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ルナリアの隠された秘密  作者: luna
イストン子爵家の結末
8/8

02.お姉様は私より不幸でいなければならない

 お姉様は私より幸せになることも、上にいくこともいけない存在なの。

 家族からも除け者にされているバカでノロマな愚女が私より幸せになっていいはずわないわ。

 昔みたいに縋って泣いて惨めに跪いてよ。その方がお似合いなのに、いつからか声すらあげなくなってつまらない。

 お父様たら年老いて力が衰えたのかしら、きっとそうに違いないわ。

 お母様に言っても大した罰を与えないからむしゃくしゃするときはいつもお父様に「お姉様が意地悪する」と、報告するの。ふふふ、するとね。

 思い出しただけで愉快で堪らないわ。

 鞭でお姉様の背中を叩いてくれるのよ。

 お姉様にお似合いの動物を躾ける為に使う鞭で。お姉様は人間ではなく人間以下の動物、そうだから身体で分からせてやっているだけ。私は慈悲深く美しく淑女ですからできの悪いペットを躾必要があるの。


 今日も家庭教師に怒られたわ。

 あの家庭教師が悪いのに私が怒られるなんて理不尽でしょ?

 今とってもむしゃくしゃしている。

「お父様、これを見てください! お姉様が私の大切な宝物を壊したの」

 うるうると涙を溜めて流せば、お父様はお姉様に素敵なことをしてくれる。

「またアイツは妹の物を壊しよって」

 お姉様を呼び、鞭を片手に躾をしてくれる。皮が捲れて、紅く染まるソレを見るとゾクゾクしてとっても気持ちいいのよ。あの頃は泣いて泣いてぐちゃぐちゃな顔で縋って「やめて」と、願望したのに今じゃ顔色ひとつ変えはしない。

 つまらない。つまらないわ。どうしたらあの頃のように顔をぐちゃぐちゃにして泣いてくれるのかしら。

 学園では、「お姉様に虐められている」「暴力を振るわれている」言いふらしたら、何故か知らないけど保護センターからお叱りを受けているのよ。お姉様は否定していたみたいだけど、誰も聞いてくれなかったみたい。あの時の絶望した顔がすごく魅力的で、もう一度見てみたかったけど、あの日以来二度と見ることができなくてすごく残念。カメラに収めて置きたかった。

 私が小さかった頃はとっても裕福だったのに、理由は知らないけどいつの頃か、私の家は貴族なのに貧乏になった。これもそれも全部、お姉様のせい。バカでノロマな愚女がこの家にいるから不幸になっているに違いない。何で、お姉様は生きているだろう……。

 そんな私もお年頃になって王族が開くデビュータレントに参加したの。

 綺麗なドレスを着てダンスパーティー。

 婚約者がいる人は、婚約者をパートナーにして婚約者の色のドレスを着るのが慣わし。私はまだ婚約者はいないからお父様がパートナーとして横に並んでいる。

 私にみたいにまだ婚約者がいない令嬢は舞踏会や夜会で相手を探す。そこで運命的な出逢いをしたわ。

 この国の国王になるエヴァンジェリン王太子殿下よ。

 私にぴったりだわ。

 私こそが王太子妃に相応しい。

 その為の出逢いに違いない。

 話に聞くと奥様を亡くされて今は独り身っていうじゃない。運命の女神様は私に微笑んでいるに違いないわ。だけどひとつだけ不満があるなら息子がいる事ね、邪魔だわ。息子がいたら私の子が王太子になれないじゃない。排除しなくちゃならないなんてめんどくさいけど、消してくれる人に頼まないといけないわ。今はまだその時ではないけど。


 エヴァンジェリン様が私に逢いに来てくれたわ。わかる人にはわかるのね、私の魅力が。

「ルナリア嬢はいるか? 話がしたい」

 は? 何でバカでノロマな愚女なんかに。

 あ、そうか。

 そうなのね!

 またお粗末なことをして呼び出されたのだわ。王太子のエヴァンジェリン様に呼び出されるなんてどんなお間抜けな愚女をしたのかしら。家の恥晒し。

「城に来てもらえるかな?」

「承知致しました」

 エスコートするかのように手を差し伸べるなんてアレじゃ罪人じゃなくて、大切なお客様を相手にするようだわ。何故!! 愚女なお姉様が城に連れて行かれるのよ。

 私こそが相応しいのに!!

 どうして! どうして!!

 バカでノロマな愚女が選ばれるのよ!

 間違えている。

 間違えている。

 間違えているわ。

 当たり次第物に八つ当たりしても怒りは収まらない。

 間違えているなら正せばいいのよ。

 それなのにどうして?

 どうして?

 王太子妃に相応しい、この私が平民に落ちなきゃならないのよ。

 冷たい目で見下ろすエヴァンジェリン王太子。

「エヴァンジェリン殿下は間違えて、バカでノロマな愚女を連れて行ったのでしょ!! 私こそが王太子妃に相応しいのに間違えていますわ」

「何を訳の分からない事を言っている」

「だってそうでしょ!? 優しくて、要領もあって、頭がいい私が選ばれるのは当然のことですわ」

 なぜ? 冷たい目で見下ろし、ため息を吐くのかも分からない。

「そのまま連れていけ」

 エヴァンジェリン王太子が告げると、私は両腕を掴まられて暗いジメジメした牢屋で連れていかれた。

 私は子爵令嬢よ。

 こんな所にいていい存在ではないの。

 私はこの国の王太子妃になる存在。

 尊い存在なの。

 この時まで知らなかった。

 お父様やお母様が何か大切なことを言っていた記憶はあるけど、貴族でもなく平民に落ちていたなんて。

 どうしてこうなった?

 私が何をしたと言うの。

 悪いのは全てあのバカでノロマな愚女のお姉様じゃない!

 私は悪くない。

 悪くないのに、どうして私が不幸にならないといけないのよ。

 全部、ぜんぶ、何もかもお姉様のせいなのに。


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