掴む未来。
窓からは、明るい光が差しこんでくる。
勿論陽光には及ばないが、それでも外周の廊下ならば歩くのに蝋燭は要らないほどだ。
廊下の絨毯の上に落ちる窓枠の影の間に、見るからに違う形が混じっているのに気づく。
窓の開く音に、相手はこちらを向いた。
「やあ、アルマ。いい夜だね」
「……何やってんだ?」
ここは四階だ。しかも、彼は胸の辺りまであるバルコニーの手摺の上に、無造作に外を向いて座っている。
まあ、以前彼が住んでいた場所と彼の能力を考えれば、この程度の高さなど大したことではないのだろうが。
「いいワインが手に入ったからね。ほら、今夜は満月だし」
グラスを月の光に透かして、おいでよ、と言ってオーリは笑ってみせる。
肩を竦め、アルマは彼に近づいた。
「隣に座る?」
「無茶言うな」
軽くいなして、彼の横に立つ。手摺にもたれかかり、月を見上げた。
満月は、周囲の空をぼんやりと濃紺色に照らしている。
「過ごしやすい季節になったねぇ。少し前まで暑いものだったけど」
何故か幾つか用意してあったグラスにワインを注ぎながら、青年は言う。
北国で生まれ育った仲間の何人かは、この地の夏の暑さにばて気味ではあった。
「お前は元気だったよなぁ……」
手渡されたワインを受け取りながら、ぼやく。
「そうでもないよ。ここは湿気が多くて蒸すからね。うちの方は、ほら、結構乾燥しがちだしさ」
楽しげに返すと、オーリがワインを飲み干す。
そして大きく息をついて、ぐぅ、と背を反り返して空を見上げた。その長い脚が、大きく泳ぐ。
「危ねぇぞ」
「大丈夫だよ。……ねぇ、アルマ」
「ん?」
「来年も、また、こうして皆で一緒にいられるのかな」
ぽつり、と零す言葉が、穏やかな風に散る。
一口、ワインを口に含む。味は、確かに青年が言うだけのことはあった。
「……判んねぇよ。けど、できるだけ早く全部終わらせて、みんな国に帰った方がいいんだろ。本当は」
「んー。まあ、それはそうだねぇ」
間延びした声で返すと、オーリは軽い笑い声を立てた。
「……お前、酔ってんのか?」
眉を寄せて視線を向けると、青年は、ただ空を見上げている。
その額のエメラルドが、柔らかく月の光を内包していた。




