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其の三

 どこまで話したかしら。

そうね、あの人が檜の棒をへし折って、本物の勇者だと示したところだったわね。

国王陛下が伝統に則って、王都近郊の洞窟のゴブリン退治を依頼したわ。


「俺ひとりで行くとか、そんなバカな話があるか」


あの人は国王陛下のふりふりのついた襟を掴んで、おどしつけたわ。

今までの六六五人の人たちは、皆自分には特別な力があるのだと思い込んで洞窟に向かい、そして死んだ。

でも、あの人は違った。


「どうしても行けと言うならな。 このへんのやつを全部連れていく。 俺の周りにはこの城で一番強いやつをよこせ。 わかったか? わかったかって言ってんだよ」


「わかった、わかったから放してくれぇ」


あの人は国王陛下を乱暴に投げ捨てた。

そうして、あの人は衛兵たちを引き連れ、私、神官ペトラとドワーフの魔道士ザハロフが脇を固めてゴブリン退治に行くことになった。


「私はエルフの神官ペトラ。傷を癒やしたり、毒を取り除いたりする回復魔法が使えるの。勇者さま、以後お見知り置きを」


「ワシはドワーフの魔道士ザハロフ。ドワーフで魔道士というのは珍しいのじゃが……異世界から来た者にはようわからんかの。このエルフの娘っ子はともかくとして、ワシの攻撃魔法は頼りにしてよいぞ。そういえば、勇者殿の名前もまだ聞いてなかったのう」


あの人はすわった目をしたまま、ざらついた声で喋った。


「俺はカトウだ」


「フォッフォッ、勇者カトー殿、今後ともよろしく」


笑う魔道士ザハロフをよそに、あの人はピクリとも笑わなかった。

あの人、勇者カトーは次に武器や鎧をよこせと王様に迫った。

あの人は並べられた武器の内、装飾の施された細い剣には目をくれず、まっすぐに手斧を掴んだ。


「これなら使い慣れている」


あの人はそう言った。

斧を使い慣れている?

元の世界では木こりでもしていたのかしら、そう私は思ったわ。

その後、あの人は黒い皮の服に、鉄の胸当てをつけた。

そして、鉄兜を被ったの。

目のところだけわずかにあいた、表情の全くわからないあの兜を。

勇者の仮面、なんて今では言われて、お祭りのお面なんかでもあれを模したものが売られているそうね。


でも、あの姿は恐ろしかった。

実際、あの人は、それから狩りに行く魔物たちよりも、ずっと禍々しい何かだったのかもしれない。

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