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防御魔法だけで乗り切れますか?  作者: 言狼


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1/1

1.防御魔法を授かった

『彼女は、どうしているだろうか。

 今なら、約束を果たせそうだ。

 あの日、交わした約束を。』



 ――聖歴1011年。世界一の大国であるフェルニア王国、そのとある伯爵家の下にある男児が誕生した。後に三大英雄と語り継がれる人間の誕生であった――。


 ――聖歴1026年7月。

「ん・・・んぅ?」

 まぶしい・・・。あー、朝?

 コンコンコン。

「はーい」

「失礼いたします、ヴィルク様」

 一人のメイドが入ってくる。僕の担当であるリルだ。

 そして、僕がヴィルク—―ヴィルク・グレイル、グレイル伯爵家の三男。14・・・いや、今日で15歳か。

「おはようございます、朝食のご用意が出来ましたので呼びに参りました。―ところで、まだ寝間着のようですが・・・」

「おはよう。ごめん、まだ起きたばっかりでさ。ちょっとだけ待ってくれる?」

「承知しました。外にて待機しております」

「うん、ありがと。すぐ準備する」

 さて、待たせちゃいけないし、早く準備しないと。

 そうして、寝間着を脱ぎ、私服へと着替える。

「お待たせ、行こっか」

「はい」

 家族が待つ食卓に向かい、遅刻の謝罪をする。

「おはようございます。お待たせいたしました、お父様、お母様。遅れてしまいすみません」

「ああ、おはようヴィルク。謝罪などいらんよ。さあ、座りなさい」

「おはよう、ヴィルク。ふふ、寝坊助なのね」

 貴族、それも伯爵家としてはとても優しい両親だと思う。

 父上――マルク・グレイルは数々の功績からの叙爵により、実家の男爵家から独立後、グレイル家を興し一代で伯爵にまで上り詰めたまさしく実力者だとか。厳格でありながら、民を思う優しさを兼ね備えており、『貴族の中の貴族』と評されているみたいだ。

 母上――ミュウ・グレイルはいわゆる政略結婚で子爵家から嫁いできたらしい。でも、本人としても結構乗り気、というか一目ぼれだったらしく、その愛情たるや僕を含め4人子供を産んでしまうほど。すごいね、愛。

「ヴィルクもとうとう15歳か。時は早いものだな・・・これだから歳は取りたくないものだ。まあ、それはいいとして・・・今日は授法の儀か。楽しみだな?」

「はい!」

 朝食を食べつつ、今日の予定について話す。一般的に15歳の誕生月には『授法の儀』という、適正魔法を授かる儀式を教会で行うのだ。

「系譜の相性や習得難度、系譜外の魔法は覚えてるか?」

「はい、大丈夫です!」

 系譜――攻撃魔法の八大属性(火・水・風・土・雷・氷・光・闇)と無属性を授かった人、または属性そのものを指し、授かった系譜を直系譜という。『聖戦の英雄譚』では、女神エルリアが人類に授けた魔法とあり、神聖視され系譜と呼ばれるようになった。特に無は、『英雄譚』に登場する『勇者』と『賢者』のみが授かった属性であるので非常に重要視されている。

 また、各系譜には相対関係があり、火と水、風と土、雷と氷、光と闇は互いにある意味で相性が悪く、またある意味で相性がいい。この系譜を対系譜と呼ぶ。

 そして、系譜を火→風→雷→闇→水→土→氷→光の順に八角形になるように置き、辺と対角上に線を引いた図が習得難度表になる。例えば火なら、火が一番覚えやすく、その次に隣り合う風・光、相対の水を習得しやすい。また、無はその中央に位置し、全系譜を扱える。ただ、複数の系譜を扱えるのは稀であり、基本は直系譜、よくて対系譜の二つまでしか使えないのでこの表を使うことはまずない。

 更に系譜外。防御魔法、隷属魔法、支配魔法などなど・・・様々な魔法を総称して系譜外と呼んでいる。系譜外は非常に喜ばれるわけではないが、様々な面で有用ではある。だが、防御魔法はある理由からかなり嫌われているし、能力としても弱い部類であるとされている。

