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エピローグ 若木の始まり

「……ここも、寂しくなったな」

 辺りを見回してみると、そんな感想がこぼれた。

 俺の眼前には大きな切り株。

 ここにはかつて、樹齢五百年を超えた『白雪』という大きな桜の樹が根を張っていた。けど今はその切り株が残るばかりで、その面影は残っていない。

 その切り株の中央、一本の若木が生えている。

 細い枝の先に一輪の小さな花を咲かせていて、小さいながらも自己を主張しているよう。その花の色は、きれいな桜色。ここに根を張っていた桜の大樹に勝るとも劣らない。

 この若木は『白雪』が枯れてから、気づけばそこに生えていた。

 明らかに成長が早すぎるだろ、とも思わなくもないけれど、精霊が存在する世界なのだから、何でもありなのだろう。きっと。

「――そんなに、寂しくなりましたか?」

 透き通ったきれいな声が聞こえて、俺はそちらに振り返る。

 桜の花よりもきれいな桜色の髪に、アメジストを連想させる紫色の瞳。雪のように白く透き通った肌に、その二色がよく映えている。

「……寂しくなったよ。久しぶり、サクラ」

「はい。久しぶりです、ひろゆき」

 そう微笑みながら言葉を返してくれる、サクラ。

 どうして消えたはずの彼女がこうしているのかというと、結論から言ってしまえば謎。

 サクラ曰く、あのとき、『白雪』と一緒に消えてしまったことは、間違いないとのこと。けど、残った切り株から生えた若木に『転生』して、こうして俺の前で微笑んでいる……らしい。

 神の悪戯か、はたまたサクラの未練からか、真偽は不明だけれども、彼女はこうしてここにいる。……できるなら、あのときの俺の気持ちを返してほしい。

 そしてもう一つ、いいことがあった。

 サクラがここ――『白雪』のあった場所から、離れられるようになったことだ。

曰く、「あの子がいなくなって、私の依代が代わったから」だ、そうだ。久々にいいことが続いたこともあり、サクラも俺も、嬉しいことばかりである。

「……そういや、これからどうする?」

 こうして待ち合わせをしているのは、一緒になにかをしよう、って話から。

「ひろゆきと一緒ならどこでも。……あっ、でも、街に行ってみたいです」

「そっか。それなら、行こうか」

「はいっ!」

 サクラは本当に嬉しそうな笑顔を浮かべる。

 彼女の髪には馴染みの深い桜の花を模った髪飾り。

 それは別れ際には俺が一度はもらったもの。けれど、いまはこうして所有者がいるから、本来あるべき場所に在る。


 俺たちは一緒に、桜の舞う道を歩き始めた。


〈Fine〉


『桜吹雪の舞う春に』とりあえず完結です。

これまで稚拙な部分の多い文章を読んでくださった読者の方々、本当にありがとうございました。

色々謎が残ってて続きを書かなきゃなぁ、と思ってみたりもしていますが、どうなるかは未定なので、いったんは『完結』とさせていただきます。これからも、よろしくお願いします。

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