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羽田舞子 ①

上巻32話の続きになります。

ここからは、舞子目線で物語が進みます。




物語は、貞子と舞子が初めて接触し、舞子の忠告したあの言葉「あなたは脱け殻みたいね」から貞子と別れた後の続きになる。




夜の帳が降りたサービスエリア。煌々と照らされた光の中に、舞子は一人佇んでいた。彼女の瞳には、どこか憂いを帯びた光が宿っている。その身に宿る羽田の血脈は、常人には見えない何かを彼女に映し出していた。


「あなた…」


背後から聞こえた声に、舞子はゆっくりと振り返る。そこに立っていたのは、黒い影のような何かだった。しかし、よく見るとそれは実体があるようには見えなかった。まるで、抜け殻のようだ。まとわりつくような、冷たい気配。それは、かつてこの地を呪いで覆った忌まわしい存在――貞子の、抜け殻だった。


「その先に進んではなりません」


舞子の声は、静かだが強い意志を秘めていた。彼女の言葉は、実体のない抜け殻に、かすかな波紋を与えたように見えた。貞子(の抜け殻)は何も言わず、ただ舞子をじっと見つめている。その空洞の瞳には、かつて宿っていたであろう深い闇の残滓が、わずかに感じられた。


やがて、貞子の抜け殻はゆっくりと暗闇の中に溶けていった。舞子は、その消えゆく影をしばらく見つめていたが、小さく息をつくと、来た時とは違う方向へ歩き出した。


数分後、舞子は小さな東屋にたどり着いた。そこには、一人の女性が物憂げな表情で立っている。舞子の妹、栞だった。


「お姉ちゃん!」


栞は舞子の姿を見つけると、ほっとしたように声を上げた。その表情には、心配の色がほんの少し滲んでいる。


「ごめんね、栞。少し遅くなったわ」


舞子は優しく微笑みかけ、栞の肩に手を置いた。


「大丈夫?何かあったの?」


栞は舞子の顔をじっと見つめながら尋ねた。その視線は、妹というよりも、同じように何かを感じ取れる者のそれだった。


「ええ、少し…気になるものを見たの」


舞子は遠い目をしながら答えた。


「気になるもの?どんなもの?」


栞は腕を組み、興味深そうに尋ねた。


「うーん…そうね…悲しい記憶だけを残して、抜け殻になったような…そんな存在、かしら」


舞子の言葉に、栞は眉をひそめた。「悲しい記憶の抜け殻…?一体何を見たの?」


姉の言葉の意味を深く理解しようと、栞はさらに問いかけようとした。しかし、舞子はそれには答えず、ただ妹の目をしっかりと見つめ返した。


「さあ、行きましょうか。鳴海が待っているから」


舞子のその言葉に、栞は小さく頷いた。二人は並んで、夜の静けさの中へと歩き出した。先ほど舞子が見た奇妙な抜け殻のことが、姉妹の心に小さな影を落としながら。彼女たちの前には、まだ知らぬ出来事が待ち受けている。

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