 と、情報はこのぐらいだったかな。

「言っておくが、私も、母さんも、そして兄弟も、お前がなんの魔法を授かろうと気にしない。それが、防御魔法であったとしても、私たち家族だけはお前の味方だ。覚えておきなさい」

「父上・・・ありがとうございます」

 なんとありがたい言葉だろうか。この世界でこれほど心強い言葉はほかにない。

「ヴィルク、安心していってきなさい。お母さんも応援してるわ。あなた、よろしくお願いね」

「はい、行ってきます!」

 こうして、僕は父上と教会に向かうのだった。


 ――教会――

「あ、ヴィルク、おはよ」

 教会に着くと、そこには幼馴染のルーウェがいた。

「ルーウェ、おはよう!ごめん、待たせたかな?アルス侯爵もおはようございます」

「いいえ、私も今着いたところよ。」

「おはよう、ヴィルク君。いつも娘と仲良くしてくれてありがとう。マルク殿もお元気そうで何より」

「いえいえ、アルス殿。そちらもお元気そうで。こちらこそヴィルクがお世話になっております、ははは」

「ヴィルク、早く中に行きましょ」

 ルーウェ。ルーウェ・アズリール。アズリール侯爵家の一人娘で幼馴染。おしとやか、という言葉が似合う長い銀髪が特徴の子だ。本来なら立場は向こうが上なので、敬語を使わないといけないのだが、親同士が仲がいいらしく、公認でタメでいいことになっている。

「おぉ・・・ここが、教会。綺麗だ・・・」

「あら、教会は初めて?いいところでしょう?」

 荘厳、とでも言うのだろうか。煌びやかなステンドグラスから太陽の光が差し込んで教会の中を彩っている。シンプルでありながら細かな装飾がなされたベンチや置物の数々。そしてなにより、中央にそびえたつ巨大なパイプオルガン。圧倒的な存在感を放っており、その並んだパイプの表面には女神エルリアの彫刻が飾られている。

「ああ、とてもいいところだと思うよ。神聖で、高潔で・・・ここで、今日魔法を授かるんだね」

「ええ、今から楽しみね」

 ざわざわ・・・。

 周りには平民、貴族関係なく座っていた。『女神エルリアの前では身分関係なく、女神の民である。』というエルリア教の教えによるものだろう。侯爵家と伯爵家が入ってきたことで少しざわついていたが・・・。

「静粛に!ただいまより『授法の儀』を行います!」

 しん・・・と皆黙る。あの人が・・・。

(あの人がこの教会の神官、ミハイル様よ)

(神官・・・)

 ルーウェがこそこそと教えてくれる。なるほど、確かに神官にふさわしい威厳が感じられる。

「さて、まずは皆様に生誕の祝いを。女神様の下に生まれ、こうしてこの日を迎えられたことに感謝を。 そして、女神様より授法の祝福を。では、『授法の儀』に入りましょう。まず――」

 そうして、儀式が始まり、順番に授かっていく。そして――。

「次、ルーウェさん」

「はい」

 ルーウェの番が来た。

「貴女は――。っ、これはっ!?」

「?」

「≪無の系譜≫、Aクラス!間違いなくこれは――」

 まさか、それは――。

「『勇者』なり!おめでとう、ルーウェさん!」

「私が――『勇者』?」

 各系譜にはクラスという、強さや直系譜以外の習得のしやすさを指標化したものがあるが、≪無≫のAクラスとは高威力であり全系譜もかなり習得しやすいということ。

 そして『勇者』。『聖戦の英雄譚』の英雄の一人であり、一級品以上の剣技と≪無≫によるあらゆる魔法であらゆる魔族を討ち倒した、まさしく人類の救世主。それにルーウェが・・・。

「すごいじゃないか、ルーウェ!」

「ヴィルク・・・」

 当の本人は、あまり浮かない顔をしていた。当然といえば、当然だろう。なにせ――。

「ミハイル神官様。私は・・・クレミアに行くのですね?」

「ええ、そうなります。クレミアにて『勇者』となるべく教育、訓練を受けていただくことになるかと」

「そう、ですか・・・」

 クレミア聖教国。女神エルリアを崇拝し、世にエルリア教を広めた国。誕生した勇者の育成をそこで受けるのが、クレミア聖教国が建国されてよりの決まりとなっている。

「ルーウェ、勇者に選ばれたこと、とても誇りに思うよ。ただ・・・ひとりの父親としては、娘が離れていくのは寂しく思うがね。まだ出立するまでは時間があるだろう。しっかりと準備をして、母にも挨拶をしていきなさい」

