あなたと、また一年を。
一年とは、それぞれ三竜王の司る季節で分けられる。
実は、地竜王を加えた四竜王で分けた方がしっくりくる、というのがグラナティスの持論だった。が、今更何千年も使われていた暦をいきなり変えることなどできないので、おそらくこの先もこのままなのだろう。
季節が変わる節目は、その度に祭祀が行われる。
特にこの火竜王の季節から水竜王の季節へと移り変わる時は、一年の節目ということもあり、大きな意味を持っていた。
しかしその日、竜王の高位の巫子たちは船に乗り、湖の上にいたのだが。
「……どうしてそんなにまめなんだ、お前は……?」
ささやかながら祝祭の晩餐を済ませたところで、グランは子供たちへ贈り物を配らせていた。
水竜王の象徴である、青と銀のリボンで飾られた包みの前で呆れてアルマは訊く。
「これぐらいの時期まで時間はかかるだろう、と思っていたのが僕だけだからじゃないか?」
ただ一人、この旅の予定を把握している幼い巫子が悠然と返す。
「ありがとうございます、グラン様」
銀とアクアマリンの清楚なネックレスを贈られたペルルが、嬉しげに礼を述べていた。早速プリムラがそれをつけるために背後に立っている。
プリムラにも、新しいスカーフが渡された。薄い緑色のそれは、彼女の赤銅色の髪によく似合う。
「大将、おれには?」
「これは子供だけだ。判っているだろう。図々しいぞ」
にやにやと笑うクセロに、グランはぴしゃりと返す。
「開けないのか、アルマ?」
興味深げに尋ねるオーリを、むっつりと見つめる。
「……部屋で開ける」
彼は子供扱いされたのが、少し気に入らないのだ。
部屋まで送って行く間、ペルルは上機嫌だった。
「嬉しいですか?」
「ええ。以前は水竜王の祭日に、他の下位の巫女と一緒に小さな贈り物を頂けたのですが、高位の巫女になってからは下賜する側になっていましたので。何だか、ちょっと嬉しいです」
それに凄く綺麗、と続けて、ペルルは笑う。
意味もなく悔しくなって、少年は思いを巡らせる。
「……少し、いいですか」
小脇に抱えていた、自分への贈り物を丁寧に開く。
その、箱を包んでいた青と銀のリボンで、そっとペルルの髪を結った。
「……まあ」
窓の外は暗く、蝋燭の灯りを受けて、ガラスにペルルの姿が映し出されている。
「こんなことしかできませんが」
衝動的に、しかもグランに張り合ったことをすぐに恥ずかしく思いながら、呟く。
「ありがとうございます、アルマ」
贈り物が二つですね、と、ペルルは満面の笑みでアルマナセルを見上げた。




