01.外堀を埋められていました
王家の預かりとなっている今、私はというと王宮に滞在している。何故かアレックス王子に懐かれている。エヴァンジェリン王太子殿下によると、同年齢だと思っているじゃないかと言われている。
私の精神年齢が低いと言いたいのか。
「ぼくね、大きくなったらステラとけっこんする」
「私もアレックス王子としちゃいます」
「それは叶えられないな。ステラと結婚するの私だからね」
「え、――ご冗談ですよね、人が悪いですね。エヴァンジェリン王太子殿下も冗談が言えるなんて驚きです」
「王家の秘密を知ってしまったからには、ステラ嬢には他の道は――…」
笑っている。笑っている。肩が揺れているからね! 笑いを堪えているのが丸分かりよ
「赤くなったり、青くなたり、忙しいね、ステラ嬢は」
「心臓に悪い冗談を言わないでください!」
「――あながち冗談では無いけどね」
「何か言いましたか?」
「何でもないよ」
アレックス王子と遊んでいて聞こえてはいなかったけど、今思えば外堀を埋められていた気がする。
悪い意味で箱入り娘で世間知らずだった。
何で? こんな事を勉強するのだろうと思いながらソフィア様とダンスレッスンをしたり、歴史の勉強をしたり、淑女としてのマナーまで習った。
途中から何がおかしいと思いながらも受けた。
学ぶ事は嫌いじゃないから楽しかったからよかったけど、講師の最後の一言で全てがぶっ飛んだ。
「これで王妃教育も終わりですね。飲み込みが早くて助かりました」
んん? 王妃教育ってどういう事でしょうか? と、聞きたいのに上手く言葉に声に出ない。あまりにも驚きすぎると固まるものだと生まれて初めて知った。
「私、何故か? 王妃教育を受けていたみたいです」
「あれ? ご存じ無かったのですか?」
「初耳です。初耳すぎて心臓が止まるかと思いましたよ」
ソフィア様は何か楽しそうに「あら、まあ」とひとごとの様に笑うだけだった。エヴァンジェリン王太子殿下の弟のディーノ王子にもその事を伝えたら逆に驚かられた。知らなかったのは私だけだったの?
「兄上の事嫌い?」
もし、嫌いでも頷けないよ、と、心の中でツッコミつつ私は答える。
「嫌いではありません」
「それじゃ好きなんだね」
すごくキラキラした笑顔で言わないでください。嫌いでは無いけど好きとも言っていない。私はこうしていつの間に外堀を埋めらていることに今更ながら気付いたのだった。
――そして、魅力事件が解決後。
実家は取り潰しなっているし、貴族積からも除外となったと聞いた。
そこでだ、後ろ盾になる家が必要となって養子縁組をしたりと忙しかった。ちなみに養子縁組をした家門は、アレックス王子の祖父母の家に決まった。
それからと言うと息つぎすら忘れるくらいにの速さで、私とエヴァンジェリン王太子殿下との婚約が発表される事になる。
「流れるように決まった気がするのは気のせいでしょうか?」
「気のせいだよ」
隣りにいる私の婚約者となったエヴァンジェリン王太子殿下は言わずとも楽しそうだし。
「ほんとは、ぼくのお嫁さんになって欲しかったけどパパにゆずる。ママのこと泣かしらぼくがパパからうばうからね」
なんて! 頼もしい王子様。
ぎゅっうと抱きしめると照れ臭さに笑うアレックス王子に癒された。まだ、婚約者の段階だけどアレックのママになる日も近い。
今からめいっぱい愛してあげる。
寂しくならない様に、たくさん抱きしめて、褒めて、愛を伝えたい。