第24話「捜査線上の生活安全部」
首都国ドルス 古びたアパート
鑑識の捜査員たちが布団の上に倒れている男の写真を撮ったり部屋中のあちこちを指紋採取している。
流し台には洗わずに積み上げられた食器に、部屋の中は脱ぎ散らかした衣類や雑誌が散乱して足の踏み場もない。
外からはパトカーのサイレンの音が聞こえ、無線でのやり取りの声が飛び交う物々しい雰囲気の中、ドルス署の刑事黒崎京馬=キョーマは
男のポケットから財布を取り出して中に入っていた免許証から身元を確認する。
「金井一信35歳⋯⋯」
キョーマのところに同僚刑事がやってくる。
「キョーマさん。目立った外傷はないんで心不全か何かの病死で片付きそうです」
「そうか⋯⋯」
***
スメラギ国夜の市街地
クトゥルーモンスターたちと戦っているファイヤーアーマー、ローズファリテ、ソードアーマー、シューティングアーマー、ゴルドガレオンらの生活安全部一同。
各々の武器や攻撃でクトゥルーモンスターたちを次々に倒していく。
クトゥルーモンスターを一掃し終わると変身を解除してハイタッチで喜ぶ一同。
彼らが戦った周囲は、いつものように穴の空いたビルの壁、えぐれた道路のアスファルト、折れた信号機と破壊されている。
そこへ数台のパトカーがサイレンの音共にやって来て彼らを囲む。
パトカーからボサボサ髪にトレンチコートを着た40代半ばの所轄署のベテラン刑事 立土岐一刻が降りてくる。
「お前たちを器物破損⋯⋯(周りの破損状況を見て)いや、テロの容疑で逮捕する」
「えーッ⁉︎」と、目を飛び出さんばかりに驚く生活安全部一同。
***
所轄署 取調室
刑事の本田から、取調を受けている火条ツカサ、火条アルテ、直江尊、織田ラルフの4人。
「だから、俺たちはクトゥルーと戦っていたんだ!」と抵抗するツカサ。
「壁の穴はクトゥルーを殴ったときに空いて⋯⋯」
「そ、そのクトゥルーってのは君たちの隠語か何かかな?」
「うにゃうにゃした奴だよ」
「うにゃうにゃ⁉︎」
その様子をマジックミラー越しに見ているスーツ姿の柳生ロードと若手刑事。
「意味不明な供述が続いてますね」
「ええ」
そこへ立土岐がやってくる。
「(敬礼して)国際警察機構のロード・スクリームです」
「これは、これは国際警察機構の刑事さんがいらっしゃいますとは」
「この威勢のいい高校生達は何をしてここに?」
「私の追っている事件を辿ると必ず彼らの目撃情報がありましてね」
ふと、ロードがいないことに気づいたツカサは、「ロードは?ロードはどこに言った⁉︎」と、騒ぎ出す。
「?」と、ロードの顔を見やる立土岐。
「か、彼らは、凶悪犯です。僕も捜査をしていました。徹底的に追い詰めて下さいッ!」
***
夜が明けて早朝、所轄署近くのカフェで話をしている立土岐とロード。
「立土岐さんが追っている事件ってのは?」
テーブルの上に数枚の写真を広げる立土岐。
「これだ」と、一枚の写真を指差す。
その写真には、肌蹴たイシュタルトの白いローブを着た少女の遺体が写っている。
その少女の顔や手足には痣ができている。そしては首筋にはコネクトシールが見える。
「この写真は……」
「とある山林で見つかった少女の遺体だ。まだ15歳で、首には締め付けられた跡、そして暴行を受けた跡が見られてな」
「この首筋の記号のようなものは?」
「コネクトシールというらしい」
「コネクトシール?」
「具体的にどういったものか分かっていないが、この事件を辿ると大きなヤマにぶつかる。それが一年以上前から相次いでいた少女たちの失踪事件だ」
佐古井リルア、伊井野ミキら失踪者だった少女の写真を並べる。
「少女たちは最近になって、山中にある宗教団体イシュタルトの施設で改宗された状態ではあったが無事発見された。この少女も同じ被害にあっていたと思われる。着ているローブはイシュタルトの修道服だそうだ。
