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こんなん人間不信になるわ  作者: 朝緑
強制入学
21/82

20話 多分ライバル

次の講義まで少し時間があり、特にすることもないため食堂でボーっとしていた。ニホはずっと絵や漫画を描いていて忙しそうだ。何か手伝いたいが、絵が描けないので何もできない。


暇つぶしに教科書をパラパラとめくっていると、


「シンクルド!少しお時間よろしいかしら?」


ある女性が話しかけてきた。


「人違いです」

「ま、待ちなさいよ!次の講義まで時間があるのは分かってるんだから!」


なんで俺が選択してる授業を把握してんだよ。地味に怖いことを言ってきたこの女性は確か、前回魔法技能講義で騒いでいた高飛車女だ。名前は...なんちゃら家の長女だかなんだかだ。


「ちょっとだけ!ほんの数分でいいから話を聞いて下さらない!?」

「ほんとかよ」

「もちろんよ!天照大神に誓って約束するわ!」


よく分からないが、神に誓うとまで言われたし、少しだけ話しを聞いてみるか。厭な予感はするけど。


そう思いながら俺が振り向くと高飛車女はにやりと笑い、自身が身に付けていた手袋を片方脱いで地面に叩きつけた。周りで様子を見守っていた第三者はあまりの事態に騒然とし始める。


「ふふん!」

「自分がわざと落とした物は自分で拾えよ」

「ち!ちがうわよ!!」


勿論意味は理解している。してるんだけども、目に見えた爆弾に自ら関わりたくない。そんな俺の切実な思いは届かず、高飛車女は声高らかに宣言する。


「私、大和ノ牡丹はシンクルドに決闘を申し込みますわ!!」

「いやです」

「な!!!勝ち逃げするおつもりで!?」

「いやまず戦ったことがないでしょう。勘弁してくださいよ、大和ノさん」

「苗字は大和、下の名前は牡丹ですわ!東洋帝国では苗字と下の名前の間に”ノ”を挟みますの!今覚えなさい!」

「へいへい」


当たり屋だ。タマ割り女とは違う、もっと純粋な分類の。別件で負傷した心の傷が癒えていないこともあって相手にする気に慣れない。


どうしたもんかと悩んでいると、高飛車女の周りにいた従者のようなポジションの女性の一人が一歩前に出て話し出した。


「牡丹お嬢様。そろそろワンワンのお散歩の時間でございます」

「あら、確かにそうね。それじゃあシンクルド!せいぜい私にボコボコにされないように頑張りなさい!おーほっほっほっほ!...ところでワンワンはどこにいるの?」

「こちらです。牡丹お嬢様」

「あら?そうだったのね。案内ありがとう」


大和さんが周りの従者に道を案内してもらいながらこの場を去ろうとしているところで、俺はつい余計な一言を呟いてしまった。


「...お前イヌのことをワンワンって呼んでるのかよ」


周りにいた従者が一斉に俺のことを睨みつけ始める。


「あら?この国ではそう呼ぶのではなくて?」

「牡丹お嬢様。彼は元騎士団員ですから、少し世間との齟齬があるのでしょう」

「なるほどね。それなら今の言葉は聞かなかったことにしてあげるわ」

「はあ」


いや俺平民出身だからそこら辺の貴族よりも世間について詳しいけどな。まあ訂正する必要もなさそうだし、余計なことを言ったのは俺の方なので何も言い返さないけど。


大和さんたちが再び歩き始めたものの、従者の一人がずっと俺の方をにらみ続ける。そして一瞬だけ中指を立てたかと思えば何事もなかったかのように大和さんたちの方へと向かって行った。


「こわっ。結局あいつら何だったんだよ」

「とりあえず関わらない方がよさそうですね...」


今までの言動を見た感じだとタマのような、無駄に目立ってしまう部類の女性な気がする。よくよく考えると今日はライバル宣言されただけだったし。


どうしてこうも癖の強い人ばかりに目を付けられてしまうんだろう。思わずため息をこぼしてしまった。

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