逆ハーじゃないのよ
取り巻きたちを利用しよう、第二段。
分からない場所は適当に脳内補完してみてください
あー本当に腹立つのよね!
マジで腹立つわっ!!
眼も回せないってどういうこと!?
一瞬たりとも休めないんだけど!!
「ちょっと三番テーブル! まだ食事が行ってないわよ!」
「え、はいっ! すぐ行きます!」
注文の確認をとっていてまだ食事が出ていないところに激を飛ばせば、ひょっこりとお調子者生徒会会計のウェイターが戻ってきた。見つけ次第にすぐさま、次の食事を渡す。
「はい、次はこれ! 五番テーブルねっ!!」
「はいはーい」
間延びした返事に、いらっとして怒鳴り返す。
「ちゃきちゃき働けっ! 何やってんだ屑男がっ!」
「え、ちょ、そ、そこまで言う~? 俺、ちゃんと働いて……!」
「話してる場合かっ! ほら、早く五番テーブルに行け!!」
「ちょ、蹴りださないでー……っ!? あ、ぶな……っ」
ちょっと、お客様。騒がないでちょうだいよ。
大丈夫よ、こいつが超運動神経いいの分かっててやってるから。
食事を無駄になんてしないわ。
そうよ、無駄にしている場合じゃないのよっ!
だいたい何なのかしら、あの俺様共。
学園祭よ? たこ焼き屋とかお好み焼き屋とかでいいのよ。ぶっちゃけ、果物きってチョコレートをかけたものだけを売るだけでいいのよ。
ウェイターしたいとか、喫茶店したいとか、馬鹿なの。アホなの。氏ぬの。
ていうか、ホストしなさいよね。顔がいいだけの馬鹿なんだから。
その顔なんのためにつけてんの?
やっぱ、馬鹿よね、馬鹿よね……いや、馬鹿なのは知ってたわ。知ってたのよ。はあ……。
なんで、こんな面倒な事を提案するわけ? しかも、やるのは私達……いや、殆ど私しかやらないとか……ふざけ過ぎよね、ほんと、ふざけすぎる…………人手足りてないのに親衛隊達のあの馬鹿共を使いたくないとか……私の心象を思えば一日くらいあいつらの心が荒むくらい我慢しろってぇーーーの!
そもそも男だけのウェイターとか需要がないのよ。いや、あんだけ顔面偏差値が全員高いとないと言い切れないけど、普通はないのよ!
女の子だって大事なのよ、普通は女の子だけなのがいいのよ!
というか、ウェイターで女が私一人の状況が可笑しいわよね。
変よ。
絶対、変。
そうよ、変よね。
こんなに忙しいのよ、ええ、ホント。
眼を回す暇もないくらい忙しいわ。
あああああ、ホント、嫌だわ。
そこのお前ら煩いわよ!? 五分くらいお待ちになりなさいませっ!
っていうか…………ッッ!
お客様ァ……? ウェイターのお触りは厳禁となっております♪
オイコラ、さっさとその手離しやがれ。じゃねぇーと、その髪毟り取るぞ☆
はぁ? テーブルに足を乗せて脅すなんてお客をなんだと思ってるのかって?
アンタ馬鹿なの? ねえ、馬鹿でしょ? この忙しさが見えないの?
いい? 私は、一日ずぅーーーーーーーっと働いてるのよ?!
そうよ、男共は休んでるのに、私は休めないのっ!!! 何でだと思う!? 私が現場監督だからってあの生徒会の馬鹿共は言うのよ?!
はぁああああ!?!? あの俺様生徒会長は今自分のステージの準備に余念がないのよっ!!
あの馬鹿が現場の声なんて聞くわけないでしょ!!
他の生徒会の奴らも……ッ、客引きとかどうでもいいのよ、ホントに……ッ!
需要と供給が間に合ってないのよ! 客引いてくんならその客の相手もしろってのっ!
私は、休みが欲しい! 人手が欲しい! そ れ な の にっ!!
アンタは何したの? 人手が、本当にないこの昼時に、吐くくらいの忙しさなのに! アンタは貴重な私の駒を……、っチッ、人手をっ!