施設は事件現場からも近い。そして少女たちは全員、首にコネクトシールが貼られていた⋯⋯だが、この失踪事件は上から不可解な圧力もあって宗教団体による儀式の一貫ということで帳場は解散。
それでも俺は単身で捜査を続けていた」
「それでも捜査を?」
「何の情報も得られなくなって難儀していたときに国際警察機構の官僚から俺のところに電話があった」
***
回想
所轄署内の廊下を歩く立土岐。
着信でポケット内からスマホを取り出して耳にあてる。
「立土岐刑事ですか?お一人でまだ捜査をされているようですね」
「どなただ?」
「国際警察機構の者です。ぜひあなたの捜査に協力したい」
***
「その電話の後には、俺のところに機密の捜査資料が届けられた」
立土岐は自分のデスクで茶封筒を明けて資料を取り出す。
***
「そこには失踪事件に安守公彦前首相が関わっていることが記されていた」
「スメラギ国政府が関わっていたんですか⁉︎」
「ああ。イシュタルト自体も華僑院玄徳元首相と深い繋がりがあったようで、コネクトシールのこともその資料に書かれていた」
「儀式の道具か何か?」
「そんなとこだ。何者かに安守を捕まえろと誘導されているように感じていたが、とにかく俺は安守のとこを訪れてみた。やはり、"お前、消されるぞ"と脅された挙句、亡くなっちまって捜査は振り出し。
分かったのは、事件とは関係ない何者かの陰謀があるということだけだ。
被害者の佐古井リルアの事件以降、生活安全部と名乗る高校生たちが絡んでいることを知った」
「それで取り調べを」
「ああ」
立土岐は席を立ち上がる。
「これから行くところがある。付いてくるか?」
「はい。俺、機動隊所属だったんで事件の捜査とか慣れてなくていろいろ教えて下さい」
と、深々と頭を下げるロード。
***
カフェを出て、通りを並んで歩く立土岐とロード。
「よく聞くだろうが、捜査の基本は脚だ。自分の脚で歩いて一つ一つ細かく聞き込んで情報を得る。
そして俺は、ここらを縄張りにしていたレッドワイズってギャングがコネクトシールを女性相手に配っていた情報を掴んだ。
これは国際警察機構の資料にも載っていない情報だ」
「宗教団体の儀式にギャングが絡んでいたんですか?」
「ああ、それだけじゃねぇ。証言者の少女 御影カンナとその兄貴、御影マコトの話だと生活安全部も関わっていたようだ」
「また⋯⋯ですか?」
***
スメラギ国首都刑務所 面会室
強化ガラスを挟んで立土岐とロードの前に元レッドワイズの幹部ルークが座っている。
「コネクトシール?あれは最高だよ。使うとみんなハイな感じになるんだ。それを僕のプロトフが飲み込んで強くなるんだ。街を壊したり、殺したりで最高だよ。
ねぇ、いつになったら出られるの?もっとコネクトシールの力で暴れたいよ。もっともっともっと人を殺して血が見たいんだ」
「な、こんな調子で訳がわからん」
「コネクトシールがとても危険っていうのは分かりました」
***
総合病院
元被害者の少女から話を聞いた立土岐とロードは病室から出てくる。
「みんな失踪前の自身の記憶を無くしているんですね」
「どこもこんな調子だ」
***
遺体で発見された少女が通っていた学校やバイト先で聞き込みをする立土岐とロード。
中には何度も聞かれているのか、また?というような怪訝な表情をする人もいたが
地道に聞き回る立土岐の姿にロードは感心する。
少女は里野彩音15歳。遺体で見つかる3ヶ月前、バイト中にレッドワイズの男に話しかけられているところを目撃されたのを最後に
行方がわからなくなっていた。しかも同じバイト先で御影カンナもその1週間後にコネクトシールの影響で意識不明の重体となる事件が起きていた。
そこから捜査線上に浮上し始めるのが生活安全部だ。
***
佐古井リルアが通っていた学校
立土岐とロードは、佐古井リルアと当時の担任教師巻坂ハルトの関係について
女生徒たちに聞き込んでいる。
「(ロード)何か噂とかなかった?」
