表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

エピローグ

エピローグ

『………いつか、お前の名前と同じあの石をプレゼントする』

 かつて、彼はそう言っていた。私の名前は今は亡き母が付けてくれた大切の名前である。それを知ってか、知らずか、彼は突然、そんなことを言ってきたのだ。

 だが、あの石は特別なものなので、子供が買えるわけがない。彼は鉱山町の子供のようで、そこから取ってこようとしたらしいが、彼のお父様にばれて、説教を食らったそうである。

『別に、私はそんなものなんかいりません』

 そう、貴方が近くにいてくれれば、私はそれだけで良かった。彼さえ、いてくれれば、その他のものは必要なかった。

 今、そんなことを言っても意味がないとは思うが……。


 あの事件の後、父は秘密裏に国に逮捕された。流石に、教皇が捕まったと知れば、町に動揺が走ると踏んだからだろうと思われる。

捕まえたのはいいのだが、父の供述は曖昧で、あの石をどうやって作ったのか、協力者は誰だったのか、分かっておらず、捜査は困難を極めているらしい。

 本当なら、私はこれ以上ヴェスタの巫女をしていい身ではなかったので、辞退しようとしたが、教会側に止められた。

 まだヴェスタの巫女の後継者がいない今の段階では辞めさせてはくれないそうだ。

 本来なら、後継者候補の貴族の子が何人かいてもおかしくなかったが、おそらく、父が何かしらの手で、彼女達が来ないようにしたのだろう。

 今になっても、父のことは分からない。優しい父ではなかった。それ以前に、彼は私を見てくれなかった。おそらく、彼は私のことを只の駒としてしか見ていなかったのかもしれない。

 だが、彼は唯一の私の肉親で、本当なら、彼の悪行を私が止めなければならなかった。だから、罪滅ぼしとして、ヴェスタの巫女として、この身がどうなろうと、この街を守ろうと誓った。

 今日届けられた一枚の手紙がある。この手紙によって、あの出来事に隠された真実が書いてあった。これを明らかにするかどうかは私に委ねると、その手紙に書いてあった。

 手紙主が誰かは書いてなかったが、おそらく、黒犬と呼ばれたあの青年だろう。

 私は彼のことを全く知らない。あの時、教会で顔を合わせたきり、会っていない。どうやら、人知れず姿を消してしまった。噂を聞くところによると、彼があの事件の功労者の一人らしい。

 彼はこのことを知らせる為に、手紙を送ったわけではないことは分かっている。この事件の顛末を書いたのはついでに過ぎないことだろう。

 あの手紙と共に届いた一つのネックレス。

“誕生日おめでとうございます。これは貴女のことを大切に想っている男からのプレゼントです。受け取ってくれることを祈っています”

 手紙と一緒に入っていたメッセージカードにはそう記されていた。

 おそらく、その“男”とは間違いなく、“彼”のことだろう。彼がどうして今まで私の前に姿を現さなかったのか分からない。そして、この後も彼は私の前に姿を現してくれないだろう。だが……、

 そのメッセージカードの後ろにその後の続きがあった。

 “もし貴女が望むのならば、私が願いを叶えると言ったので、叶えます。次に里帰りをしたら、顔を見せに行くように仕掛けるので、それをどう使うかはあなた次第です”

 この文は恐らく、あの時、私の前に現れた青い鳥と呼ばれた青い髪の少女。彼女は本当に不思議な人である。

 どうして、二回くらいしか顔を合わせていないのに、ここまでしてくれるのかは分からない。

 もしかしたら、だからこそ、青い鳥と呼ばれているのかもしれない。

 私が書を記す時には、彼女のことを書こうと思う。

 青い鳥はヴェスタの町を救ってくれた、と。


***

「………鏡の中の支配者(スローネ)に届けに行ってもらいました」

 青い鳥は病室に姿を現す。

 予想通り、あの事件で負った怪我の所為で、病院にお世話になることになってしまった。久々に、赤犬さんの愛あるお仕置きを受け、久々に、ここで働いている俺の同期である白髪の変人から厭味を受けた。

