其の十二
魔王の前に辿り着いたのは私たち幹部四人と九人の一般団員だけだった。
アニセタス、ゴドセ、ガプチーク。
サマスト、タネンバウム、ワイス。
あと、ルケーニ、グリンスパンそしてストラウス。
あらゆる魔物を退けた歴戦の兵。
わたしの、そして勇者の最後の仲間たち。
魔王ワムドは、いかにもといった見た目をしていた。
薄黒く濁った半透明の巨体には、瞬く星の様に紫色の光球が浮かんでいた。
長く突き出した顔面は竜のようでもあり、長い鼻のようにも見えた。
背中の革張りの羽はここが城内でなかったら縦横に羽ばたけるであろうという威容を保っていた。
魔王は気怠そうな声で、人語を発した。
「お前たちは、どうしてここに来た」
虚を突かれたように皆押し黙ってしまった。
勇者だけがざらついた声で返したわ。
「お前がそれを知る必要はない。 間も無く死ぬのだから」
魔王は長い爪でぽりぽりと顔を掻いていた。
「まあいい。 どうせ、余がお前たち人間のたぐいを滅ぼそうとした理由と大して変わりはあるまい」
魔王は玉座のような岩の上からゆっくりと床へと降りた。
「この世界は、お前たちのすなる劇というものに似ている。 割り振られた役柄を闇雲に演じて、出番が終わったら袖に消える。 そして、今日でどちらかが退場するわけだ」
魔王は咆哮すると、笑みを浮かべるように口元を歪めていたわ。
「願わくば、万雷の拍手に包まれて幕を下ろしたいものだな」
そして、長い尾の一撃が私達を襲った。




