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ミニヨンウォーズ 教室の皇女と高校生ヒーローの3人  作者: ドットオー
第1章生活安全部編
11/52

第11話「椅子を失った男たち」

スメラギ国総理官邸


華僑院玄徳は、赤い絨毯が敷かれた長い廊下を苦しそうに胸を押さえ、杖で力の入らない体を

支えながらゆっくりと歩いて行く。

引きずるように足を一歩づつ、前に出すたびに息が乱れ、苦痛に顔を歪める。

華僑院が総理官邸に姿をあらわしたのは10日ぶりのことである。


***

総理執務室では、安守公彦官房長官とグールド・グレモリー、そして総理秘書官たちが待ち構えている。

執務室の大きな扉がゆっくりと開いて、華僑院の姿が見えるとグールドと秘書官たちが駆け寄る。

「総理、お体の方は?」

華僑院は、「かまうな!どけ」と、グールドを払いのけてソファに座る。

「見ての通りこのザマだ。ワシは、今日をもって内閣総理大臣の職を辞する。このまま隠居させてもらう」

"まさか"と秘書官たちのどよめく声で室内が騒めき出す。

「お待ちください。総理にはまだ続けて頂かなくては」

「安守よ。擬似とはいえ、救世の巫女が揃ったのだ。ワシの悲願に専念するだけだ」

「ですが、総理」

「グールド、こちらへ」

華僑院の手招きに応じ、グールドは、華僑院の足元に膝間付き、頭を下げる。

そのグールドを安守は、しかめた表情で見つめる。

「グールドよ。ワシのためによくここまで働いてくれた感謝する。

救世の巫女を手に入れることができたのもお前のコネクトシールのおかげだ」

「身に余る光栄にございます」

「これからも励め」

「はっ!」

「そして、今度は安守のためにその力を尽くしてくれ」

「⁉︎」

「安守を頼む」

まさかのことに戸惑うグールド。

「安守、お前に後を頼む。組閣の準備を急ぐのだ」

安守も「…………は、はっ!」と、戸惑いながら頭を下げる。

そして、不敵な笑みを浮かべていた、グールドの顔が曇る。


***

3時間後ーー

テレビのニュースでは、安守が内閣総理大臣に就任したことをひっきりなしで放送されている。

「先ほど、3時間という異例のスピードで安守公彦氏を総理とする安守内閣が発足しました。

安守総理は、10代の頃より華僑院玄徳前総理に使用人として仕え、せいじかになってからも

10年に及ぶ華僑院政権を側で支え続けていました…………」

行き交う人々をクギ付けにする街灯の巨大テレビや、学生らが持つスマホに映し出される映像には、

総理官邸の大階段で安守を中心に写真撮影に臨む、閣僚たちの姿が映し出されている。

眩くフラッシュが焚かれる華々しさの中に、グールドの姿は無かった。


***

キサヒメ学園理事長室

「どうなっていますの!」と、フェリス・グレモリーはテレビを前に思わず立ち上がってしまう。


***

キサヒメ学園生活安全部部室

テレビにクギ付けになっている、火条ツカサ、直江尊、ラルフ、火条アルテ、月代サヨ、ウルヴァの

生活安全部一同。

「どいうことだ…………」と尊は困惑する。

「グールドさんの後ろ盾はどうなってしまうのでしょうか?」と、サヨは不安をウルヴァに投げかける。

「分からない。だが、政府内でいったい何が起きているんだ…………」


***

スメラギ国総理官邸 総理執務室

「失礼します」と、グールドは大きな扉を開け入室する。

それを、総理の椅子に座る安守が待ち構えている。

「党の人事が決まった」

頭を下げるグールド。

