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導きの光





満月が夜空を蒼白く照らし出す中、舞子は木箱から取り出した滑らかな白い石を手のひらに乗せました。石は、満月の光を吸い込むように、静かに輝き始めます。五年前に亡くなった母の温かい筆跡で綴られた手紙の言葉が、舞子の胸にじんわりと広がります。「迷った時、苦しい時、この石を月の光に当てなさい。きっと、あなたを導く光が見えるはずだから。」


隣で心配そうに舞子を見守る鳴海の手を、舞子はそっと握り返しました。奈緒の変わり果てた姿、そして自身の中に湧き上がった微かな力。それらは全て、この石に繋がっているのかもしれない。舞子は、石に意識を集中させます。すると、石の輝きが徐々に増し、淡い光が舞子の全身を包み込みました。


その瞬間、舞子の脳裏に、鮮明な映像が流れ込んできました。それは、大島の沖津宮の奥深く、禁足地とされる場所の光景でした。岩がごつごつとした洞窟の中に、青白い光を放つ奇妙な形の石が置かれています。その石の周囲には、幾重にも複雑な模様が刻まれており、古代の巫女たちが祈りを捧げる姿が、幻影のように浮かんでは消えます。


映像の中で、一人の巫女が舞子に向かって何かを語りかけているようですが、声は聞こえません。ただ、その表情からは、深い悲しみと、それでも未来への希望を託そうとする強い意志が伝わってきます。巫女の視線は、舞手が持つ白い石へと注がれているように見えました。


ハッと息を吐き、舞子は目を開けます。手のひらの石は、先ほどよりも一層強く輝いています。


「鳴海さん…見えたの。沖津宮の奥に、何かがある。母さんの言っていた光は、きっとあれだわ」


舞子の言葉に、鳴海は驚きと安堵の表情を浮かべます。


「本当?じゃあ、あそこに行けば、奈緒を元に戻す方法が見つかるかもしれないのね!」


二人は顔を見合わせ、決意を新たにします。再びあの恐ろしい影と対峙し、妹を取り戻すために。そして、この地に蔓延る負の連鎖を断ち切るために。


一方、博多では、栞が高宮祭場に辿り着き、そこで一人佇む貞子に手紙をそっと差し出していました。手紙には、舞子の切実な想いと、サービスエリアで出会った抜け殻のような存在への懸念が綴られています。栞は、どこか不安定な雰囲気を纏う貞子のことが気になりながらも、姉の言葉を届け終え、静かにその場を後にしました。


その頃、貞子は、高宮祭場の静寂の中で、手紙に書かれた舞子の言葉をじっと見つめていました。時折、胸の奥に奇妙な感覚が蘇ります。それは、冷たくて、どこか懐かしいような、言いようのない感情の波。サービスエリアで声をかけてきた女性の言葉が、断片的に頭をよぎりますが、どうしてもはっきりと思い出せません。黒い影の夢も、何度も見るようになりました。それは、孤独と悲しみに満ちた、決して癒えることのない苦しみの象徴のように感じられました。


それぞれの場所で、それぞれの想いを抱えながら、運命に導かれるように、舞子、鳴海、栞、そして貞子の物語は、新たな局面を迎えようとしていました。満月の光が照らす夜の下、彼女たちの未来は、まだ誰にも見通せない深い闇の中に包まれていました。

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