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月下の誓い





猫島の夜は、満月の光に満ちていた。井戸のそばで、貞子、舞子、栞の三人は静かに座っていた。先程までの激しい戦いの跡などまるでなかったかのように、島全体が穏やかな空気に包まれている。貞子の心には、もう憎しみも絶望もない。ただ、温かい光と、大切な人たちがそばにいる安堵感が広がっていた。


「貞子さん…本当に、良かった」


栞の声が、震えている。貞子の冷たかった手を握りしめ、その温かさに涙が止まらない。舞子もまた、貞子の表情をじっと見つめていた。その瞳には、もはや虚ろな光はなく、確かな生気が宿っている。


「ありがとう、二人とも。私、一人じゃ…きっと乗り越えられなかった」


貞子の言葉に、舞子は静かに頷いた。


「私たちは、一人じゃないから。みんな、繋がってる」


舞子の視線が、遥か沖の博多湾へと向けられる。あそこで、自分が力を注ぎ込んだ封印の核が、この満月の光の下で安定していることを感じていた。


「結局、海門の修復も、貞子さんの解放も、両方が必要だったってことかな」


栞がぽつりと言った。


「そうね。片方だけじゃ、きっとうまくいかなかった」


舞子が応える。貞子は、二人の会話に耳を傾けながら、ふと、舞子の表情に微かな疲労の色が浮かんでいることに気づいた。


「舞子さん、無理してない?顔色が少し…」


貞子の言葉に、舞子はふわりと微笑んだ。


「大丈夫。少し疲れただけ。でも、これでようやく、貞子さんのところに来られたから」


その言葉に、貞子の胸に温かいものが込み上げた。


「私たち、これからどうなるんだろうね」


栞が、夜空の月を見上げて呟いた。貞子の心にも、同じ問いがよぎる。しかし、以前のような不安はない。


「まだ、分からないことはたくさんある。水野姉妹のこと、黒い影の正体、そして、残りの海門のこと…」


舞子が言葉を続ける。


「でも、一つだけ確かなことがある」


舞子は、三人の真ん中にある、小さな白い花に目を向けた。それは、貞子が井戸に供えた花弁が、奇跡のように残っていたものだ。


「私たちは、この先も、力を合わせていく。もう、誰一人として、闇に囚われることはない」


その言葉に、貞子と栞は顔を見合わせ、静かに頷いた。満月の光が三人を優しく照らし、その間に、確かな絆が結ばれていく。貞子の心には、未来への希望の光が宿っていた。この長い夜の先には、きっと新しい朝が来る。そして、彼女たちの戦いは、まだ終わっていないかもしれないけれど、もう一人ではない。


三人の巫女の魂が、月明かりの下で一つになった夜だった。


下巻に続く



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