「グールド、お前に農業委員会の青年部長を務めてもらいたい」

「農業委員…………ですか?」

「予算委員や他のと違って華々しさはないがやりがいがあるはずだ」

「お言葉ですが、総理は私を徹底的に干されるおつもりなんでしょうか?」

安守は立ち上がり、グールドの前に立つ。

「気に入らないなら、党を離れてもらっても構わない。成し得たい望みがあるなら同士を集め

政治の場で勝負しろ」

顔を近づけ睨み合う二人。

「どうしてあのお方の望みを叶わぬ夢で終わらせてあげなかった」

「…………」

「責任は俺が取る。それが華僑院を守る俺の役目だ」

安守は、すかさず受話器取って電話を掛ける。

「ああ、組長さん、すみません。うちの若いのがやり散らかしたことの始末お願いします」

グールドは、グッと拳を握って堪える。

***

一週間後

グレモリー家屋敷のリビング

白髪をオールバックにまとめた老紳士=アール・グレモリーは、紅茶をたしなみながら新聞に目を通している。

フェリスが肩をいからせながらやって来て、週刊誌をテーブルの上に叩きつける。

「お父様!お兄様を放っておいてよろしいのですか⁉︎」

週刊誌には、キャバクラで豪遊するグールドの記事が掲載されている。

役職を奪われ、党内での居場所を失ったグールド嘲笑する内容が書き連ねられている。

「このまま遊ばせておいてはグレモリー家の名折れですわ。お父様から厳しく」

「フェリス!お前も政治家の妹なら耐えろ!今はその時、くだらんことで騒ぎ立てるな。あの男は、私の秘書をしてたころから変わらん」

「そうでしたわね…………」


***

とある山奥の別荘地

森の中にポツンとある一軒のログハウスがある。

その周囲をレッドワイズの集団が取り囲んでいる。

それに対峙するブルーウルフの集団とで睨み合いを続けている。

そこから200m離れたところにレッドワイズ本陣が敷かれている。

陣中では、キングのシュナイド・ロズベルが椅子に座り余裕の笑みを浮かべ

静かに時を過ごしている。

その傍らにはビショップが前を見据え立ち尽くしている。

「ブルーウルフのヘッドも隠れ家まで追い詰められて囲まれるとは思っていなかっただろう」

「すでに4日が過ぎています。兵糧が尽きる頃合いかと」

「相手が降参するのを待つだけとは、あの最強と謳われたブルーウルフを相手にしているにしては、楽な(いくさ)だ」

伝令係の構成員が入ってきて、シュナイドに耳打ちをする。

「何⁉︎こんな時にか?」

「はっ! いかが致しますか?」

「顔を出さないわけにいかないだろ」


***

夜ーー

シュナイドは、スメラギ国で最も力のある暴力団(ヤクザ)組織"極星会"の屋敷を訪れていた。

広い中庭を臨め、10畳はある座敷で極星会No.2の若頭と酒を酌み交わしながら会食をしている。

「こんな大事な時に、呼び出して悪かったな」

「兄貴のお呼びたてとあればどこからでも参じます」

「それは助かるのう」

「兄貴、話とは?」

「ああ、うちとシノギ合いしていた海賊と手打ちになった」

「なっ!」驚愕で目を見開くシュナイド。

「元々お前らの小競り合いもうちと海賊の代理戦争みたいなもんだった。これで終いや。

そこで頼みがある。ブルーウルフの傘下に入ってくれ。それで全てが丸く収まる」

「待ってくれ!兄貴。ブルーウルフとの(いくさ)、勝てるんだ!どうして俺たちが海賊側のブルーウルフの下に付かなきゃいけないんだ⁉︎」

「分かってくれ。こうするのが一番なんだ。頼む」

黒光りするテーブルに頭がつくぐらい深く頭を下げる若頭。


