16話 強引な処置
「大丈夫。確かにいきなり第一騎士団に入るのは不安だと思うけど、僕たちは君が活躍できるように全力でサポートするから!」
「え、あ、あの、えっと…」
「我が騎士団が誇る、イカれた装甲の塊みたいなやつに攻撃を入れれたんだ…君なら将来的にレッドドラゴンを一撃で倒せるようになるよ!」
「いや、私はそんな……」
眼帯の青年は、女性の手を両手で包むようにして握る。
「そうか…残念だなぁ。なら」
「ここら一帯で"脅された"と虚偽申告行為を繰り返した犯罪者として連行するね」
「…………え?」
眼帯の青年の言葉に、周りはザワついた。
女性は反射的に距離を置こうとするも、手を掴まれているため逃げられなかった。動揺する女性の周りを第一騎士団員が囲み出す。
「な、何?何なの?」
「君でしょ?こうやって騒いで、無実の人を騎士に逮捕させてるの。ここ数か月で問題になってたんだよね」
「そんなことやってないわ!」
「証拠と証言は揃ってるけど...まあ、話は騎士団本部で聞くよ。この人を尋問室までご案内差し上げて」
「承知いたしました」
女性は必死に抵抗するも、何の時間稼ぎもできずにそのまま連行されて行った。事件がひと段落した後、眼帯の青年はシンクルドの方へと向かう。
「容態は?」
「腹と玉が痛い」
「なるほど」
眼帯の青年は健康状態を調べる魔法を使用し、シンクルドの容態について知る。途端に顔を青くした。
「確かにこれはまずいね」
「まずい状態なの?」
「このままだと死ぬ」
「死ぬの???」
「玉がねじれちゃってる」
「玉が...え?」
どこかから鼻で笑われた。
「君は身体に影響を与える魔法が効かないから、回復魔法も効かないんだよね」
「じゃあ俺ずっとこのまま?」
「いや、神通力で玉を逆向きにねじる」
「神通力で玉をねじる?」
この緊急事態にパワーワードを連発しないでほしい。眼帯の青年の言葉を聞いた数人が笑いを堪えすぎて不審者みたいになっている。俺もちょっと笑いそうになったわ。
「それじゃあやるね」
「は、ちょっと待っ、いっっってえ!!!!!!!!!!」
一瞬の新たな痛みが加わった後、先ほどまでの痛みが嘘かのように消えてなくなった。
「助かった!助かったしめっちゃありがたいけどさ、神通力使わないといけない案件だったのか?ほら、後ろの何人かが笑いすぎて過呼吸起こしそうになってんだけど」
「だって、触りたくなかったし」
「なるほど。納得したわ」