに加担したハバード容疑者の部下たちも身柄を拘束されたとのことです。
この発表を受けて国際軍は上官だったラドルフ大佐を2階級降格させると発表⋯⋯」
愕然とするレイラ。
***
同・星帝執務室
知らせを聞いたイエミツとノブサダ。
「(イエミツ)覆されたな」
「(ノブサダ)⋯⋯」
***
戦艦の搭乗口
フェリスとグールドが話し合っている。
「合宿先が変わってしまいましたけど。しっかりと送り届けてきますわ」
「頼んだぞ」
フェリスが中へ入っていくと、そこへ柳生ロードが現れる。
「ロード⋯⋯」
「僕はあなたのコマにはなりませんよ」
そう言い残して戦艦へと乗り込む。
搭乗口の扉が閉まると同時に「グールドッ!」と、戦艦の奥の方からツカサが飛び出してくる。
「どうしてハバードをテロリストにした! あいつは姫様のために戦ったんだぞ」
扉を叩きながら訴えるツカサ。
戦艦がゆっくりと浮上し始める。
「あとは頼んだぞ。生活安全部」
飛び立つ戦艦。
ツカサは、グールドに叫び続けている。
小さくなっていく戦艦をグールドは見送る。
つづく




