第27話「第2章完結! ワルプルギスの夜を越えて」
フリーゲートブリッジ・ターミナル
5両編成となったバスターライナー、ウィングライナー、ドライグライナーはすずめクトゥルーに乗っ取られたターミナルに向かって走る。
バスターライナーのバスターキャノンがターミナルの壁に大きなを空ける。
3両はできた穴に先頭から突っ込む。
並走するソードライダーはビークルモードからロボットモードに変形。
同じくセデスもビークルモードからロボットモードへ変形、「魔獣合体」と叫んで合体シークエンスに入る。
ライドドラゴンが胴体から脚にかけての形に変形。ライドウルフ、ライドタイガーが左右の腕に変形して
セデスにドッキング。
「セデスネスカイザー」と名乗り上げて合体を完了する。
ソードライダー、セデスネスカイザーは、露払いとして、すずめクトゥルーの攻撃から3両のライナーアビリティーマシンを守る。
そして、ドルス国際評議場国際政府危機管理室から「化け物め。今度こそ倒してくれる」と指示を送るラドルフ大佐。
ドルス側から飛んできた戦闘機、ヘリによるすずめクトゥルーへのミサイル攻撃が始まる。
3両のライナーから降りたブラッドレール、ホワイトナイト、ブリザードゾーン、バリケードゾーンのアーマードギア部隊は救助活動を開始する。
ブラッドレールが、腰に装備された2問のレールガンで通路を塞ぐ瓦礫を破壊し、できた通路を通って先に進む。
ブリザードゾーン、ホワイトナイト、バリケードゾーンは、逃げ遅れた人々を発見すると待機するライナーアビリティーマシンの方へと案内する。
***
柊紫月は襲ってくるクトゥルーたちを切り倒しながらターミナルの最上階を目指して走る。
「このクトゥルーたちドルスの魔法少女⋯⋯クッ」
***
救助された人々は、各ライナーアビリティーマシンに乗り込むための行列をつくって並んでいる。
ヴィダルファングの護衛の甲斐があって、星帝徳川イエミツ、国際政府官房長官渡辺ノブサダもライナーアビリティーマシンのところまで辿り着く。
「星帝、お早く」
「私は最後でいい」
「何をッ⁉︎」
「マサユキがまだ戦っているんだろ?」
口を真一文字に結んで頷くノブサダ。
イエミツが上空を見上げるとそこにはドラゴンソードで四方八方から襲う触手と戦うセデスネスカイザーの姿。
***
「よしッ、第一陣バスターライナー、出発して下さい」
ウィングライナーを操縦するシューティングアーマーがバスターライナーを操縦するターボファイターに指示を送る。
「了解」
その時、突然すずめクトゥルーが雄叫びを上げて、全身から光弾を発射する。
光弾が雨のようにライナーアビリティーマシンに降り注がれ、
列をつくって待つ人たちも悲鳴を上げてうずくまる。
そしてひとつの光弾がバスターライナーのコックピットに直撃。
「生徒会長ッ!!」と、叫んだシューティングアーマーは、ウィングライナーを降りてバスターライナーのコックピットに駆け寄る。
覗くと、フェイスマスクが割れ血を流したアカネの顔が覗くターボファイターが、ぐったりとしている。
「生徒会長ッ、しっかりして下さいッ!」
「う⋯⋯う⋯⋯私は⋯⋯大丈夫だ⋯⋯」
「わかりました。ここは僕が引き受けます。生徒会長はこのまま大人しくしてて下さい」
アカネの反応が弱いと感じとった、シューティングアーマー。このままでは命が危ないと、ホワイトナイトに指示を出す。
「ホワイトナイト、ウィングライナーをお願いします。ドライグライナー先に発車して下さい」
「了解」と、ドライグライナーを操縦するゴルドガレオンはドライグライナーを発車させる。
「ラルフッ! バスターライナーの方はどうなっているんだ⁉︎」と、桐川トウカから通信が入る。
「コックピットは破損していますが、部品を繋いでなんとか動かしてみます」
「分かった。急いでくれ。バスターライナーに搭乗した救助者は一旦降ろす」
今度は、稲光とともに曇天の雲が割れてその間から触手を持った巨大なひとつ目のような物体が現れはじめる。
「何だアレは?」と上空を見上げるセデスネスカイザーに触手が絡みつく。
