10話 オタクの気持ち
「魔法が使えるようになりたいです…」
ニホが半泣きで呟いた。
どうやら俺と同じ魔法技能講義を受けていたニホは魔法陣すら扱うことができなかったため、しばらくは毎日補講を受けることが確定したらしい。
「こればっかりはなぁ…。技能講習を受けて魔法使えませんは通らないし」
「世間では魔法が使えるのは一般的なんですか?」
「いいや。魔法陣発動させれるだけでも"才能ある"って持て囃されるレベルだ。魔法陣書いたりとか、他の奴らみたいに詠唱のみで魔法を使えるのは異常。俺も騎士団員だったけど魔法陣を最初から仕組んでないと基本的に無理だし」
確かに俺は騎士団内では魔法が扱えていない部類に入る。
でもさっきみたいに自分の特性を利用する魔法は使えるから世間的には優秀な部類だし、革命軍本拠地のような意味わからん場所で実力ありそうな人間に囲まれでもしない限りは負けない自信もある。
それなのに魔法技能講義に出席していた生徒のほとんどは、詠唱による魔法を使用出来ていた。詠唱の暗号化こそできてはいなかったが、改めてこの学園のレベルの高さを痛感した。
「シンクルドも詠唱して魔法を出してたじゃないですか!」
「あれは…ああいう言葉を使うのも魔法陣の発動条件の一つだったからだよ。ほら、魔法が発動した時は魔法陣がブワッて出てきてただろ?」
「…確かに」
「詠唱した後に魔法陣が出してないやつが"魔法陣を介さず魔法を使用してる人"ってことだ。自称大和家女がやってたやつとか、教授がやってたやつがそれだ」
「なるほど!だから人によって違ったんですね!エフェクトの違いだと思ってました!」
「おう。そうだ。アイツらが化け物なんだよ。ニホが普通なだけだから、気にすんなって」
俺の第一騎士団としてのメンツは丸潰れだけどなちくしょう!今日は部屋に帰ったら勉強会をしようかと話をしていると、甲高い悲鳴が聞こえた。
音の発生源に目をやると、タマが青い顔をしながら俺に手のひらを向けている。なんだよ。
「ど、どうしたのよその服装!虐められたの!?」
「ちげーよ。さっきの講義の成果だよ」
「!まさかミスを装って...!」
「ちげーつってんだろ」
変な勘違いされるのも仕方がないので今日あった内容をすべて話した。最初は半信半疑だったタマだが、ニホからも説明してくれたのでなんとか信じてくれた。
「ああ、びっくりした」
「確かに今のシンクルドさんの服装は...かなり.....」
「仕方がないだろ。能力測定なんてやると思ってなかったんだよ」
「次からは用意した方がいいかもね。きっと目を付けられただろうし」
「というか、タマはあの技能講習受けてなかったのか?」
「ええ。私は他の講義との関係で来年から受けることにしたわ。正直家を継がされる身としては受ける必要性自体がないけどね」
「わかります...。魔法が使えるようになるとかっこいいですもんね!」
「.......まあそんなところね」
まあ本音はこの国に反乱を起こすときのためだろうけどな。革命軍に属してるくらいだし。
「それじゃあ私は次の講義に備えるわ」
「俺は着替てくるわ」
「それでは...」
「ええ。またね」
タマとすれ違う瞬間、肩をがっじりと掴まれて小声で耳打ちされた。
「それと…貴方が今日の一限目をサボったこと、リーダーが怒ってたわ。近いうちに魔法塔に顔出した方がいいわよ」
「ええ…」
どういうこと?俺って敵の大将首(?)に授業サボったことを叱られに行かないとダメなんか?意味わからん地形と環境を形成してる敵陣の基地に行くんが普通に嫌なんだけど。




