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決意の場所





古文書を読み解くほどに、貞子は白い花に宿る力への確信を深めていた。「魂を鎮める」「穢れを祓う」「深淵を繋ぐ」。その言葉たちは、まるで抜け殻となった自分自身を救済する光のように思えた。そして、羽田雫の静かな言葉、「あなた自身で見つけるしかない」。それは、やはり、この決着は他でもない、自分自身の手でつけるべきものだと、貞子の心に強く響いた。


「栞ちゃん、葉月」貞子は、古文書から顔を上げ、真剣な眼差しで二人を見つめた。「雫さんの言葉を聞いて、改めて思ったんだ。あれは、私自身から生まれたもの。私が、責任を持って、終わりにしなければならない」


「でも、貞子…一人でなんて、危ないよ!」葉月は、心配そうな声を上げた。「また、あの時みたいに…」


「大丈夫だよ、葉月」貞子は、優しく微笑んだ。「もう、あの時とは違う。それに、古文書が示している。白い花が、きっと力になってくれる。それに…」


貞子は、遠い記憶を辿るように、目を閉じた。「…分かっているんだ。あれが、どこにいるのか」


栞と葉月は、顔を見合わせた。貞子の言葉には、確信のようなものが宿っていた。


「まさか…」栞が、小さく呟いた。


貞子は、ゆっくりと頷いた。「うん。あいつがいる場所は、きっと…あの場所しかない」


沈黙が、海猫亭の静かな午後の空気を包んだ。栞と葉月は、貞子の決意の固さを感じ取っていた。彼女の瞳には、迷いはなかった。


「でも、私たちも一緒に…」葉月は、食い下がろうとした。


貞子は、首を横に振った。「ありがとう、葉月。栞ちゃんも。でも、これは、私の戦いなんだ。私自身が終わらせなければならない。それに…」


貞子は、少し苦しそうな表情を浮かべた。「もし、何かあったとしても…私だけの問題で済ませたいんだ。二人を、巻き込みたくない」


「そんな…」栞は、言葉を失った。


貞子は、二人の手をそっと握った。「心配しないで。私は、きっと大丈夫。白い花が、私を守ってくれる。そして…何よりも、私が、終わらせたいと強く願っているから」


二人は、なおも不安そうな表情を浮かべていたが、貞子の強い意志を感じ、それ以上、強く引き止めることはできなかった。


「分かった…貞子の決意、尊重するよ」葉月は、寂しそうに言った。「でも、何かあったら、すぐに連絡してね」


「うん、約束する」貞子は、力強く頷いた。


栞も、静かに頷いた。「無事を祈っています」


夜が近づき、海猫亭の灯りが、静かに街を照らし出す頃、貞子は一人、店を後にした。手には、大切に保管していた白い花の押し花。彼女の足は、迷うことなく、夜の闇の中へと進んでいく。その目的地は、ただ一つ。彼女の原点であり、そして、全ての始まりの場所——あの、古びた井戸だった。

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