「しまった!」
触手に締め付けられるセデスネスカイザーとソードライダー。
すずめクトゥルーの頭部から生えるようにニャルラトホテプが現れる。
「どうだい? グールド・グレモリー。あれが我が父アザトースだよ」
「アザトース?」
「君とはあの時、電話でお話しした以来だね」
***
回想
クトゥルーモンスターによるドルス襲撃事件解決直後
ドルス国際評議場 国際政府危機管理室に掛かって来た一本の電話をとるグールド。
「もしもし、もしかして警察の偉い人?」と、加工した男の声。
「国際警察機構長官のグールド・グレモリーだ」
「どうだった僕たちクトゥルーのゲームは?楽しんで頂けたかな?」
「クトゥルー?目的は何だ⁉︎」
「僕たちに目的何てないよ。ただ楽しめればいいだけ。今日は充分楽しめたかな。じゃあまたね」
「おいッ!待てッ!」
***
「あの時のは、やはりお前だったか」
爆発でターミナルの屋上に穴が空いて、魔法少女化したサヨが飛び出してくる。
「見つけた。やっぱりあれで終わるあなたじゃないわね」
「しつこい巫女だ」
「サヨ先生⁉︎」と、ソードライダーは変身したサヨの姿に驚く。
「ニャルラトホテプッ!」と、紫月も到着する。
「囲まれちゃった。だけどどうだい? 世界が滅びる様は。これこそがワルプルギスの夜。我が父アザトースを復活させる盛大なる儀式。宴だ」
「そうか、このために魔法少女を作り出してマジカルエネルギーを集めていたのか」
「表向きはね。マジカルエネルギーってのは、魔法少女の死によって生まれるんだよ。実際は。しかもその魔法少女が強ければ強いほどその力は強大となる」
「魔法少女に対する憧れや希望から生まれる訳ではなかったのか?」
「なら、なでしこが戦ってきたことはッ⁉︎」
「そうさ、我らの父アザトースを復活させるための戦いさ。りりかがレベル7に覚醒した時に僕が、正体を現したのも、その後、堰を切ったようにアイリやマヤが次々にクトゥルーに覚醒する
事象が起きたのも、なでしこを魔法少女殺しの戦いへと促すためさ」
拳を握りしめ、怒りに顔を歪ます紫月。
「僕が憎いかい? だけど魔法少女を殺すための育成を考えたのは、なでしこなんだよ。彼女は僕の妹ヨグ=ソトース。実験なのさ。ヨグ=ソトースはある程度成長した魔法少女を殺して、
得られるマジカルエネルギーの大きさ測っていた。それで得られた数字がレベル7。魔法少女のレベルシステムのはじまりさ」
「貴様ーッ!」と、紫月は鞘から刀を引き抜いてニャルラトホテプに斬りかかる。
だが、辺りから生えてきた触手に捕まり縛り上げられる。
「離せッ!」
「我が父があそこまで肉体を構築できたのも、なでしこの死によって生まれたマジカルエネルギーのおかげ」
「! なでしこが⋯⋯死んだ⋯⋯」
「おそらくね。こうなるとも知らず。ゼロノイドに殺される運命を選んだ」
「あんたは全部こうなる事を分かって⋯⋯」
「そうだよ。君も同じさ。君は素晴らしいクトゥルーの素養を持っている。君をクトゥルーへと進化させれば、いい子孫が残せる。
とても強い女だ。僕は君が欲しかった。だから君の心の支えとなる仲間には消えてもらった」
「お前が⋯⋯お前が⋯⋯ひまりやガルド、コウスケ⋯⋯私の大事な家族を殺したのかーッ!」
「殺したって、失礼だな。それじゃあ僕が故意に手を下したみたいじゃないか。僕はプレゼンター。常に嘲笑し続ける存在。
ただ耳元で囁いてやっただけさ。願望に正直になるようにと。あとは勝手に彼らがやっただけ。僕は傍観するだけさ」
「それで否定しているつもりかーッ!」
「あの日の出来事も同じさ。神にいいように使われていた天使たちに囁いた。掟に反発した悪魔に囁いた。
家族に褒められようと功名心に駆られる少女に囁いた。人間によって同じ地位まで引きずり降ろされた神に囁いた。
それが全て君が家族を失った日に繋がる。だけどみんな自分たち願望に正直になっただけの偶然さ」
「(セデスネスカイザー)そうか、華僑院の終末計画は元々はお前の入れ知恵か」