「えー私たち佐古井さんと話したこと無いし。あの人、友達いなかったと思いますよ」
「放課後に教室で巻坂先生と2人で話してたのを見かけたことならありますよ。相談に乗ってもらってたんだと思う」
「巻坂先生、優しかったもんね」
「何んでも相談に乗ってくれるから女生徒からすごく人気あったし」
***
同 職員室
巻坂ハルトの勤務実態についての資料に目を通す立土岐とロード。
「ここに足を運んで、6回目。ようやく見せてもらった」
「捜査には根気も大切なんですね」
「佐古井リルアの担任、巻坂ハルトはリルアの失踪後に謎の斬殺体で見つかった。それだけじゃない。友人とされる佐本カズマも
自宅が爆破された上、斬殺体で見つかっている。しかもその事件の捜査本部にはなぜか当時官房長官だった安守公彦が乗り込んできたそうだ」
「安守さんが?」
「事件当日の深夜、フライトジャケットを着た男が目撃されている。俺は巻坂の身辺を洗えばその男の身元に繋がると考えている。
同じく巻坂の友人とされる園井シュンも一年前に廃工場の爆発に巻き込まれて死亡している。このとき国際警察機構の組織も一緒に巻き込まれて
行方が分からなくなっている。どうやら巻坂たちは連続する失踪事件の犯人として捜査されていたようだな」
立土岐はコートの胸ポケットから折りたたまれた機密資料を取り出してロードに見せる。
「特殊能力犯罪捜査課12係とかいう国際警察機構内の組織だそうだ。知っているか?」
「いえ。知りません」
見せられたのは特殊能力犯罪捜査課12係の名簿のようだ
ロードは目を通すと書かれている名前に驚く。
「柊紫月ッ⁉︎」
「知り合いか?」
「あ、いや……(魔法少女が同業者? まさか)」
「まあいい。一通り見終わった。これから電車で次の証言者のところまで行く」
「付いていきます」
ロードのスマホに着信が入る。
「月代先生?」と、通知を見て通話に出る。
「あ、ロード君⁉︎どこにいるの?朝からみんな登校してなくて、そしたら警察の方からご厄介になっているって連絡があって、
行って見たらロード君だけ解放されていないし。どこにいるの?」
「え、あ、え⋯⋯」
焦った様子のサヨに状況をどう説明していいのかしどろもどろになるロード。
「どうしたッ⁉︎」
「上司からの電話で」
「俺は先に行っているぞ!」
「はい⋯⋯」
「上司?上司ってどういうこと?先生ですよー」と、スマホの向こうからサヨの声が聞こえてくる。
***
モリタワー駅
通路を歩く立土岐。
着信音が鳴ってスマホを取り出して通話に出ると男の声で、
「あの男がいました。モリタワー駅です。立土岐さん今、どちらですか?」
「ほ、本当かッ⁉︎⋯⋯(あの男がこの駅にいる)」
逸る気持ちで辺りを見回す立土岐。
するとフライトジャケットの男が目の前を横切る。
「いたッ!」
***
駅に向かって歩いているロード。
着信が鳴って出ると慌てた立土岐の声が聞こえてくる。
「今どこだ? 男がいた!フライトジャケットの男がいた!」
「えッ⁉︎」
「今俺は、男の後を付けて電車に乗っている。あんたは次の駅から乗って男を挟み打ちにする」
「了解しました!」
間髪入れずにまたロードのスマホの 着信が鳴る。
ロードは何だよと通話に出ると、「ロード。久しぶりだな、元気か高校生」とキョーマ。
「キョーマさん⁉︎」
「今、スメラギ国に来てるんだ。せっかくだからどうだ久々に食事でも」
「すみません。俺、立土岐さんって刑事と一緒に重要参考人を追っているところなんです」
「立土岐さん⁉︎俺もその立土岐さんに事件の裏取りで事情を聞くために来ているんだ」
「え?」
「先日、うちの管内のアパートで、男性の遺体が見つかった。男は病死だったが、遺留品の中から立土岐刑事の娘、里野彩音さんの所持品が見つかった」
「娘⁉︎」
「昨日になって彩音さんの体内に残されていた体液と男のDNAが一致した。彩音さんの事件はこの男が犯人と見て間違いない。目撃情報にあったフライトジャケットも
