73話 情報閲覧
嫌に長く感じた平日が終わり、やっと一息つける日が来た。
「やっと休日…」
「毎晩お疲れ様」
気疲れが凄い。戦闘があった訳じゃないし、第1騎士団員としてあっちこっちに飛ばされていた頃よりも楽だけど…。
色々な出来事が重なりすぎてやたらメンタルがすり減ってる。
とりあえずド畜生太郎先輩は許さない。冗談抜きで。
「あの、もしかして今日って暇ですか?」
「何その怖い質問」
「第一騎士団の正装のデッサンを描きたいんですよ」
「ああ、そういうことならいいけど...」
良かった。何か面倒ごとを持ち込まれたのかと思ったわ。
ニホの頼みを断る理由も特にないので、アイテムボックスから正装を取り出して床に広げた。
「!?」
「これはココで、この装飾は...確かここら辺」
「今どこから出したんですか??」
「ん?アイテムボックスだけど」
あ、そういやコイツは魔法に疎いんだったっけ?講義で習っていないものは基本的に知らないのか。
「これは…ああ…なんつーか……。透明なバッグに物をしまうことができる魔法だ。大きさは術者の力量とそれを維持するための魔力量によるらしい」
「凄く便利そうですね!」
「俺は騎士団の正装とサバイバルナイフぐらいしか入れられねぇが、人によっては一軒家ぐらいの広さのアイテムボックスが使えるらしい。維持できるのかは知らねぇけど」
「その能力と馬乗りの技能を鍛えるだけで仕事ができそうですね」
「そのレベルで魔力があるならもっと他の仕事ができるだろ」
少なくとも平民の血筋じゃとてもできない。魔力が足りなさすぎる。
俺みたいに固有能力が強力である可能性に賭ける方がまだ現実味があるレベルだ。
ニホの場合は色々と例外が多そうだからよく分かんねぇけど、その働き方で稼げる程極めるのは厳しいと思う。
「デッサン終わったらその魔法のやり方教えてください!!」
「流石にこのレベルの魔法教えるのはムズいわ。教授に聞いてくれ」
「え〜…。分かりました」
ニホは少ししょんぼりとしながら、正装のスケッチを始めた。
スラスラと形をとりつつ、輪郭から装飾の順番で描いていく。
「相変わらず絵描くの好きだよな」
「最近は趣味というより、仕事で描かざる負えない場面が増えただけですけどね」
「まだあの漫画?とかいうやつ描いてるのか」
「正直ネタ切れ中です。なにか漫画のネタになりそうな話ありませんか?」
「…」
第1騎士団関連なら山ほどあるけど…どれをどこだけ話していいんだか理解してないから、迂闊に話せない。
この前の玉蹴り女の話は情けないから言いたくないし。つーかニホもそんなこと言われても反応に困るだろ。
「パッとは出てこないわ」
「んー、なら…あ、そうだ」
ニホはスケッチブックから目を離し、俺の表情を伺うような雰囲気を出しながら口を開いた。
「シンクルドさんが、騎士団員の方にシンデレラと呼ばれている理由を教えてください。嫌だったら別にいいですけど…」




