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いつか、竜の舞う丘で。  作者: 水浅葱ゆきねこ
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237/252

掴む未来。

 窓からは、明るい光が差しこんでくる。

 勿論陽光には及ばないが、それでも外周の廊下ならば歩くのに蝋燭(ろうそく)は要らないほどだ。

 廊下の絨毯(じゅうたん)の上に落ちる窓枠の影の間に、見るからに違う形が混じっているのに気づく。

 窓の開く音に、相手はこちらを向いた。

「やあ、アルマ。いい夜だね」


「……何やってんだ?」

 ここは四階だ。しかも、彼は胸の辺りまであるバルコニーの手摺の上に、無造作に外を向いて座っている。

 まあ、以前彼が住んでいた場所と彼の能力を考えれば、この程度の高さなど大したことではないのだろうが。

「いいワインが手に入ったからね。ほら、今夜は満月だし」

 グラスを月の光に透かして、おいでよ、と言ってオーリは笑ってみせる。

 肩を竦め、アルマは彼に近づいた。

「隣に座る?」

「無茶言うな」

 軽くいなして、彼の横に立つ。手摺にもたれかかり、月を見上げた。

 満月は、周囲の空をぼんやりと濃紺色に照らしている。

「過ごしやすい季節になったねぇ。少し前まで暑いものだったけど」

 何故か幾つか用意してあったグラスにワインを注ぎながら、青年は言う。

 北国で生まれ育った仲間の何人かは、この地の夏の暑さにばて気味ではあった。

「お前は元気だったよなぁ……」

 手渡されたワインを受け取りながら、ぼやく。

「そうでもないよ。ここは湿気が多くて蒸すからね。うちの方は、ほら、結構乾燥しがちだしさ」

 楽しげに返すと、オーリがワインを飲み干す。

 そして大きく息をついて、ぐぅ、と背を反り返して空を見上げた。その長い脚が、大きく泳ぐ。

「危ねぇぞ」

「大丈夫だよ。……ねぇ、アルマ」

「ん?」

「来年も、また、こうして皆で一緒にいられるのかな」

 ぽつり、と零す言葉が、穏やかな風に散る。

 一口、ワインを口に含む。味は、確かに青年が言うだけのことはあった。

「……判んねぇよ。けど、できるだけ早く全部終わらせて、みんな国に帰った方がいいんだろ。本当は」

「んー。まあ、それはそうだねぇ」

 間延びした声で返すと、オーリは軽い笑い声を立てた。

「……お前、酔ってんのか?」

 眉を寄せて視線を向けると、青年は、ただ空を見上げている。

 その額のエメラルドが、柔らかく月の光を内包していた。


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