 まあ、青い鳥と行動していれば、こう言うことになることも良くあることなので、とっくの昔に、これらから打開することを諦めている。

 一応、俺の入院費は教会持ちなので、支出はあまりない。とは言え、今回は謝礼金も何も出なかったので、当たり前と言えば、当たり前である。

 意識を取り戻した後、俺は断罪天使エクソシアから頼まれていたことをする為に、手紙を書き、青い鳥にとあるところへ届けるように頼んだ。配達屋に持っていったと思ったが、どうやら、こいつは鏡の中の支配者(スローネ)に届けに行かせたらしい。

 あの彼が届ける気になったかは不明だが、もし俺と会うことがあったら、確実に文句を言われるだろう。

 あの日、断罪天使エクソシアに出された条件。

『………俺から出す条件はただ一つだ。もうすぐ俺の幼馴染の誕生日があるのだが、そいつの為に、余ったものでいいから、ネックレスでも作ってくれ』

 かつて、彼があそこにいた頃、一人の少女と仲良かった。彼女と彼は良く一緒にいたが、身分が全く違っていたそうだ。

 だけど、彼は彼女を大切に思っていた。だから、彼女を守りたかった。

 だが、あの事件の所為で、彼のその想いが叶わなくなってしまったのは言うまでもない。

 もしかしたら、彼は再生人形エクソシアと彼女を重ねてしまったのかもしれない。

 儚く消えてしまいそうなその姿を……。

 おそらく、彼はもう二度と彼女に姿を現す気はないだろう。

 彼は人の領域を超えることのできる力を持っている。もし彼女の近くにいれば、その力の所為で、彼女が傷つくこと知っている。

 あの時、彼が見せた力。あれが彼の特異能力らしい。

『―――エクちゃんがあの姿をすれば、全ての魔法を魔法陣なしで魔法を行使できる。ですが、あの力は強大すぎて、エクちゃんにもまだ制御できていない状態です。ですから、彼があそこまで持ったのはお兄さんもびっくりです。これも愛の力が為せる技でしょうか?若いとは羨ましいものです』

 鏡の中の支配者(スローネ)が話してくれた。流石に、どうやって、ああ言った裏技を使えるかは教えてくれなかった。いや、それは鏡の中の支配者(スローネ)でも知らないことなのかもしれない。

 とにかく、俺達や赤犬さんのように自分で守れるくらいの力があれば良かったのかもしれないが、彼女にはその力がない。

 だから、彼女にもう二度と害を及ぼさない為に、姿を現すことができないのだろう。

 だが、そんなこと知ったことではないと、青い鳥は言うだろう。誰かが幸せを願うなら、それを叶えるのが私の仕事です、と。

 青い鳥は俺が書いたメッセージカードの裏に何か書いていたのは知っている。俺はその内容を見ていないが、その内容を見たら、断罪天使エクソシアが慌てふためくだろう。

 あいつがやることはいつも同じことなので、見なくても分かる。これ以上は二人の問題なので、流石の青い鳥もそこまで出しゃばることはしないだろう。彼女が断罪天使エクソシアに再会するきっかけを与えるつもりだとは思うが。

「それにしても、悪いな。今日はお前の誕生日だと言うのに……」

「そう思うのなら、今すぐ治して下さい」

 こいつは無茶なことを言ってくる。

 今日はこいつの16歳の誕生日である。俺の手料理は振るってやることはできないが、お袋があいつの為に誕生日パーティーを開くらしい。こいつを驚かせるために、いろいろなプレゼントや料理を準備しているらしい。その為、村から追い出されたらしい。村ぐるみで何かするつもりだと思うが、あのお祭り大好きな村の人達のことだ。青い鳥の誕生日にかこつけて、大騒ぎするつもりらしい。

