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七日間の演技  作者: ティファナ
10/14

カランコエ


第10話



カーニバルは混んでいた。今回は王家への祝福も兼ねているらしく、いつものときより人が多いのだとか。

「あんまり離れないでね」「ああ」

人が多いため、バレる心配もなさそうだ。

「お嬢さん、買ってかない?」

「……わぁぁぁ」綺麗な(かんざし)だ。

「カランコエさ」

色々な種類があったが黄色と黄緑の花がついてるのにした。レンスイが喜ぶのを珍しそうにみる要。

「楽しそうだね」「…楽しいから」

その後二人は、王家ということも忘れて思う存分に楽しんだ。

「案外バレないのね」

「また時々こうしてくるか」

「ねぇあんた、あんただよフードかぶってるお嬢さん」

バレたか……?40代ぐらいのおばさんに呼びかけられる。

「何用かしら?」

「今暇かい?旅芸人なんだが、主役のお嬢が足を傷めてな…報酬は払うから代わりに出てくれないか?」

「無理に決まって…」

「報酬って?」

「わしらは旅芸人だ、セレス国に関する情報も多くある。記者にでもその情報を売れば良い値になるはずさ」

「レンスイ、この話…」

「取引成立よ。その代わり私は飛び入り参加ってことで」レンスイはフードをとる。

「あんた、その髪…まさか王家の」

「さぁ、ショーの始まりよ」

誘ってきたおばさんは驚きを隠せないまま、旅芸人のテントに連れて行く。

「代わりの人いたの⁈」

「こんにちは」

「王妃様じゃない!マラヤさん他の人は………もう時間がないわね。改めまして王妃様、カレンよ。音楽に合わせて踊る舞姫の役をしてるの。踊れる?」

「おっ、踊……」自分は踊れない。

「社交ダンスの方じゃなくて、ステップの方。舞いが出来るかって聞いてるの」

「それなら大丈夫です」「へぇ、舞えるんだ。初耳」

踊りと呼ばれるものは全てできないと思ってたらしい。レンスイは衣装に着替えた。妖精のような服に羽根の代わりに輝く布。

「音楽に合わせて舞えばいいの」

「わかりました」

レンスイが舞台にあがるだけで歓声が上がった。

「飛び入り参加のお妃様だよ」

「うっそ、本人?」

誰も信じるはずがない…こんなとこに王家の妃などいるはずないと思っている。

「案外まともに舞えてたね」

「失礼なこと言わないでください」

終わるなり拍手とアンコールがかかった。もう1回舞えということらしい。

「気をつけて」「すぐ終わらすわ」

せっかくの自由な時間をこんなことで奪われたくない。短い曲をお願いした。

ツゥリッ ツゥリッ トゥーリリ♪

音楽に合わせて舞う彼女は誰もが見とれてしまう。舞台から見てる自分でさえも、だ。

「……殺気?」「どうしたんだい旦那」

要はおばさんの声を無視した。どこからだ…どこからこの殺気は流れてきてる……。いた、舞台のちかく。

「マントと帽子貸せ」

「はぃよ。何に使うんだい?」

この言葉もかるく無視。マントと帽子を手にするや、舞台の方へ向かう。彼女は舞うことに夢中で殺気に気づいていない。要はまるでそれが演出のようにレンスイの前に出てポケットから短剣を5つほど取り出した。