「正解。見ていて楽しかった。とくに君は。僕は何も囁いていないのに、君は願望に正直だった」
「(ソードライダー)お前は、木田春馬とも面識があった! 3年前の襲撃事件もお前が⁉︎」
魔法少女アイナ=ニャルラトホテプが木田のギアコマンダーを使ってクライシスゾーンに変身したときのことをフラッシュバックするソードライダー。
「彼も正直だからね。楽しませてもらったよ」
セデスネスカイザーは、見下ろして救助活動の状況を確認する。
「ウィングライナーへ乗り込むのを待つ男性が先に乗った男性と口論をしている。
「私はソラトリア国の人間だ。アルスルーンの人間が先に乗るとは何事だッ! 降りろッ! 優先すべきは大国たる私たちだ」
「本性表しやがったな! ソラトリア人!」
この口論が飛び火して待機列のあちこちで揉み合いの争いが起こる。
「そうか。貴様の目的はこれか。ニャルラトホテプ」
「なんのことだい?」
「貴様は、クトゥルーによる世界の支配なんて興味はない。この日の出来事をきっかけに世界をまた混乱と争いの渦に巻き込むことだ」
「よく気づいたね。全世界の統一? 理を越えた種族の関係? そんなかりそめの仲良しごっこ、いつまでも見てられないよ。退屈だ。
君たちは永遠に自分たちの権利、主義主張、差別を唱えながら争うがいい。世界はその方が断然おもしろい」
「貴様⋯⋯」
「僕は見続けてきた。囁き続けてきた。華僑院神も魔術協会も木田も⋯⋯神も人間も悪魔も関係無い僕にすがる者には知恵を与え成功させ、そして最後は自滅して滅んだ。僕はいつまでも楽しみ続けるよ。君たちの愚かさを」
「私たちは確かに弱い⋯⋯脆い⋯⋯不完全だ。だけどもうこれ以上お前のおもちゃにはならない!」
「その威勢だ。さぁ君もクトゥルーになるんだ」
紫月を縛る触手の締め付けが強くなる。
「あ"あ"あ"あ"」
そのとき、紫月の付けている翼のイヤリングが光る。
「紫月⋯⋯紫月⋯⋯」と少女の声が遠くから聞こえてくる。
「ひまりッ!」
「時間が掛かってごめんね。私はずっと紫月と一緒だよ」
橘ひまりの声とともに紫月の全身が光り輝く。
「なんだこの光は?」
紫月を縛っていた触手が弾け飛び、光の中から白いドレスに身を包み、背中から天使のような翼を生やした魔法少女=紫月が姿を現わす。
「魔法少女? いや違う。クトゥルー由来の魔法少女じゃないだとッ⁉︎」
「ひまり⋯⋯」
「私に取り憑いた悪魔の力を利用したの。どう?私の魂でできた魔法少女の衣装は。とても綺麗だよ紫月」
「ひまり⋯⋯恥ずかしい」
「こうして話せるようになったのは、あそこにいるお姉さんの力のおかげだよ」
紫月はサヨを見やる。
「僕をここまでコケにしたのは、君が初めてだ」
「行こう紫月」
「うん。ひまり」
魔法少女化した紫月は剣マジカルカリバー取り出し、光のオーラでできた刀身が天高く伸びる。
巨大な剣となったマジカルカリバーをニャルラトホテプに向かって振り下ろす。
「グアアアッ!」と、ニャルラトホテプは、すずめクトゥルーの頭蓋ごと真っ二つになる。
すずめクトゥルーの触手はだらんとするように地面に落ちる。
キサヒメ学園地下基地の管制室からも「クトゥルー機能停止ッ!」の声が聞こえてくる。
ケーブルを繋いでバスターライナーのエンジンを再起動させるシューティングアーマー。
「よし。これで行ける。生徒会長、もうすぐですから」
意識が朦朧としながら小さく頷くターボファイター。
希望が見えはじめたーー
「(ノブサダ)星帝で最後です。お乗りください」
頷いてバスターライナーに乗り込むイエミツ。
そのとき、大きな揺れが辺りを襲う。
上空のアザトースがゆっくりと降り始める。
すずめクトゥルーの体から上空に向かって舞い上がる光の粒に紫月はハッとする。
「マジカルエネルギー!」
「(セデスネスカイザー)このクトゥルー、魔法少女だったのか⁉︎」
アザトースとすずめクトゥルーの骸がドッキングする。
頭部に再びニャルラトホテプが生えてくる。
「完成だ。人間からクトゥルーへと進化した魔法少女の器と白痴ゆえに絶大な力を持ったアザトースの体。そしてそれを操る知能たる僕⋯⋯僕こそが絶対にして最強の存在だ」
