51話 神出鬼没の傾国美人
全く知らなかった学園祭のことにプラスして、大和さん御一行の襲来により、期末試験に向けても動かないといけないことに気がついてしまった。
「ストレスがヤバイ...」
本気でヤバかった一時期に比べたらマシだとはいえ、しんどいもんはしんどい。
このストレスをどうにかする為、何か爆買いでもしようと商品を見まくっていたその時。
「!?」
とんでもないお宝を見つけてしまった。
*****
課題を終わらせるため、ニホと一緒に人気が比較的少ない庭のテーブルを陣取り勉強をしていた。
休憩にとおやつを食べ始めたとき、
「見ろよこれ!!」
俺は昨日見つけた、レアな写真集を取り出して見せた。
この写真集の表紙を飾っているのは、美しくもどこかミステリアスな雰囲気を出している妖狐の美女である。
「久々にこの人の写真集見つけたわ!」
「わぁ。その人すっごい美人ですね」
「この人さぁ、名前名乗らないし雑誌にも不定期にちょこっと出演するだけだから”神出鬼没の傾国美人”って呼ばれてんだよ」
まさかこの人の新刊の写真集が学園の購買で売られているとは思わなかったけどな。
「へぇ。すごいですね」
第一騎士団内部なら大盛り上がりするような事だが、ニホの反応はすごく鈍い。
「...もしかして雑誌とかはあんまり興味ないのか?」
「はい。というか3次元の女性にそこまで興味持てないというか...」
「??」
うっそだろこんな美人なのに。街中歩いてたら100人中100人が振り向きそうな美しさだぞ?
それなのにこの興味のなさ。もしかするとニホは...意外とマニアックな趣味?やはり世間で流行る本を書ける人は感性から違うのだろうか。
カルチャーショックで動揺していると、気配もなく背後に立っていたコン太郎先輩に話しかけられた。
「何を読んでるの?」
「ああ!この写真集だよ」
コン太郎先輩にもこのお宝を見せる。
「知ってるか?この人は...」
「なーんだ。僕の写真集じゃん」
「笑えねえ冗談言うんじゃねーよド畜生太郎がよ」
頼むから2回ぐらい死にかけてほしい。いくら無神経なことばかりを話すド畜生とはいえ、この発言ばかりは許せない。
湧いてくる殺意すべてをド畜生太郎に向けるが、当の元凶は気に留めることもなかった。
「僕の本来の姿がこれなんだよね。ほら」
瞬きをするほどの時間で、ド畜生太郎は『神出鬼没の傾国美人』へと変身した。
瞳、表情、口、鼻、輪郭、髪質...その全てが人々の視線を奪ってしまいそうなほどに美しい。
しかし中身はアレだ。ド畜生太郎先輩だ。
「うわ~~~!!!!!!!理想が崩れた!!!!!」
「この雑誌は...隊長に言われてやった仕事のやつのだね」
「いつ撮影に行ったんですか?」
「シンクルドが巨大円口ミミズの討伐に行ってた1日目」
あの日かよ!!思いがけない場面で謎が一つ解けた。が、そんなことよりも。
「まずはさ!!!!今まで写真集に使った金を返してくれよ!!!!!」
「知らないよそんなの」




