第18話「目覚める力 2号ロボグランドザウラー誕生」
スメラギ国 エネルギープラント地区
海に面した山間の地区。
山の一部を切り開いて建造されたプラントは
スメラギ国の3分の2をまかなう電力が作られている。
そのプラント地区に向かって侵攻を続ける3体の大型クトゥルーモンスター。
ムカデの様な姿をしたそのクトゥルーは、複数ある脚を"シャカシャカ"と動かして
木々を倒しながらプラントの施設に近づいていく。
そこへ現れたAGX-Ⅱツヴァイキャノンから放たれる砲撃によって怯むムカデ型クトゥルーに
ソードライナーの2刀流必殺技"クロススラッシャー"が炸裂して、1体を砂へと帰す。
ローズライダーは、両腕と両肩に取り付けられたクナイ状の剣を武器に両手を広げて
コマのように回転しながら2体目のムカデ型クトゥルーに攻撃を加える。
畳み掛けるようにドライグライナーのチェンソーブレードでムカデクトゥルーを
頭の先から真っ二つに切り裂く。
そんな生活安全部と巨大クトゥルーが戦う様子をプラント施設の屋上からおもしろくない表情で
見ている魔法少女たち。
3体目のムカデ型クトゥルーには、ソードライナーが"車輪スラッシャー"で目を潰して、そこへライドファイヤーが高く飛んで、
"ライドバーストキック"で全身を貫いてトドメをさす。
ムカデ型クトゥルーが爆発と共に倒れると「ヨッシャー!」と拳を上げるライドファイヤー。
上空にできた魔法陣の中から悔しい表情をしたマリーダが姿を現す。
「強化したクトゥルーでもこのざまか。おのれ生活安全部……。ならば!」
と、普段よりもひと回り大きい鉱石を取り出して
「とっておきたかった、とっておき。今が使いどころ」と、投げ込む。
鉱石は、倒れた3体のムカデ型クトゥルーの砂を取り込み、今までよりも巨大な
ムカデ型クトゥルーに姿を変える。
パワーアップしたムカデ型クトゥルーの触手にライドファイヤーは、背後から弾き飛ばされる。
「グハッ!」
「ツカサ!」
地面に激しく叩きつけられるライドファイヤー。
「なんかいつものと奴と様子が違う!」と、AGX-Ⅱ。
「ならば」と、ソードライナーが飛び出して"クロススラッシュ"で斬りかかると
石のように硬くなった表皮に刃が弾かれてしまう。
「ハハハッ」と、高笑いを上げるマリーダ。
「魔鉱石と掛け合わせた種子で生み出した我が子に、貴様の刃は届かぬわ!」
「これなら!」
フルチャージのツヴァイキャノンで攻撃を加えるが、クトゥルーの表皮には傷ひとつ付かない。
「ツヴァイキャノンが効かない⁉︎」
続けて"ドリルブレイク"と、右肩のドリルで攻撃をするドライグライナー。
やはり、傷すら付けることができない。
「なんて硬さだ!」
「大丈夫ですかツカサ?」と、ローズライダーは倒れているライドファイヤーに肩を貸して起こす。
「すまねぇ」
「5人で一気に行くぞ!」
「了解!」
ソードライナーの合図でムカデ型クトゥルーに一斉に攻撃を仕掛ける生活安全部。
ムカデ型クトゥルーは、大きな鳴き声を上げ、その波動で5体は弾き飛ばされる。
追い打ちをかけるように大きな口から強大なビームが放たれる。
ビームは森の木々を消し去り、プラント施設をかすめる。地面には一直線にえぐった爪痕が残っている。
「なんて威力だ!」と、驚くソードライナー。
「ッ、外したか。だが次で決める!ヤレ!」
ムカデ型クトゥルーは、再び大きな口を開けてビームのチャージをはじめる。
だが、チャージしたビームが消えて、そのまま動きが停止して、砂へと返ってしまう。
「クッ、まだ不完全だったか。だが明日は必ずお前たちを倒す」と、
マリーダは、魔法陣の中に姿を消していなくなる。
***
マリーダが去って、現在の状況を話し合う、生活安全部一同。
「魔術協会によるプラント襲撃もこれで3日目」
「モンスターは倒すごとに強くなってきています……」
「極め付けがさっきのアレだね」
「このままじゃマズイ。ファイヤーグリフォンを欠いた俺たちの戦力じゃ限界だ」
「何か手はねぇのか。クソッ」と、ツカサは瓦礫を叩く。
***
桐川コーポレーション
ハンガーデッキでライドアビィオン、ライドラダー、ライドエイドの修理が急ピッチで進む。
3機はほぼ骨組みの状態で、エンジニアたちによる溶接の火の粉が飛び散っている。
管制室からその様子を確認する桐川トウカ。
そこへフェリス・グレモリーが入ってくる。
「桐川、ファイヤーグリフォンの完成はまだなの?」