 まあ、それは青い鳥が村の人達に愛されているから、が前提であるのは言うまでもない。

 そんな訳で、青い鳥は村以外に行く宛てはここしかないので、本人曰く一人寂しく、王都に来たのはいいが、面会時間が来ていないので、赤犬さんの家にお邪魔したら、プレゼントがいくつか置いてあったらしい。赤犬さんからのプレゼントは勿論、姫や翡翠の騎士(エイル三世)、そして、城の使用人たちからのプレゼントがあったらしい。黒龍さんがわざわざ届けに来てくれたらしい。あのプライドの高い人が嫌いな部類に入る青い鳥の為に持ってくることに驚きを隠せないが、おそらく、姫や翡翠の騎士が頼んだに違いない。黒龍さんは翡翠の騎士はとにかく、姫には甘いところがあるから。流石に、黒龍さんからのプレゼントはなかったそうだが、姫からのプレゼントが二つあったらしいので、もしかしたら、どちらかが黒龍さんからのプレゼントかもしれない。

 そんなわけで、青い鳥の気分は比較的いい。ちなみに、青い鳥にゾッコン中のあの白髪変人は青い鳥が持っていたプレゼントで、今日が青い鳥の誕生日だと気づき、誕生日プレゼントを買いに行こうと抜け出そうとしていた(看護師長さんの手によって、阻止されたが)。

 青い鳥は俺からプレゼントを期待しているようで、貴方はくれないんですか、とチラチラ見てくる。

 すでにこいつへのプレゼントは手にあるのだが、やはり、お楽しみは最後に取っておくものだ。

 そろそろ、面会時間が終わる頃になり、青い鳥は残念そうな表情で見る。俺からプレゼントをぶんどれなかったことが心残りのようである。

「………帰ります」

 青い鳥はそう言って、ドアにかけて、振り返り、

「本当に帰ります」

 そう念を押す。本当にくれないのですか、と言う様子で。その様子はご飯を楽しみにしていた子犬そっくりである。

「…ふははははは」

 そう思った瞬間、今までこらえていた笑いが口をつっ突いてきた。もう限界だ。

「いきなり、笑いだすなんて、酷いです」

 こいつは心外だと言わんばかりの様子を浮かべる。

「悪かったな。お前の行動が面白くてな。つい。ほれ、プレゼントは用意してあるから、そんな不機嫌そうにするな」

 俺は綺麗にラッピングした箱を取り出す。

「………貴方は本当に酷い人です。プレゼントがあるなら、早く渡して下さい」

 こいつは素早くその箱を奪って、箱を開ける。

「開けてもいいかくらい言ったらどうだ?」

 俺は悪態を吐きながら、こいつを見る。そして、こいつはワクワクしながら、開けていくと、その中身を現す。

「………あの。私は目が悪くはないと思うのですが?」

 こいつは俺のプレゼントを持って、不服そうに言ってくる。

「眼鏡は目が悪くてする奴ばかりではない。お洒落でする奴もいるんだぞ」

 俺は諭すように言うと、

「御洒落でするにしては少し不格好のような気がしますが?」

 確かに、これはすべて俺の手作りなので、少々の不格好は許して欲しい。一応、お前に合いそうな群青色のフレームを使ってやったんだから、少しは喜べ。

 それに、この眼鏡には秘密がある。

「………俺がせっかくプレゼントしたのに、お前はしないのか?酷い奴だな。お前は」

「あそこまでじらしておいて、こんな不格好なものをプレゼントした人には言われたくありません。ですが、人の好意を仇に返すのはよくありません」

 こいつは渋々と眼鏡を掛ける。その瞬間が一番緊張する。もし俺の目論見が成功しなければ、これは本当にただの不格好な眼鏡になってしまう。

 こいつは眼鏡をして、俺の顔を見た瞬間、こいつには珍しく、驚いた表情を浮かべ、固まった。

「………どうだ?」

 俺はこいつの感想を聞く。こいつの行動から見て、成功だと思うが、本人から直に聞かないと、安心できない。

「………私の目の前に黒い髪と黒い眼をした背が小さい男の人がいます」

 本当のことだが、とても失礼なことを言ってくる。

「誰よりも格好いい男の人がいます」

「……そうか。なら、周りを見たら、もっと驚くだろうな。鏡の中の支配者(スローネ)はとにかく、断罪天使エクソシアやカニスだって、かなり格好いい方だし、黒龍さんや翡翠の騎士だって、負けてない。お前の幼馴染の帝王キュリオテテスだって格好いいぞ。まあ、トニーの方は格好いいというよりは可愛い方だな。俺の弟達も可愛いぞ」