ニャルラトホテプは高らかに笑うと全身からレーザー光線を四方八方に放つ。
国際軍の戦闘機やヘリらに次々に直撃して爆散する。
セデスネスカイザー、ソードライダー、魔法少女紫月、魔法少女サヨに被弾して弾き飛ばされる。
バスターライナーとウィングライナーもレーザー光線が浴びせられる中走る。
一同に再び絶望が襲う。
「(シューティングアーマー)早く来てくれツカサ」
「(ソードライダー)ツカサ」
「(ターボファイター)ツカサ」
「(ゴルドガレオン)ツカサさん」
「(ブラッドレール)火条ツカサ」
祈るようにツカサの名を次々に口にする仲間たち。
その時、「お待たせ」と、ローズライダーに乗ったローズファリテが現れる。
ローズファリテが「ツカサーッ!」と叫ぶとニャルラトホテプの全身に爆撃が襲う。
上空からやってくるグレートファイヤーグリフォン。
グレートファイヤーグリフォンは襲いかかる触手たちを軽やかにかわすと同時にグランドランサーとグリフォンソードで切り落としていく。
「なんだあのスピードは⁉︎ 」
「(セデスネスカイザー)あれがグレートファイヤーグリフォン⋯⋯」
「これが君たちの希望ってわけか」
四方八方から次々に襲ってくる触手たちを切り落とすグレートファイヤーグリフォン。
触手がグレートファイヤーグリフォンの両手足捕まえて縛る。
「やっと捕まえた」
ニャルラトホテプはグレートファイヤーグリフォンに容赦なくレーザー光線を浴びせる。
「ツカサーッ!」と、悲鳴をあげるローズファリテ。
「やったか?」
煙が晴れるとそこには傷ひとつ付いていないグレートファイヤーグリフォンの姿。
「!」
ファイヤーグリフォンのウィングに新たに装備された8つのドローンビットを発射。
ドローンビットのレーザー光線がグレートファイヤーグリフォンを縛る触手を撃ち抜く。
グレートファイヤーグリフォンは、一気にニャルラトホテプに近づいて肉薄する。
「こ、この僕が人間の作った物に負けるなんて」
ニャルラトホテプの背後に現れるセデスネスカイザー。
「どうだ? 自分が恐怖に滅びる様は」
「うそだ! うそだ!」
グレートファイヤーグリフォンの胸パーツが光りだす。
「その図体では逃げることもできまい」
「ブレストバーニングバーンッ!!」
グレートファイヤーグリフォンの胸パーツから放たれるビームがフェニックスの形となりニャルラトホテプを貫く。
「ギャアアア!」
白い光の中でニャルラトホテプの全身は砂のように崩れて消滅する。
グレートファイヤーグリフォンの勇姿に辺りから歓声が上がる。
***
夕方
「サヨちゃーん!」、「サヨ先生」と瓦礫の上を大声を出して探している、火条ツカサらキサヒメ学園の生徒たち。
その様子を遠くから見ている魔法少女サヨとアーマードギアの人物。
「本当によろしいんですね」
「はい」
アーマードギアの人物とサヨの肩に触れ、2人はその場を立ち去る。
***
一ヶ月後
ターミナル近くにできた石碑を見つめる紫月。
「なでしこ、アイリ、マヤ、りりか、すずめ。あなたたちの分まで生きるよ。ありがとう。私の家族。私は魔法少女だ」
ひまりのイヤリングをグッと握りしめる紫月。
「そしてありがとう。ひまり⋯⋯」
ひまりの魂は紫月の変身解除と一緒に消滅していた⋯⋯。
***
制服姿で車の交通整理をしているキョーマ。
ターミナルの復旧が完了して改めて除幕式が行われている。
サヨの遺影を持って式に参加する生活安全部一同。
「私たちの絆が試される事件から早一ヶ月。今だ、傷跡が残るターミナルで再び開業に漕ぎ着ける事ができたのは、ひとえに全世界の対話と交流を望む
力添えがあったからこそです。この場を借りて感謝を申し上げます。今ここに進歩と発展への大きな一歩が踏まれたことを宣言致します!」
会場内から大きな拍手が湧き上がる。
「国際警察機構長官兼スメラギ国内閣総理大臣グールド・グレモリー」
***
ターミナル内の通路を仲良く談笑しながら歩く生活安全部一同の後ろ姿。
第2章完
第3章大人編へつづく




