11話 尋問
7話、8話、10話を本編に影響がない範囲で書き替えました。
「あの日どうして授業をサボったのかな?」
「すんません。どっかのギャング集団に強制加入させられたせいでメンタルがやられてて」
「ほう。そのどっかのギャング集団とやらのリーダーにその言い草か」
「自分は質問に答えただけですよ」
反乱軍とは関わりたくない一心でタマやコン太郎先輩を避け続け、やっと迎えた金曜日。気配を殺して近づいてきたコン太郎先輩に気づけず、そのまま拘束されて魔法塔まで連行されてしまった。
鉄の拘束具のせいで身動きが取れない。しかも周りにコン太郎先輩以外にも2、3人潜んでいそうだ。どうやっても相手の話を聞かないと解放されることはなさそうなので、さっさと本題に入るように促す。
「ところで…ホントに叱る為だけに俺は呼ばれたんですか?」
「いや?質問があったから呼んだんだ。その前にちょっと準備するから待ってて」
何故か拘束具を外され、席に座るように催促される。コン太郎先輩が奥からお菓子を出してきて、俺の目の前のテーブルに並べ始めた。いや毒盛られてんじゃねーかって気がして食べられねーよ。
「騎士団に情報渡すときの報告書ってどんなの?」
「ないです」
「ならどうやって騎士団長と連絡取ってるの?」
「取ってないです」
「...どうして君のとこの団長は学園が怪しいって目星つけれたの?」
「知らないです」
「口硬いね」
「実は全部本当なんですよ」
「そろそろ情報吐いてくれないかな?」
「もう吐いてるんですよ」
反乱軍のリーダーから少しの魔力を感知した。なんらかの魔法を発動させたのだろう。または何らかの合図か?相手の行動に集中するも、俺の抱いている緊張感とは裏腹に反乱軍のリーダーは大きなため息をついてリラックスし始めた。
「うーん。まあ、今日のところはそういうことにしとこうかな」
「じゃあ帰っていいですか?」
「うーん…今日はできるだけコン太郎と行動して欲しいかな」
「なんでですか?」
「連絡手段を…」
「だから連絡取れてないんですって」
「本当に連絡とってないですよ、こいつ」
俺が食べなかったお菓子を食べ始めたコン太郎先輩は、なぜか俺を庇い始めた。
「まあまだ学園生活が始まって1週間も経ってないからかもですけどね」
「線路に突き落としてひき殺そうとした俺を庇ってくれるんですか?ド畜生太郎先輩」
「コン太郎だよ。君って何気に身体だけじゃなくてメンタルも過剰装甲だよね?」
「いや違いますが????」
「君のメンタルについては、僕もド畜生太郎と同意見だよ」
「コン太郎です」
反乱軍のリーダーは少し困ったような表情をした。
「普通は自分を殺しに来たことのある人に自分から話しかけないよ?」
「へぇ。騎士団じゃよくあることだけどな」
「第一騎士団ってそんな内ゲバ激しいんだね」
「いやただのじゃれ合い」
「騎士団内部ってそうだったんだね。ド畜生扱いされた僕でも流石にドン引きだよ」
「まじでか」
内ゲバ自体、俺が騎士団に入団したころには既によくある行事みたいなもんだった。戦闘技術も上がるし、味方の手の内を把握しておくことで連携しやすくなるし、適切な仕事の割り振りをすることもできるようになるし。
それぐらいの認識だったんだけどな...。
まあそんなことよりも早く現状を切り受ける方法を考えないと。
会話やこの場の雰囲気からして、どうやら反乱軍のリーダーはホントにあの質問をするためだけに俺を呼んだみたいだった。こんな誘拐みたいなマネしてまで行いたかったことがこれか。まあこんな強硬手段に出るぐらい騎士団と俺のやり取りが気になったんだろうけども。
「用が済んだならもう帰っていいですかね?」
「...もうちょっとゆっくりしていけばいいのに」
「敵陣の真ん中でくつろげないですよ」
結局はそのまま解放された。