「無茶を言うな。これでも急いでいるんだ。なんせ木っ端微塵になった機体だからな。
いちから作り直すのも同然だ」
「それでもなんとかするのがあなたたちですわ」
「やれやれ。ブラック企業というのはやはり客の要求が生み出すものだな」
「無駄口はいいですわ。他に手はありませんの?」
「フン、手ならなくもない。お前の兄貴用に作っている新型機がロールアウト間近だ」
「それだわ!それを早く。お兄様には私から言っておくわ」
「すぐには無理だ」
「なぜ?」
「新型機は別のラボで作っている。それを取りに行ってここまで護衛して運んで来てくれれば
生活安全部にくれてやってもいい」
「護衛?どうして?」
「新型機を競合企業を狙っているという噂がある。あいにく発明というのは
いちから生み出すか、奪ってそこから新たなヒントを得て発展させるかの二つしかない。
セデスネスカイザーも同じだ。ヤツらにアビリティマシンの完成に協力するふりをして
そのノウハウを奪わせて貰った。まぁその後、ウルヴァが自身の死が近いことを知っていたのか
私にアビリティマシンのすべてを託してくれた。だからこうしてファイヤーグリフォンの修理ができる」
***
「というわけよ」と、直江尊が手に持つスマホの画面越しに
桐川の依頼を生活安全部一同に伝えるフェリス。
「それがあればライドファイヤーがパワーアップできるのか?」
「ええ、もちろんよ」
「よし、それならその新型機を急いで取りに行くぞ」
「その必要はないわ。取りに行くのは私たちに任せて」
「私たち?」
「あなたたちは、モンスターの襲撃に備えなさい。プラントに何かあればスメラギ国の情報から交通に
至るまでのインフラが全滅。大きなパニックになるわ。ましてや明日は祝日。国民の多くが交通機関、
レジャー施設を利用するわ」
「わかった理事長に託す」
「だけど、ロード君は借りてくわ」
「俺⁉︎」
「輸送にはあなたのアビリティマシンが必要なの」
***
夜
ビルの屋上から瞬く星々を見ているマリーダ。
そこへ「なんでしょうかマスター?」と
ピンクと青のゴスロリ姿の双子の少女が現れる。
「キキ、ララ。種子を提供してくれたスポンサーと利害が一致した。
生活安全部のパワーアップはスポンサーも厄介のようだ」
「ハッ」と、キキとララは消える。
「頼むぞ」
***
桐川コーポレーション第3ラボ
人里の無い山間部に作られた大型の工場。
工場の裏手には線路が延びていて物資は常に
列車によって運搬されている。
工場の巨大なシャッターが開いて大型のコンテナが
ドライグライナーに牽引されて出てくる。
***
第3ラボを出発してしばらく順調に走行するドライグライナー。
コンテナの屋根には、ブラッドレール=フェリス、ターボファイター=天影乃アカネ、
ブリザードゾーン=氷城冷菓、ホワイトナイト=箔馬騎士らアーマードギアが待機している。
崖を走る線路に差し掛かると牽引するコンテナにさっそく爆撃が注がれる。
「敵のお出ましですわね」
煙が晴れるとそこに現れたのは魔法少女たちの5人。
「あなたたちが魔法少女?どうして私たちの邪魔をするの?この物資はクトゥルー討伐に必要なものよ」
「黙って、生活安全部のこれ以上のパワーアップは私たちの出番を奪う」
りりかは、マジカルソードでブラッドレールに襲いかかる。
「差し詰め、魔法少女vsアーマードギア少女と言ったところかしら」
「一応、男子もいますけど」と、ホワイトナイト。
「失礼、そうでしたわね」
「生活安全部の2軍が!」
戦うりりかとブラッドレール。
「言っておきますが、生活安全部は2軍の方が強いのですよ!全てにおいてね」
「レベル4になった私の力、味わって貰うんだから」
と、ライフル型に進化した2丁のマジカルショットで攻撃をするすずめ。
応戦するブリザードゾーンは「キンキンにしてやるわ!」と、コンテナの屋根を殴って
氷を広げていく。
「な、何よ。狙えないじゃない」
「すずめちゃん、私に任せて」と、アイリは、マジカルアローでブリザードゾーンに応戦する。
「うおりゃあああ!」と、マジカルハルバートを振り抜くマヤ。
マヤの渾身の一撃をターボファイターは拳で弾く。
「やるじゃないかアンタ」
「もちろんよ。力比べなら負けないわ」
ホワイトナイトの攻撃を交わすのが精一杯のなでしこ。
「なでしこ、押されてるよ!」と、マヤの檄が飛ぶ。
「ごめんなさい」
「これだから、レベル2は」と、すずめは狙撃でフォローする。
