表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/12

第七章 希望の光

地獄界の入口で、健一が目にしたのは、人の心が生み出した苦しみの世界でした。

怒り。

憎しみ。

後悔。

そして、深い孤独。


しかし、どれほど暗い世界にも、完全な闇だけが存在するわけではありませんでした。

健一は、その暗闇の中に小さな光を見つけます。


それは、苦しみの中にいる魂にも残されている「希望」の光でした。

果たして、その光は何を意味しているのでしょうか。


第七章「希望の光」。

健一の旅は、再び光の方向へと動き始めます。

地獄界の空は、相変わらず灰色だった。

重い雲が空を覆い、冷たい風が荒れた大地を吹き抜けていく。


しかし健一は、不思議なものを見つけた。

遠くの丘に、小さな光が灯っている。


「妖精さん。」

「はい。」

「あそこだけ明るいですね。」

妖精は優しく微笑んだ。


「よく気づきましたね。」

「あれは希望の光です。」

「希望の光?」

「はい。」

「どんなに暗い世界にも、創造主の愛は届いています。」


健一はその光へ向かって歩き始めた。

近づくにつれ、荒れ果てた大地に、小さな草花が咲いていることに気づく。

一本。

また一本。

まるで光を追いかけるように命が芽吹いていた。


やがて一軒の建物が見えてきた。

白い石で造られた、静かな家だった。

入口には何も書かれていない。


しかし、中からは優しい歌声が聞こえてくる。

健一は思わず尋ねた。

「ここは何ですか。」


妖精は答えた。

「ここは『希望の家』です。」

「希望の家?」


「地獄界で苦しむ魂が、もう一度光を信じようと思ったとき、最初に導かれる場所です。」

健一は静かに扉を開けた。


そこには、多くの人が座っていた。

誰もが疲れ切った表情をしている。

中には涙を流している人もいる。


しかし、不思議なことに、その顔には地獄で見た絶望とは違うものがあった。

小さな希望。

それが宿り始めていた。


一人の白い衣をまとった女性が立ち上がる。

「ようこそ。」

穏やかな笑顔だった。

健一は深く頭を下げる。


「あなたは?」

「私は、この世界で学びを支える案内人です。」

女性は部屋を見渡した。

「ここへ来られる方は皆、あることに気づき始めた人たちです。」

「あること?」


「苦しみの原因は、他人ではなく、自分の心にもあったかもしれない。」

その言葉に、部屋の空気が静かに震えた。


健一は、一人の男性に目を留めた。

以前、怒鳴り合っていた男性だった。

今は椅子に座り、うつむいている。


女性はその隣へ歩み寄った。

「今日は、何を感じましたか。」

男性は長い沈黙のあと、小さな声で答えた。

「私は……。」

声が震える。


「私は、ずっと相手だけを責めていました。」

涙が一滴、床に落ちた。

「でも、本当は。」

「私も傷つけていたんです。」


その瞬間だった。

男性の胸から、小さな光が生まれた。

ろうそくの火ほどの小さな光。

しかし、その光は確かに暗い部屋を照らした。


健一は息をのむ。

「光が……。」

妖精は微笑んだ。

「反省は、自分を責めることではありません。」

「真実を受け入れる勇気です。」

その言葉を聞いた女性たちも、静かにうなずいた。


すると部屋の奥で、一人の老人が立ち上がる。

「私は、生きている間、息子を憎んでいました。」


老人は目を閉じた。

「息子は何度も謝ってくれた。」

「それでも私は許さなかった。」

涙が止まらない。


「今になって分かります。」

「苦しかったのは、息子ではなく、私自身だった。」

老人の胸にも、小さな光が灯る。

一つ。

また一つ。

部屋のあちこちで光が生まれ始めた。


健一は、その光景に言葉を失った。

妖精が静かに語る。

「健一さん。」

「はい。」

「光とは、誰かにもらうものではありません。」

「自分の心から生まれるものです。」

健一は、その言葉を胸の奥で何度も繰り返した。


そのとき、一人の少女が立ち上がった。

まだ十歳くらいだろう。


少女は小さく震えながら言った。

「私……。」

「お母さんに、ごめんなさいって言いたい。」


案内人は優しく手を差し伸べる。

「その思いは届きます。」

少女は泣きながら手を握った。


すると、部屋全体が柔らかな金色の光に包まれた。

健一は思わず涙を流した。


「妖精さん。」

「どうして涙が出るんでしょう。」

妖精は微笑んだ。


「魂が、本当の光を思い出しているからです。」

部屋の外へ出ると、先ほどまで灰色だった空に、小さな青空がのぞいていた。

健一は空を見上げる。


「地獄にも朝が来るんですね。」

妖精は静かにうなずく。

「はい。」

「どんな夜にも、必ず朝は訪れます。」

「魂も同じです。」

「だから創造主は、一人も見捨てません。」


健一はその言葉を聞き、胸の奥で何かが変わるのを感じた。

地獄とは、永遠に苦しむ場所ではない。


光へ帰ることを思い出すための場所。

その意味を、健一は少しずつ理解し始めていた。

妖精は前方を見つめる。


遠くには、暗い世界を抜けた先に、まばゆい光が差していた。

「健一さん。」

「次はいよいよ、五次元界へ向かいます。」

「そこは、愛を学び、愛を実践した魂たちが暮らす世界です。」


健一は深く息を吸い、ゆっくりとうなずいた。

「お願いします。」

妖精は優しく笑った。

「では、一緒に光の世界へ参りましょう。」

二人は、希望の光へ続く道を歩き始めた。

第七章を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


暗闇の中にいるとき、人は「もう光はない」と思ってしまうことがあります。

けれど、ほんの小さな光が残っているだけで、人はもう一度前を向くことができるのかもしれません。


健一は、地獄界でそのことを学び始めます。

苦しみの中にも、希望はある。


そして、魂には変わるための道が残されている。

次章から、健一の旅は新たな世界へと進んでいきます。


どうぞ続きをお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