***

朝ーー

とある山奥の別荘地

「兄貴は間違っている。俺たちが海賊の下につくことはねぇ。

この(いくさ)に勝って、下につくべきは奴ら(ブルーウルフ)だと証明してやる」

シュナイドは、陣の外に出て、構成員たちの前に立ち、宣言する。

「お前ら、聞け!待つのも退屈で飽きた。これから総攻めを仕掛ける。

ブルーウルフの奴らに俺たちの強さを見せてやるぞ!」

「オー!!!」と、閧の声と共に士気が上がる構成員たち。

「キング、お言葉ですが、最良の判断とは思えません。今しばらく」

と、ビショップが諌める。

「黙れ!」

「俺が交渉して降伏を促します」

「いいから、お前も総攻めに加われ!」


***

シュナイドの「掛かれぇ!」の掛け声で、レッドワイズの総攻めがはじまった。

金属バットや鉄パイプを持った構成員たちが一斉に動き出す。

応戦するブルーウルフ側は、その勢いに押され刃が立たない。

レッドワイズ側は、「行け!」、「行け」とその進撃の勢いは止まらない。

だが、突然、光線がレッドワイズの構成員たちを撃ち抜く。

バタバタと倒れる構成員たちの前に白いローブを纏ったイシュタルトの信徒達が姿を表す。

信徒のかざす右手に魔法陣が現れ、光線を放つ攻撃魔法が展開される。

炎系の攻撃魔法に撃たれた構成員は、そのまま人体が燃えて灰になってしまう。

それを目の当たりにした、他の構成員たちは、恐れをなして次々に逃げ出して行く。


***

7時間後ーー

イシュタルトの攻撃により、レッドワイズは撤退を余儀なくされ、

シュナイドたちは近くの廃工場に身を寄せていた。

伝令係の構成員が、血相をかきやってくる。

「ご報告致します。イエロードックス、スカルブラックら2次団体、3次団体が敗走。

踏ん張っていたレッドワイズ本体の2番隊、8番隊も撤退を余儀なくされました」

「ルークまでもか?」

「負傷された様子で致し方なく…………」

「クソッ!」

「キング、我々も撤退いたしましょう」

「何を言っているんだ!ブルーウルフに勝てるんだ。ここまで来て引き下がれるか」

「我々はもう負けました!キング、あとは私たち一番隊にお任せ下さい」

「まだだ、ビショップ!これから反転して奴らの裏を突けば勝てる。俺たちは負けてねぇ!」

「お前たちキングを頼む」

ビショップに命令された構成員たちはシュナイドの両腕を左右から掴んで屋外へと連れ出す。

「離せ!離せ!ビショップ何をする。戦いは終わってねぇ」

「ここは、任されました。キング」

シュナイドが屋外へと連れ出されると、壁を突き破り、イシュタルトの信徒たちが現れる。

ビショップは、鉄パイプを握り構える。

「ここから、先へは行かせん」

「人間が、そんな物で俺たちと」と、信徒が鼻で笑う、その隙をついて隣にいる別の信徒の頭頂部を

殴り付ける。

「女⁉︎」、ビショップは、倒れた信徒の顔を見て驚く。

「この人間風情が!!」と、信徒の飛び蹴りがビショップの顔面に直撃。

5、6m飛ばされたビショップは、そのまま立て掛けてあった資材に叩きつけられる。

「こ、こいつら人間なのか?」

「消えろ人間!」、信徒の手に魔法陣が展開する。

そのとき、「うおりゃぁぁ!」と、ファイヤーアーマーが現れ、信徒を殴り飛ばす。

「おっしゃ!ここからは俺たちの番だぜ」

「お前たちはいったい…………」

"ギャー!"と、信徒の悲鳴が聞こえてくる。

ローズファリテが専用武器キャスタルブレードを両手に現れる。

「イシュタルト、(わたくし)は…………(わたし)は、グリティシア王国を滅ぼしたお前たちを許さない!