「2軍の方が強いってのは伊達じゃないようね」
「わかったかしら。フリフリピンクちゃん」
「……ッ」
***
コックピットのゴルドガレオン。
進行方向上空に宙に浮く少女=キキの姿を確認する。
「真打ちのお出ましか」と、ドライグライナーから躊躇なく
キキに向かって複数発のミサイルが発射される。
だが、激しい爆発でも傷つひとつ付かないキキ。
「やはり、人の姿をした化け物容赦はしない!」
ゴルドガレオンは、小型ジョット=ドライグジョットを分離させる。
「フフン、相手してあげる」と、キキはコウモリ型の大型モンスターに姿を変え
口から火を出して応戦する。
***
エネルギープラント地区
地響きとともに、再びムカデ型クトゥルーが現れる。
「ようやく出てきやがったな!」と、生活安全部のアビリティマシンが一斉に飛び出す。
「完全体となった我が子。ようやくお前たちも終わりだ!」
「とにかく連携で俺たちはあの怪物を倒すぞ!」
「了解!」
ソードライナーはバスターキャノン、AGX-Ⅱツヴァイキャノンはツヴァイキャノン、
ローズライダーとライドファイヤーは、それぞれ拳銃型の武器ライドブラスターで
代わる代わるムカデ型クトゥルーの首元の1点だけに集中して攻撃を加える。
「一箇所に集中して攻撃を加えればどんな硬いものにもヒビが入る」
「そこが俺たちの勝機だ」
「ムダムダ、決して砕けることはない!」
ムカデ型クトゥルーの悲鳴の波動によって弾き飛ばされる生活安全部一同。
地面に叩きつけられ動けなくなる。
「散々いたぶってくれた例はたっぷりさせてもらうぞ」
口を大きく開けるムカデ型クトゥルー。
「ヤバイぞ!」
放たれる激しいクトゥルーの咆哮をなんとか直撃を免れる一同。
体をギシギシと震わしながら、なんとか上半身を起こすソードライナー。
「これじゃ持たない。こうなったらグラビティキャノンだ!ラルフ!」
「ダメだ!この前は宇宙空間だからよかったものの、グラビティキャノンの衝撃にここにいる3体じゃ耐えられない。
今は倒せても次に戦えるアビリティマシンがなくなってしまう!切り札は最後の最後にとって置くべきだ、ソードライナー!」
「その切り札の使い時が今、のような気がするが……とにかくマズイな」
***
空中で戦うキキモンスターとドライグジョット。
ドライグジェットの上にはブラッドレールが乗って
レールガンで応戦している。
隙をついたキキモンスターは線路側面に伸びる崖に翼を当てて崩していく。
下を走るドライグライナーに岩石が降り注がれていく。
「しまった!」
先頭のドリルをフル回転して岩を凌ぐドライグライナーはスピードを加速させる。
魔法少女とアーマードギアたちも武器で岩石を撃ち落として行く。
「生活安全部に届けるまでは、なんとしてもこの荷物だけは守りきる!うおおお!」
落石を切り抜けると今度は、コンテナが激しく揺れる。
「きゃあああ」と、悲鳴を上げる魔法少女とアーマードギアたち。
コンテナの後ろにクモ型モンスター=ララがはりつく。
「あんたたちはここでおしまいだよ」
「キキの次はララ⁉︎幹部が2人も⁉︎」かつてない状況に焦りを感じるりりか。
ララモンスターのしがみついた脚が次第にコンテナに突き刺さっていく。
「キンキンにしてやる!」と、ブリザードゾーンが脚を凍らせていく。
「ちょっと冷たい!」
「みんな、私たちもつづきましょう」アイリの掛け声で魔法少女たちは別の脚を攻撃。
「ちょっとなんなのこいつら!私の脚に何するの⁉︎」
本体にドッキングするドライグジェット。
「もっとスピードを上げなさい」
「(やれやれ)行きますよ!」と、ゴルドガレオンは、レバーを目一杯引く。
スピードを上げるドライグライナー。
「ここからは直線!ここで振り切る!」
「かかったわね!」
突然、景色突然歪んだかと思うと直線だった目の前の線路が急カーブに変わる。
「しまった!。さっきの幻惑だったのか」
急ブレーキをかけるゴルドガレオン。だが、スピードが落ちないままカーブに入ってしまう。
車輪が火花を上げて車体は大きく傾きながら走行。
「マズイ!」
ドライグライナーはコンテナを切り離して人型形態に変形。
コンテナは崖下に落ちていく。
悲鳴を上げて落下していく魔法少女とアーマードギアたちをなんとか全員キャッチする。
落ちたコンテナは大きな音を上げ大爆発を起こす。
メラメラと燃える崖下の森を呆然と見つめるしかないアーマードギアたち。
