第一話:プロローグ
◉この物語に登場する人物、組織団体、その他地域施設などは全てフィクションで架空のものです。
◉この小説には韓国語のセリフが出てきます。登場人物達の臨場感のある場面を想像してもらいたくて敢えて表記するようにしました。日本語訳を添えておりますので、読みにくいかとは思いますが、予めご了承くださいますと幸いです。
◉日韓の関係性や政治的な何かを意図した作品ではありません。純粋な恋愛小説です。
◉初めての作品のため、誤字脱字乱文等ある場合があります。
◉この物語の結末は全て決まっておりますので、お話の展開の改変等はできかねます。
人はいつか死ぬ。
それは時に、無条件で
理不尽だったりする。
必ずしも、病死や寿命とは限らない。
当然、いつ死ぬかも分からない。
子供の時からいくつもの死をこの目で見て、俺は強く思う。
他人が勝手に、人の命の顛末を決めることはあってはならない、と。
どんな理由があろうと、他人が決めてはいけないんだ。
ーしかし、
俺は漠然としたその自論を
捨てなくてはいけない瞬間がある。
人の命に、顛末を与えるときだ。
人々の陰でその《任務》をこなす度、いつも同じ結論が腹の底から湧いて出る。
俺はそれを、まるで機械のように捨ててリセットしなくてはならない。
冷たい闇の世界でしか生きるすべが無い俺にとって、その余計な感情や同情は、俺自身の価値を下げる致命的なものになるからだ。
『先日ウチの《クマ》が死んだ。
若くて優秀な新しい《クマ》が欲しい。』
そんな一言で、幼い人間の子供だった俺は、ここまで育てられてしまった。
存在してはならない《クマ》が、生まれてしまったんだ。
どこにでもある小さな因果が、逃れられない悪縁を結んだ瞬間だった。
俺は母国を離れ、日本のとある山の中で小さな廃屋に一人で暮らしている。
まるで本当の熊のように。
ここに来て、もうすぐ10年が経とうとしていた。
肌を突き刺すような冬の寒さが、山の静寂を仕切っている。
そんな中で白い息を吐きながら眠る俺は、腹の底で蠢く自我を押し殺しながら、束の間の休暇を必死に耐えて過ごしていた。
疲れた脳内に、いつものあの夢が投影される。
『どうしたの?大丈夫?パパとママは?』
煌びやかな夜の街で、心配そうに俺を見つめる女の人。
そう…あの時はまだ子供で日本語が分からなかったから、何を話しているか分からなかったんだよな。
『言葉が分からないのかな…名前、言える?』
時折困ったような表情を見せながらも、彼女は俺を怖がらせないよう、温かく笑顔を向けてくれた。
今なら何を話しているか分かる。
夢の中だけなら赦されると信じて、俺は口を開いた。
『僕の名前は…、』
ーその瞬間、
女の人の顔がぼやけ、真っ黒い何かに変わる。
『お前の名前は《サクマ》だ』
黒い顔はとてもおぞましい低い声で、俺の小さな肩にがっしりと掴みかかった。
『《サクマ》として生きろ、死ぬまでだ』
突如悪夢にうなされ覚醒してきた頃、微かに外から足音が聞こえてくる。
その小さな足音で目覚めたせいで
全てが変わることになるなんて、
この時はまだ、気づいてなかったんだ。
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