「何して……」

レンスイが言い終える前に彼は短剣を観客に向かって投げつけた。

「ちょっと!観客に!!」

「ちがう…刺客だ」

要が探検を投げつけた先にいたのは剣を持つ一人の男。

「ちっ……流石というべきかね?まぁこっちは多勢いるしいいか」

その男が手を挙げると仮面をつけた奴らが集まってきた。観客も騒ぎ出す。

「ならこちらも遠慮なくやらせてもらうよ。ゼクト!」

「はい!王家に刃向かうなどあるまじき行為。この場で終わらさせていただきます」

「一人?はははっ……こっちは10人はいるのに」

その男と同様にレンスイも疑問だった。

「あぁ、言い忘れてたね。彼はああ見えて元王族の家系だから」

「元?どこの国の?」「セレス国」

セレス、国…⁉︎

「ゼクトの曾祖父の兄の嫁の一族が王家だったらしいよ。彼の曾祖父も王家の人と結ばれた。すぐ政権交代したらしいけどね」

「敵国の元王家をこんなとこに置いとくのか?」

「元だし、それに……セレス国の王家は力…魔法をつかえる。あいつは大地を操れるから役に立つ」

要の言った通りゼクトは地に蟻地獄を作り出し一瞬で終わらせた。

「ほんの少し予知が違うけどいいか」

「ん………予知?もしかして」

「鏡を見てしまった。たまたま目に入ったというべきか」

レンスイはため息をつく。これからは人目のつかないところに置いとこうと誓った。騒ぎが大きくなりすぎたのでどうしようかと思ったが、ゼクトの力のおかげか一種の演出だと思ったらしい。

「もう帰りましょう」

「旅芸人さん、今夜にでも王宮へ招待します」

要は王宮への通行許可書を取り出して渡していた。


彼ら旅芸人達が王宮に来たのは夜の8時頃。食事はすでに終えていたので、かるくお茶をしながら話すことになった、

「いやぁ、ほんと今日は助かったよ。王家の方とは知らずにすまなかったね、わたしゃマラヤ」

「王の前ですぞ、その口の利き方…」

「いいんだゼクト、かまわない」

「さぁ、約束よ。セレス国について話して。何を知ってるの?」

レンスイも話し方などどうでもいい。今はこっちの方が知りたい。

「戦争は今がチャンスだよ。なにしろ国王さんが不在なんだからさ」

ふざい?……ああ不在か、いないということなのか?

「冗談はいらないんだけど」

「国王様、それが本当なんだってば!なんか牢にいた人が逃げちゃって、国の秘密を握ってて、見つかり次第連絡しろとか。ていっても、一般人にはそんな情報はいらないけどね。王家と家来ぐらいじゃないかなぁ」カレンはベラベラ話す。

「なるほど、レンスイはどう思う?」

「……わからない。そこまで危険な人物がなんで殺されなかったのか」

レンスイはもし自分が関わっていなかったらと思い考えを出す。

「そうそこなのよ!」

「殺せなかった、とか?その人を殺すことで国に何らかの大きな損失が与えてしまうと考えればいいんじゃないかな?」

「要様、調べてみましょうか」

「頼むよゼクト」

今回のことでレンスイがわかったことは一つ…親が自ら自分のことを探しているということだ。どうせ目当てはこの力だろう。

「スイ……レンスイ」「あっ、何?」

ボーッとしてた。怪しまれてしまう…。

「もう今日はお休み、疲れただろう?」

「ええ」

敵国にいればあいつらとは関わらなくて済むと思っていたが、どうやら予想が外れたようだ。あの国の敵国にいるからこそ巻き込まれることもある。ここにはそう長くいられないかもしれない、とレンスイは瞬時に悟った。


そう、そうして考えてるレンスイをゼクトが見てるとは知らずに…。

「彼女……」

「ん?それよりプランBで正解だった。あと襲ってきた奴らは?」

「はっ。尋問しようとしたところ所持していたらしい毒を…」

自殺、という訳か。

「プランAだとどうなってた?」

プランA・Bとは忍びで町に出る際の兵士の数だ。Aは大人数、Bは少人数だ。

「Aだと死者が出ていたかもしれません。私の力を見て暴れる者もいたと思います。今回の判断は正しかったかと…それと、彼女のことなのですが少し気をつけたほうがよろしいかと」

「どうして?」

「……刺客に対する恐怖感が無かったので。何か隠してると思われます」

「わかった。そっちの調べ事も任すよ」

要はつまらなそうにヒラヒラ手を振った。


その話を外で聞いていたレンスイ。ゼクトは鋭い執事らしい。もう少しおしとやかに過ごさなくてはと思った。

そうしてレンスイの演技の4日目が過ぎていった。


第10話 E N D


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