***
エネルギープラント地区
ムカデ型クトゥルーの攻撃に立ち上がることもできない生活安全部一同。
「次は本気だ!プラント施設ごとお前たちを吹き飛ばす!」
ムカデ型クトゥルーは再び大きな口を開けてビームをチャージしはじめる。
「人間たちよ。日常を壊されパニックに陥るといい。人間の負の感情はクトゥルーの糧となる。
かつてクトゥルーによって世界の表舞台を奪われた我々、魔界の者が今度はクトゥルーを使って世界の
支配者となるのだ!」
「なんとか、施設だけでも」と、食いしばってなんとか立ち上がるライドファイヤー。
「まだやるつもり!」
ライドファイヤーは、力を振り絞ってムカデ型クトゥルーに飛びかかる。
そしてムカデ型クトゥルーから繰り出される触手を掴んで堪える。
「もっと戦える力があれば……」
その時、爆撃がムカデ型クトゥルーの顔に直撃する。
「⁉︎」
「みんなー!」と、月代サヨの声で1台のウェスタントラック向かってくる。
「なんだ⁉︎」
運転先から降りてくるサヨ。
「軽バンしか運転したことないんだからー!」とその場に泣き崩れる。
「こわかったぁ〜」
サヨはここまで慣れない大型車両を運転して、うねうねとした峠を越えて来ていた。
「火条ツカサ、お前の新しい力だ!」と、ライドファイヤーに桐川から通信が入る。
「ヨッシャー!」
ライドファイヤーはウェスタントラックのコンテナの上に飛び乗って
「行くぜ!破獣合体!」
ウェスタントラックのシャーシ部分がせり上がり、胴体から腰にかけての部分に変形。
コンテナガワが開き背中の羽となる。
悪路でも走行できるようにコンテナのところの車輪はキャタピラになっていて
変形時には両脚の側面にきている。
トラックのフロントから運転席にかけてが2つに割れて肩から腕に変形する。
胸にはティラノザウルスの顔を模った意匠が付いている。
胸が開いてライドファイヤーが中に乗り込むと
顔が展開して青と白のボディーカラーのマッシブな機体が完成する。
「グランドザウラー!」
背中には、メイス型の武器=グランドメイスとジェット機形態の時は機首にもなるドリル型の武器
グランドドリルが備えられている。
「まさか、中身ではなくトラックそのものが新型機だったとは!」と、驚くマリーダ。
「あれが桐川博士の新型!」
「ツカサ!」
「ありがとうございます先生!」
泣いているのか笑っているのかわからない表情で頷くサヨ。
「しくじったな。キキとララ」と苦々しい表情のマリーダ。
「囮作戦がうまくいった、行け、グランドザウラー」
「おうよ!」
グランドザウラーは背中から取り出したグランドメイスをその有り余る力で、頭の上で回転させてから構える。
「行くぜ!」
ムカデ型クトゥルーから繰り出される触手をグランドザウラーはマッシブな体には思えないほどのスピードで飛行しながら軽やかにかわす。
「すごい!相手の攻撃がスムーズに読める」
モニター越しにニヤリとする桐川。
「当たり前だ。グランドザウラーにはZXシリーズの感知システムが搭載されている。あのような攻撃、先を読むのは容易い」
「うおおお!」と、グランドメイスで触手を叩き潰すと、「一気にキメる!」と、飛び上がってグランドメイスをムカデ型クトゥルーの頭蓋に叩きつける。
意識を失って"ズドーン"と、地べたに張り付くムカデ型クトゥルー。
グランドザウラーがグリップを捻ると、グランドメイスの鋭く尖った先端が飛び出して"グシャ"っと頭蓋を貫く。
ムカデ型クトゥルーは静かに砂へとかえる。
「お、おのれ!生活安全部。次こそは必ず」と魔法陣の中に消えるマリーダ。
戦いを終えたグランドザウラーが力強く佇む。
***
夜
ビルの屋上でイライラしながら次の計画を練るマリーダ。
「!」と、背後の気配に気づいて振り返る。
「誰だ!」
そこに現れたのは柊紫月。
「お前が魔術協会だな?」
「なんだお前は、魔法少女?ではないようだな」
「お前を片付けに来た」と、黒い物体を投げる紫月。
マリーダの足元に転がるのはキキとララの首。
「キキ!ララ!」
マリーダがハッとした瞬間、彼女の右腕が落ちる。
「うっ……」
うずくまるマリーダに日本刀を抜刀した紫月がゆっくりと近づく。
その様子を反対のビルから見ている間宮ヒト。
「フ、……」と、ニヤリとした表情を見せる。
「魔術協会はこれで終わりだね」
そしてマリーダの全身に太刀筋が走ったかと思った瞬間、彼女はバラバラに崩れ落ちる。
つづく