 弟達は兄の美化が少々入っているかもしれないが。

「赤犬さんはとても美人だし、姫も美人だ。再生人形リバースドールは美人というより、可愛いといった方がいいだろうな。それに、見てみろ」

 俺はそう言って、青い鳥に鏡を見るよう促すと、こいつは信じられないという様子で、

「………可愛い女の子が目の前にいます」

「自分を可愛い言うな。ナルシストみたいだぞ」

「私は自分がもっと不細工な女の子だと思っていました。ゲンおじさんは女装をした貴方の方が可愛い言っていました。娼婦館の主人も私より貴方の方を高く買っていました」

こいつは人生の中で最大の汚点を突っついてくる。まあ、自分の姿が見えない状態で、女装した男の方が可愛いと言われれば、自分は不細工なのではないか、と心配にもなるか。

「………私がこんなに可愛いのですから、貴方の女装姿はもっと可愛いと言うことになります。今度、サーシャおばさん達に頼んで、もう一度貴方を女装させてもらいます」

「やめてくれ!!」

 もう一度、あの姿をさせられれば、俺は恥ずかしすぎて死ぬかもしれない。もう二度とあんな姿になってたまるか!!

「とにかく、早くいろいろな人達を見なければいけません。赤犬さんの所に行って、赤犬さんの姿を見て、村に帰って、貴方のお母さんやお父さん、弟さんの姿を見て、村の人達を見て、カニスの狼バージョンを見て、堪能しなければなりません」

 どうやら、こいつは今回の件のご褒美で我が家に遊びに来ているカニスに狼になるよう催促するらしい。カニスにとっては今日が厄日になりそうだ。

「そうか。喜んでくれたのなら、何よりだ」

 不格好な眼鏡だけど、こいつがすることによって、違和感を抱かせないのも青い鳥マジックによるものかもしれない。

「ありがとうございます。今日は忘れられない一日になります」

 青い鳥はうっすらと笑みを浮かべる。笑顔にしては少しぎこちないが、表情を見せないこいつが表情を見せたのだから、よほどうれしかったのだろう。俺はこいつの笑顔見たさに頑張ったようなものだから、こいつの笑顔を見ることが出来た今、十分なおつりは支払って貰った。

 こいつの笑顔を見た瞬間、胸がドキン、と跳ね上がったような気がした。もしかしたら、見慣れないものを見たからかもしれないが。

「なら、早くいろいろなものを見てこい」

 そして、いろいろな人を驚かして来い。まあ、赤犬さんあたりは協力者なので、このことを知っているかもしれないが。

「もし断罪天使エクソシアに会えたら、一応お礼を言っておけ」

 彼の協力なしではこんなことはできなかった。一応、ギブアンドテイクだったわけだが、それでも、彼に感謝を言うのは当たり前のことだろう。

「………はい、そうします」

 こいつはそう言って、部屋から出ていく。

 今回、青い鳥は直接的には誰も幸せを運んでいないのかもしれない。だが、こいつは幸せのきっかけを与えた。きっかけさえ与えれば、後は自分たちが望めば、叶うものだから。

 断罪天使や彼女が幸せをつかむ時はいつになるか知らないが、いつか、その時が来ることを願っている。

 彼女達が昔のような関係に戻ることを邪魔する者はもういないだろうから……。


FIN……

青い鳥と誘いの天使を最後までおつきあいいただきありがとうございます。翌日から青い鳥と純白の龍を連載します。次作はラスボスこと、黒龍が関わるお話となっています。スポットがあたる人物は別の人ですが。キーキャラになるマスコットもでてくるので、良かったら、読んでください

最後までこのスタイルで続け、最後に出来たら、まとめようと思います。青い鳥と純白の龍もよろしければ、おつきあいください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