「父上・・・ありがとうございます。勇者として、また一人の人間として、立派に育って参ります」

 ルーウェ、もう立ち直ってる・・・。精神が強いんだな。さて、最後は僕の番だ。

「ヴィルク君、さあ前へ」

「はい」

 ミハイル神官に名を告げられ、前へ出る。

「貴方は――」

「ごくっ・・・」

 生唾を飲む。一体何を授かるのか・・・。

「――≪防御魔法≫。そして、Sクラス。すなわち――『守護者』なり」

「『守護者』――」

『英雄譚』において裏切り者と言われている英雄『守護者』。魔神と女神とが互いに率いる軍が衝突した聖戦。その最中、人類を守ったのが三大英雄『勇者』、『賢者』、そして『守護者』。勇者と賢者は、女神とともに魔神と戦い相討ちに。そして守護者は、二人についていかず、人類の守護に努めた。人類を守護したことは立派だった。しかし、二人の英雄をむざむざ見殺しにした、という面が目立ってしまい『裏切り者』と呼ばれてしまい、嫌われているのだ。

 そんなことを考えていると・・・。

「『守護者』かよ」

 そんな言葉が聞こえてきた。そしてそれを皮切りに・・・。

「また勇者を裏切るのか?」「ルーウェ様かわいそう・・・」「疫病神が」

 次々と出てくる非難の数々。これは・・・きついかも。

「静粛にッ!これは女神様の与えた力である!彼を非難することは、それすなわち女神様への非難と知り給え!」

 まさか・・・ミハイル神官に助けてもらうとは・・・。

「ヴィルク君、大丈夫かね?」

「あ、はい・・・」

「・・・ふむ、君は、自由都市シンドラに行くといい。あそこは唯一、エルリア教の影響が及んでいない場所だ。この国で生きていくのは、いささか難しかろう。マルク伯爵、いかがでしょう?」

「ええ、私もそれがいいかと。あそこならば、非難を受けることはまずないでしょう。ヴィルク、それでいいか?」

「はい、大丈夫です」

「よし。では、シンドラの学園に通うための手筈を整えておこう。お前も学園に通う時期だ。推薦は出しておくが、いくつか試験は受けねばならんだろうが・・・幸い時間はある。そのための勉強と魔法の特訓をしておこうか」

「承知しました、父上」

 学園に通うのは来年4月、あと9か月か。少し短いけど・・・何とかするしかないか。防御魔法はまだ未知、というかまるで開拓されてこなかった魔法。ものにするには時間がかかるだろう。

「アルス侯爵、少しいいですか」

「マルク殿、どうされました?」

 あれ、二人で話してるけどどうしたんだろう?

「なるほど・・・承知した。娘とは今まで仲良くしていただいた恩もある。今更突き放しはしませんが、妻や使用人達には硬く言っておこう」

「感謝します。――この場をもって宣言する!我が息子、ヴィルクに対するいかなる侮蔑・暴言の類は禁ずる!もしされた場合は、我がグレイル家、並びにアズリール侯爵家に対しても同様の行動とみなす!注意されたし!」

 父上よりそう宣言がなされた。つまり、僕は実家だけでなくアズリール家にも庇護されたということ。ありがたいことこの上ない。

「ふむ、話はまとまったようですね」

 神官様が口を開く。

「では、『授法の儀』はこれまでとします!解散!」

「よし、帰ろうかヴィルク」

「はい!じゃあね、ルーウェ」

「ええ、ヴィルク。お疲れ様」

 こうして、少し荒れた儀式も終わり、帰宅したのだった。

はじめまして、言狼ことがみです!

1話なので少し長くなってしまいましたが、この世界の基礎的な要素はだいたい盛り込めたのかなーと思ってます。

いろいろなろう作品の小説やコミックを読んでいて、こんな設定があったらなーとかこの設定をこうしたら面白くなるのかなとか、ほぼ思い付きで書き始めた本作ですが、温かい目で見守りつつ気になった点は指摘していただけたら幸いです。

ではでは!

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