「ちょっと今駒って言わなかったー? 舌打ちしなかったー?」
「煩いわよ! さっさとキリキリ働きなさい! 害虫駆除でさえ、私に任せるボンボンのボンクラの男の風上にも置けない最低野郎どもは黙って私の言う事を聞いて働いとけばいいのよ!!」
「な……っ! 害虫!?」
何よ、その顔、それの何が悪いの? 人手が足りないの、それをアンタは時間を無駄にさせたのよ? 邪魔したのよ? アンタに捕まっていた時間はね、テーブルの注文一つ、二つとれるくらいあったのよ? それを邪魔した奴のどこが『客』なのよ? ん? 害虫と変わらないでしょ?
ていうか、何こいつらに夢見てんの? ちなみにこいつ等、本当の害虫―――つまりネズミとかGがつく昆虫も触れないわよ。守ってくれないわよ。私に全部退治させるような、本当の腰抜けの卑怯なお坊ちゃまどもよ!!
オイコラそこ!! 違うなんて言わせないわよ!!!
「ほら、アンタはさっさと出なっ!!! ……って何固まってんのアンタ等っ!! 今日は私の下僕になるって宣言したでしょうっ!! さっさとしなっ!!」
文句を言う女を裏口から放り出した後、呆然としているウエイター達に激を入れる。
「え~僕~そんな宣言してな~い!」
「宣言してなくてもこの場にいる間は私の下僕よ! 下僕っ! 奴隷よ! 奴隷! さっさと働きなさい!! 私は女王蟻になりたいのよ―――っ!」
「やばいっしょ~……安奈ちゃん、疲れすぎて自分が何言ってるかわかってないっしょ~」
「うん……何言ってるのか分かってないよねー」
「分かってるわよ!! そう分かって―――っえ」
「え、先輩っ!!」
「あ、ありがとう……ありがとう……私、今ふらついたの……?」
ふら、と身体が傾いたのを、信じられない思いで聞く。
爽やかな笑顔が人気だという後輩が支えてくれなかったら、思いっきりずっこけていたわね。
ありがとう、後輩。
「そうですよ! だ、大丈夫ですか? 少し休んだほうが……」
「やったわ……ついに私の時代がキタコレ……っ」
「え」
最後の気力を振り絞り、懐にずーーっと持っていた紙を全員に見えるように出した。
「ちょっと客もウエイターもこっちを見なさい!!!」
「え、ちょっと先輩どうしちゃったんですかー!?」
「安奈ちゃあああん、戻ってきてえええ~~!」
「煩いわ、愚民共っ!! いい!? これは俺様最低自己中生徒会長と俺様最低最凶腹黒副会長からもらった印つきの……っ、そう! 誓約書! 今から私は女王蜂になるわ!!」
「「「「「ええええぇぇぇえええ????」」」」」
そう、こんな事態になることを予期していた数日前の私…………ナイスッ!!
生徒会長と副会長に、忙しくなるだろうから親衛隊を使いたいと言った時にあの馬鹿達は言ったのだ。
『何言ってんだ。そんなのお前がどうにかしろ』
『そうですよ、それくらい貴女がまわしなさい。新鋭隊なんて使ったら更なる混乱を招くだけですよ。そもそも彼女達が疎んでいる貴女の言う事を聞くと思いますか。あの女達と一緒に働くなど、考えるだけで虫唾が走りますし』
だから、言った。
『じゃあ、私が倒れかけるようになったら全権力を私にくれるっていう誓約書を書いて。後、何でも言うこと聞くって』
『はッ、お前が倒れるとか地球がひっくり返ってもありないな』
『全く、酷い冗談ですね』
『アンタらの言い訳なんて関係ないわ。書いて欲しいなんて言ってないわ、書けと言ってるの』
……と、涙ぐましい説得によって書いてもらったこの誓約書が使われる時がきたのよ!!!