男の部屋の壁に掛かっていた」
「そのこと立土岐さんは?」
「もちろん知っている」
***
議事堂前駅
立土岐に電話を掛けながら走るロード。
「おッ、まだか。そろそろ着くぞ」
走って改札口を抜けるロード。
「立土岐さんッ!フライトジャケットの男の目撃情報はどこからなんですか?」
「間宮ヒトとかいう男からの情報だ」
「⁉︎ 間宮⋯⋯ダメです立土岐さん。その男の話を信じては」
ホームに入ってくる電車。
停車して扉が開くとすかさず乗り込むロード。
「立土岐さん!何両目ですかッ⁉︎」
"パンッ"と、隣の車両から銃声が聞こえる。
キョーマに掛け直すロード。
「キョーマさん。間に合いませんでした」
ロードは乗客を掻き分けて隣の車両に移る。
***
隣の車両
乗客の男性が右肩を押さえて倒れている。
怯える乗客たちが見つめる先に拳銃を構えた立土岐の姿がある。
立土岐の背中には触手が見える。
「立土岐さんッ⁉︎」
ロードはギアコマンダーを翳してゴルドガレオンに変身する。
立土岐の目には、乗客が全員フライトジャケットの男に見える。
「よくも娘をッ!」と立土岐は銃を乱射する。
***
議事堂前駅から次の停車駅
キョーマは警察手帳を見せて駅員に駆け寄る。
「次に入ってくる電車内で非常事態が発生しています。急いでホームを封鎖して乗客を退避させてくださいッ!」
「了解しました!」
キョーマはホームへ向かって走り出すと目の前にクトゥルーモンスターたちが地面にできた魔法陣から現れる。
「あのときの怪物⁉︎」
キョーマはギアコマンダーを翳してバリケードゾーンに変身する。
***
電車内
「立土岐さん。あなたはこんなことをするためにずっと捜査をしてきたんですか? 僕に教えてくれた刑事の矜持は復讐するためにあったんですかッ⁉︎」
立土岐の背中の触手たちがゴルドガレオンに襲いかかる。
ガレオンソードで触手を弾き返すと立土岐の指が引き金に掛かったのを見たゴルドガレオンは、一瞬の速さで拳銃を真っ二つに斬る。
立土岐はその場に崩れ落ちるように倒れる。
倒れた立土岐を抱えるロード。
「忘れるな⋯⋯刑事だって人間だ。ひとりの親だ。娘のためなら建前なんていらない⋯⋯俺は⋯⋯俺は⋯⋯俺を捕まえてくれる奴が必要だっただけだ。
だから巻き込んだ⋯⋯あんたはいつか立派な刑事になれる。そう見込んだからだ」
立土岐は意識を失うと砂になって消える。
「立土岐さんッ!」
***
議事堂前駅から次の停車駅
クトゥルーモンスターと戦うバリケードゾーンの前にサムライアームズが現れてクトゥルーモンスターを一掃する。
「あいつは?」
***
所轄署 休憩室
テーブルの上に、失踪事件の被害者たちの写真を並べてどこか肩を落とした様子で眺めているロード。
そこへサヨがやってくる。
「あ、いたいた。探したよ。みんな解放されたのにロード君だけ戻って来なくて探したんですから」
「す、すみません」
サヨはテーブルの上の写真に気づく。
「コネクトシール?」
「! 知っているんですか⁉︎ 月代先生!」
「これは理事長の会社で造られたものよ」
「理事長の?」
これまでの経緯を話し始めるサヨ。
「(こんな天然ぽい先生から語られるのは、コネクトシールの目的と政府の計画。僕の知らない生活安全部の事件への関わり。どれも立土岐刑事が
信念を貫き、いつしか殺意へと変わってしまったその執念で追い求めた真実。
それをこの女はこうもあっけらかんと話すんだ。俺は軽くパニックになっているのかその事実をうまく飲み込めない⋯⋯)」
「ところでなんでスーツ?」
「(立土岐さんの話していた何者かの陰謀。立土岐さんも失踪事件もすべてその者の陰謀の中にあった。それは俺も同じだった⋯⋯その何者は⋯⋯)」
***
首都国 ドルス 国際評議場
複数の国際警察官僚を引き連れて歩くグールド・グレモリー。
***
拳を硬く握って撼わすロード。
「グールド・グレモリー!」
つづく




