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カレンダーが浮く日

作者: 滝川誠

初めてSFを書きました。

 数字が確固たる記号ではなくなったのは、いつの日か。僕はその日を覚えている。

「お母さん、数字が浮いているよ」

「またそんなこと言って。構ってもらいたいからって嘘を吐かないの」

 僕だけ気づいていて、皆が僕の妄言だと嘲笑う。

「本当だってば」

 カレンダーを指差す。カレンダーには数字が刻まれている。その順番は小さな頃に習った数字とは異なり、おかしな並びをしている。ふわりと数字がカレンダーから抜け出し、勝手な並びになるのだ。これが僕の言う、数字が浮く。

 1の次は4、4の次は2.

 またある時は、8から始まるときもある。

「ほら、見て。数字が8から始まっているよ」

「また嘘ついてる。先生に言っちゃお」

 僕は本当だと主張をしたが、先生も苦笑いをするだけで僕を信じてはくれなかった。


 中学生になると、もう数字が浮いているなんて人前で言わない。頭のおかしな奴だと思われるからだ。

 しかし、数学の教科書を開くと、また数字が変わっている。どうにかして欲しい。

 それにしても、僕のこの錯覚は僕の頭がおかしいから起こるのだろうか。それとも、実際に数字の並び替えが起こっても、僕以外の者には気づかないのか。でも、僕が指摘した時に気づくはずだ。

 隣の席に座っている浅倉がなにやらこちらを見ている。僕ではなく、教科書を見ているようだ。教科書では丁度、数字の並び替えが起こっている。

 逸る気持ちを抑えて、訊ねてみた。

「もしかして、浅倉さんも見えるの?」

 驚いたように目を見開く浅倉はこくんと頷いた。

「カレンダーから数字が浮いたことを見たことある?」

 またこくりと頷く。

 仲間だ! 僕は思わず叫びそうになった。

「どうして他の人たちは気づかないのかな?」

 浅倉は世界で起こっている“数字が読めない者たち”問題について話してくれた。実は、僕や浅倉は数字をきちんと認識できる側の人間で、大半の者は数字の意味を理解できなくなっているらしいのだ。

「でも、算数とか数学の授業をしているじゃん」

 それは昔の数字を使っているからであると浅倉は教えてくれた。

 数字も生きている。生きているから変化する。

 そりゃ凄く昔に生まれてプログラミングでしか動かない新人類には無理な話か。

 そう思っていると、教室の前のカレンダーが浮き、空に飛び去ってしまった。

 数字も飛びたくなるお年頃か。

オチに苦労しました。

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