52話 発想力
心が傷ついてしまって勉強どころではないので、この場はお開きということになった。
「さっきのはびっくりしましたね」
「ホントにな。女性不信になりそうだわ」
ずっと応援してた傾国美女はド畜生太郎先輩だし、第一王子の女装も声出さなきゃ女性だと間違えるくらいに完成度高いし。
もうすれ違った女性一人一人を『男性なんじゃないか』って疑ってしまいそう。自分でも何言ってるのかよく分からんけど。
「学園祭のことについて調べたいから、図書館寄っていい?」
「もちろんです!!僕も暇なんで!!」
「そっちのグループでは何するか決まった?」
「はい!喫茶店ムキムキマッチョパラダイスを開店する予定です!」
「何それ」
「ムキムキマッチョがホールスタッフをしている喫茶店ですよ」
「インパクトの強さが異常すぎんか?」
「僕の適当な発言のせいで決まってしまいました。ちなみに僕がリーダーです」
「マジかよ」
「泣きたいです」
ニホが人に指示を出してるイメージ持てないわ。言い出しっぺという理由で押し付けられた感じがすごい。
俺のグループは大和さんが率先してまとめ役を担ってくれているが、ニホのグループにはそういう存在ががいなかったのだろう。
「売るメニューとかって決まってんのか?」
「コーヒーと紅茶を提供することは決まりましたけど、それ以外は今度決めます」
「食中毒には気を付けろよー。食らった人たちを見たことあるけど、めっちゃ苦しそうだったし」
俺は固有能力のせいか、こういった類のものをまともに食らったことがない。けど、遠征先では団員が地面に蹲っているのを見たことがある。
副団長が同行していればは一瞬で治してもらえるが、俺たちだけだと自然に治るのを祈るくらいしかできないからな...。
でもまあ、学園にはしっかりとした救護室があるらしいし、ヒーラー志望の学生がいても可笑しくないので、もし食中毒が発生しても何とかなりそうだけど。
「もちろんです!簡単に管理できるものを提供するつもりです!」
「焼き菓子系が一番安心だぞ」
「確かにアイスクッキーとかなら前日に仕込みが出来ますし当日楽かも...」
「あいす?なんだそれ。郷土料理か?」
「え!?この世界無いんですか????」
俺の返事を聞いたニホは、妙に壮大な言葉を使ってリアクションをしてきた。
「少なくとも俺は聞いたことねぇわ」
「マジすか!?じゃあ学園祭で提供してもよさそうですね」
「なんか知らない食べ物ばっかり売ってそうな店だな」
「とりあえずホールスタッフにその場でケチャップをかけてもらえるオムライスはメニューに入れるか投票で決めようと思います」
なんだよそのメニュー。完成品を提供するのとは何が違うんだよ。
そんなニホの謎の発想力を目の当たりにしながら図書館へ向かった。




