81話 グロデスクてるてる坊主
「とりあえずは沈む床を最優先に探した方がいいか」
「いや、その怪異は連日で出現したことないから、今日はそれ以外の怪異が出る可能性の方が高いわよ」
言われてない情報が今になってボロボロと出てきやがる。最初から言えよ。なんの嫌がらせだ。
「さっきの情報も含めてさ、基地内にいたときに説明してくれてもよかったんじゃねーの?」
「...ごめんなさい。貴方が警備を引き受けないというから、ついカッとなってしまって」
すごく申し訳なさそうな感じを出しながらそう言われた。
タマってそういうタイプだったのかよ。なんかやたらファンに神聖視されてるから、そういう人間らしい部分があるのは意外に感じる。
そしてこの謙虚さをド畜生太郎先輩に見習ってほしい。
「他に言い忘れてる情報残ってたりするか?」
「ええっと...その、沈む床の件が対処できたら、サリエルも来てくれるそうよ。ただそれまでは気が向いたら来るって言っていたわ。
その他は…特に思いつかないけど、言い忘れてるだけかもしれないから何でも聞いて頂戴」
「お、おう」
「二人とも、ちょっと静かにして」
「急になんだよド畜生太郎先輩」
「僕たち以外の動く音が聞こえる」
「動く音?」
現在進行形で偽不審者情報が上がってるのにか?怪しすぎるだろ。
魔力探知を強めてみたが、反応もない。
ド畜生太郎先輩とタマの魔力はしっかりと拾えているので、相手の魔力の探知することだけを妨害をされているか、相手の魔力が平民並に少ないかのどっちかだな。
後者ならまだしも、前者だった場合はこのメンツだと分が悪い。
鎖鎌を握り直し、二人にも戦闘態勢に入るよう目配せで合図を送る。
そのとき、ド畜生太郎先輩が珍しく怯えている事に気がついた。
「おい。どうかしたのか?」
「シンクルドはさ、対物探知って分かる?」
「は?急になんだよ。知ってるけど」
対象のものが発する魔力を探知する『魔力探知』とは違い、自身が飛ばした魔力が返ってくる速度の差で物体の場所を探知するのが『対物探知』だ。
ふたつとも名前はどちゃくそ似ているが、探知方法が全く異なるため、探知の性質も扱う難易度も全く違う。
つーか対物探知に関しては、よっぽどの才能でもない限り他の魔法の練習した方が絶対いい。そんなレベルで扱いが難しいため、日常生活では『対物探知』という言葉を耳にすることすらまずない。第一騎士団でも使える人間は限られている。
「僕それさっきから使ってみてるんだけど」
「使えたんか。とんだバケモンだな」
「反応が全くないんだよ」
「は?」
「ふふっ」と、ド畜生太郎先輩は乾いた笑いをこぼした。
「魔力探知も対物探知も反応がないのに、物音だけが近づいて来てるんだ」
その発言を聞いた俺は凍りづいた。タマは状況をよく理解できていないらしく、頭を傾げている。
「ねえ、それってどういう意味?」
「…」
あまりの事態に動揺していると、廊下の奥の曲がり角からひょっこりと、音の発信源が顔を出した。
パッと見た印象だと、光る何かを引きづっている巨大なテルテル坊主。
だけどそいつが近づいて来る度に、学園の七不思議とかいうふざけたものの一つに数えられるほどの、異様な姿が少しずつ輪郭を帯びていく。
引きずられている何かは、恐らく人の死体だ。謎に全裸でむき出しにされた臓器がなぜか光り輝いており、テルテル坊主が歩いている廊下の辺りを照らしている。
その光っている遺体の大腸がテルテル坊主の首に巻かれており、それによって遺体とテルテル坊主を繋いでいた。そのため。テルテル坊主が前に進む度に死体がずるずると引きずられている。
そしてそのテルテル坊主は人間の右腕が足のように生えており、その右腕が飛び跳ねるような動作をすることで前進している。
シンプルにグロいし怖い。
そのうえでグロデスクてるてる坊主と引きづられている死体は、魔力探知にも対物探知にも引っかかっていないのであった。
「よし!撤退だ!!!」




