24話 反乱に向けての活動
反乱軍の本拠地のある魔法塔。そこで日曜日に青髪の野郎からもらったお菓子をコン太郎先輩と一緒に食べているとき、ふと気づいた。
そろそろ騎士団員としての任務を着手しないといけない。この前反省したばかりなのに、結局何にもやってないじゃねーか。そろそろ新しい情報を手に入れないと無能すぎるだろ。
その前に、まずは騎士団長から貰った情報についても整理していこう。
本来なら『世界のお菓子百科事典』を読み、俺が将来的に第一学園に入学するかもしれないという体で、平民の入学方法や魔法塔の異常性については知っているはずだった。
そしてニホから貰ったあの極秘文書。あれには反乱軍がいるかもしれないことや、俺一人で捜査をしないといけない理由が書かれていた。そして2日目で反乱軍に入団し、そこから何の進捗もない。
目の前で口いっぱいにお菓子を詰めているコン太郎先輩を見る。俺の監視役を任されていそうだし、実際この部屋を捜索しようとすれば邪魔してきそうだが、口が緩そうだ。少なくとも反乱軍のリーダーやタマよりは情報を漏らしそうな雰囲気をしている。
どうやって話を持っていこうかと真剣に考えたが、もうなんかめんどくさくなってきたので軽い曖昧な部分から聞いて様子を伺ってみるか。
「反乱軍の目的って、名前の通り反乱を起こすことが目的なんですか?」
「君に教えると思う?」
「いいや、全く」
それすら教えてくれないか。そりゃそうか。流石に相手を馬鹿にしすぎたかもしれない。コン太郎先輩は紅茶で食べたお菓子を腹に流し込み、少ししてからポツポツと話し出した。
「まあ実のところ、僕みたいに大して何もしてない人は沢山いるよー」
「あ、結局話してくれるんすね」
「僕の場合は学園生活がしたいだけだもん。リーダーに頼まれたことをこなせばそれが叶うから、反乱軍に身を置いてるだけって感じ」
学園生活がしたい、か。確かにココ最近の生活は楽しかった。特段、どこかに遊びに行ったわけでもないし、課題に追われまくってたけどな。
この生活が続けば、と思ったことは何度かあった。
そこら辺は殺人を起こそうと考えていたド畜生太郎先輩も同じ思いなのだろう。だが、それにしては
「先輩は俺の監視ばかりで楽しい学園生活は送れてないんじゃないすか?」
「君がいる間はね。でも反乱軍に居れば、君が卒業した後にも入学と卒業を繰り返せるもん。何十年後も。まあこの学園が存在していればの話だけど」
え、怖い。なんなんだよコイツ。
並々ならぬ狂気を感じた。青春を思い返して遠い目をしている人は何度も見たことがあるが、本当に手放せずにいる人もいるとは。
「再入学を繰り返してるんすか?」
「正確には容姿とか個人情報は毎回偽装してるよ」
普通に詐欺じゃねーか。俺の裏口入学よりも酷い。
そういえば、コン太郎先輩は妖狐寄りの性質を持っていると言っていたな。それで人に化けたりするのが得意なのかもしれない。
もし今の容姿が化けたものだとすれば、実年齢を推定することすら難しい。謎があまりにも多すぎるから、摘発で捕まえられなかったら指名手配も出来ないだろう。
そうだと仮定すると反乱軍が摘発されたとしても簡単に逃げ切ることができるから、こんなに軽々しい言動をしているのかもしれない。
「というわけで、利害の一致でここにいるだけだからリーダーが何しようとしてるのかは全くわかんないんだよね」
「ガチで言ってます?」
「なーんか昔に聞いたことがある気がするんだけど、よくわかんなかった」
「はあ...?」
本当に当てにならないな。あきれすぎて顔が引き攣りそうになったわ。
「ところでさぁ?そろそろ酒が飲みたくなってきたんじゃない?シンクルドって結構酒好きそうだよね」
俺の心情を気にもしてなさそうなコン太郎先輩は、期待に満ちた目で言ってきた。誰が行くかよそんなもん。
「あ〜。自分は今、医者みたいな人に禁酒するように言われてるんで」
「言わなきゃバレないって」
「勘弁してください。じゃ、自分は帰ります〜」
またダル絡みされる予感を察知したため、さっさと部屋に帰ることにした。後ろから「残りのお菓子もらっていいの?」と聞かれたけど無視してこの部屋を出た。
すると開けた扉のすぐ横で、タマがしゃがんで座っていた。