ここでクタバレー!」と、容赦なく信徒たちを切り倒していく。

「やっぱヤベェ人だよ。あの姫様」


***

レッドワイズの構成員たちは追いかけている信徒たちの前に現れる、ソードアーマーとシューティングアーマー。

「能天気なお嬢様の命令通りカラーギャングの殲滅に来てみたけど、一方的すぎて見てられねぇ。加勢するぜ」

信徒たち相手にそれぞれの武器で戦う、ソードアーマーとシューティングアーマー。

「ここからは、私たちが相手をする」と、信徒たちの間を割って3人の小柄な信徒が現れる。

フードをめくると3人は女性。

「この人たち失踪者だ」

「擬似救世の巫女」

3人の女性信徒は「召喚」と、叫び巨大な魔法陣から

ゴウカ、バイオラス、ハリケオスの3体が出てくる。

「以前、倒したロボット⁉︎」

「なんか強化されているぽい」


***

「特急合体」の掛け声でソードライダー、ウィングライナー、バスターライナーの三体が合体して

ソードライナーとなる。

そして、上空から着陸して来たシAGX-Ⅱに乗り込むシューティングアーマー。

ロボットモードに変形して、ゴウカたちに挑む。


***

炎を纏った腕で襲い掛かる信徒を次々に倒す、ファイヤーアーマー。

だが、突如背後から現れた信徒の攻撃に交わすことができない。

「しまった!」

振り払われた鉄パイプが信徒を殴り飛ばす。

「背中がガラ空きですぞ」

「すまねぇ。助かった」

背中を預け合う二人。

「背中は任された」

「了解!頼むぜ」


***

「車輪スラッシャー」

バイオラスから伸びる触手を切り裂くソードライナー。

AGX-Ⅱもハリケオスから繰り出されるタイフーンを交わして、バスターライフルで

タービンを破壊する。

だが、側面からのゴウカの炎攻撃によって飛ばされる二体。

「クソ!三体相手じゃ厳しいか」

攻撃の手を緩めないゴウカは、次の攻撃を発動する態勢に入っている。

その時、背後からの爆破でゴウカは、態勢を崩す。

「待たせたな!」と、ファイヤーグリフォンが現れる。

「ファイヤーグリフォン!」

「三体揃い踏みだな」と、ソードライナーが、ファイヤーグリフォンの肩を叩くと。

ファイヤーグリフォンをセンターに三体が並び立つ。

「一気に決めようぜ!」

「おう!」

「了解!」

「冷凍弾装填」と、AGX-Ⅱはバスターライフルに弾を込める。

ファイヤーグリフォンの「ブレストバーン」、ソードライナーの「車輪スラッシャー」の

攻撃が炸裂。

ゴウカ、バイオラス、ハリケオスは、中央に固められると、冷凍弾が着弾して

身動きが取れなくなる。

「グリフォンソード」、「クロスソード」そしてシューティングアーマーがレバーを一気に押して

「AGX-Ⅱ斬撃アクション!」三体同時の剣撃で、ゴウカ、バイオラス、ハリケオスは爆発と共に倒される。


***

夜ーー

レッドワイズ一番隊のアジトである雑居ビル 5Fの一室

ソファの上で構成員に手当を受けているビショップ。


***

「なんとか生きて帰れます」

変身を解除するファイヤーアーマー。

「やるなぁ、あんたも」

キサヒメ学園の制服を着たツカサの姿に驚くビショップ。


***

「まさか、レッドワイズのNo.2が高校生に助けられるとは…………これでふり出しですか。

なんとしてもキングの夢を叶えてやらねば」

ビショップは、警察官の制服に身を包み、ゲームセンターでケンカしているシュナイドを

取り押さえている情景を思い起こす。

「警官だった頃、不正を働く上司を殴り飛ばしてクビになり、ケンカばかりのあいつを取り締まって筈の

俺がいつの間にか、あいつに生かされてました…………」

"ドンドン"と、ドアをノックする音。

「ワシや」

「ビショップさん、極星会の若頭です」

「何?今すぐ開けてやれ」

「へい」

"ドンドン"と再びドアをノックする音。

「へい、お待ちを」

ドアが突然、蹴破られ銃を持った黒服の男たちが入ってくる。

"パンパン"と屋外に銃声が鳴り響いた。


***

レッドワイズのアジト

「ビショップの奴、余計なことを」不機嫌そうに頬つえをついてキングの椅子に腰をかけるシュナイド。

「策は決まった。明朝もう一度総攻めを仕掛ける。準備に掛かれ」

戦意を喪失した構成員たちは顔を見合わせるばかりで動こうとしない。

「お前たち!それでもアウトローか⁉︎」と、シュナイドは立ち上がり檄を飛ばす。


慌てた様子の構成員が息を切らし入ってくる。

「キング、ビショップの兄貴が極星会の若頭に殺された」

「なんだと!」

「キングに伝えろと、俺だけ生かされて。すまねぇ」

土下座しながら咽び泣く構成員。

「ビショップが…………」

その場に崩れ落ちるシュナイド。

極星会の強行的な手段に自分の判断が見誤ったことに気づく。

「お前は、それで終わりか?」

グールドが姿を現す。

「誰だ?貴様」

「どこのもんだ?」「殺すぞ、コラ」と、構成員たちから

威嚇の罵声が飛び交う。

「スポンサーの顔くらい覚えておくんだな」

ルークは、ハッと思い出して「テレビで見たことある」と、グールドを指差して興奮する。

「シュナイド・ロズベル。極星会という後ろ盾に見限られてその様か?その程度の器で

キングとは笑わせるな」

グールドは、シュナイドの胸ぐらを掴んで立たせるとそのまま顔を殴る。

「何するんだ!」と、シュナイドは反撃のパンチをするもあっさりかわされる。

「所詮お前たちは、社会からはみ出したクズ同士が群がってアウトローなどと強がって威張っているだけのこと。

確かお前たちの世界は強さで優劣が決まるんだったな。いい機会だ教えてやる。強さですら、真っ当に生きる人間には

勝てないんだよ。とくに政治家さんにはな!」

グールドの渾身の蹴りが、シュナイドの溝落ち深くにめり込み2、3m飛ばされる。

グールドの強さに興奮を隠しきれないルーク。

「変身」

ブラックジョーカーの姿になったグールドは、ひな壇のキングの椅子に座る。

「キングの椅子、悪くないな」

その姿にルークは、倒れ込むシュナイドに唾を吐きつける。

そして、シルバルドと、ヴィダルファングも入ってきてブラックジョーカーの両脇に立つと

ブラックジョーカーは宣言する。

「今から俺がキングだ」


































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