「いいっ!! これから私が最高責任者よ!! というわけで、親衛隊隊長の馬鹿女ども!! この店を今すぐ手伝いなさい!! 服はその店の奥にあるわ!!! その代わり!! 誰でも好きな生徒会の奴選んで二人で写真を撮ることを許可するわよ!!!」
「なっ―――?!」
「ちょっと、安奈ちゃんそれは……っ」
「それは本当ですの!?」
「………健人様とツーショット…………」
「綾波様ぁ……」
「え、えええ!?」
「おい誰か生徒会長達、呼んで来い!!! 急いで!!!」
よし! お嬢様やらなにやら連れたわね! お嬢様たちって性格は置いておいても、何でか全員超美人だから、客引きもばっちしよっ!
ちょっとうるさいわよ、下僕ども!! ていうか、何処に行こうとしてるのよ!?
はあ?! 生徒会長達を呼ぶって馬鹿なの? アホなの? ここに誓約書があるんだから、あいつ等もここに来た時点で私の下僕に仲間入りよ!!!
というか、今まで誰が一番働いたか言って御覧なさい!! そうよ、分かってるじゃないの!!!
なら、全員一日くらい我慢しなさい!! そもそも、大抵の生徒は美形共にしか「写真撮って」なんて言われないわよ!! 無駄な心配するんじゃない!!! 何泣いてんの!!! 泣く暇なんてないわよ!!
これまで小さい厄災も大きな厄災も、全部私が盾になってあげてたでしょうが!!!
あ、そうそう。
更衣室に向かおうとしていた女子生徒達(大量)へ向き直り、叫んだ。
「条件があるわ!!」
その言葉に、ざわついていた店内は静まり返り、お嬢様たちはこちらを向く―――ニヤリ、とあくどい笑みを浮かべた。
休み不足で青白くなっている顔は、さぞかし雰囲気にのっていたに違いない。
それを見て、大きく叫んだ。
「―――私の言う事を絶対服従で聞くことが条件ッッ!!! 分かったわねっ!!! 理解したならすぐに返事をしなさい!!!」
「「「「「「「わ、わかりました!! 女王様!!!」」」」」」
これで、よし―――
私は満足な笑顔を浮かべ、すぐに更衣室へ彼女達を蹴り飛ばす勢いで入れる。
「じゃあ、早く出てきなさいよ。もしサボったり逆らったら、すぐに叩き出すわよ。当然、ツーショット写真もなしだから。私の実力知ってるわよね? サボったら、すぐにわかるから、ずるなんてしないのよ。痴漢がいたらすぐに叫びなさい! 問答無用で叩き出すわ!!!」
キリキリ働く働き蜂を大勢手に入れた女王蜂は、ひとまず、二時間働き蜂に指導をしてから休む事にするわ。
ああ、ホント、馬鹿な働き蜂達は私を『逆ハー女』なんて罵るけど、あいつら私を女だと思ってないのよ?
だいたい、噂どおりに愛されてるんなら、倒れるくらいまで働かせたりしないわ。
普通の男なら。あいつ等は普通じゃないから実際のところはよくわからないけど。どちらにせよ、私を愛しているとか、ホントにありえないことだわ。
いやあ、それにしても
―――私の采配に顔を歪ませる生徒会の面々の面が楽しみだわあ♪ 写真撮るの忘れないようにしないと!
あははははあはははははあはははははは―――……☆
あまりの疲れっぷりにぶっ壊れてる、主人公。
しかして、戻ってきた会長と副会長は主人公の思惑通り、誓約書を書いた事を後悔するのです。
「おい、その誓約書本物か?」
「何よ、アンタ自分の字も分からないの? ほら、見てみなさいよ―――って、ああ!! 何破り捨ててんのよ!? さいてぇぇえぇい!!!」
「ふ、これでお前は最高責任者じゃ……なにっ?!」
「ふふ、気づいた? そんなこったろうと思って、既にコピー済みよっ! 本物が何処にあるかは ひ み つ ☆」
「うがあああああ!!」
地獄のツーショット祭りの始まりです☆
しかも、休憩挟むため、超大量の女子生徒達が手伝ってくれていた為、全校生徒じゃないの?って数。それを高笑いしながら高級ソファで寝転んだまま指示を飛ばす―――女王蜂、安奈。