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其の一

 「しんぶん? いまはそんなものがあるのね」


私、記者パパラッツォが差し出した弊社の新聞を、そのエルフはしげしげと眺めた。

当代において最も有名なエルフ、勇者の仲間、偉大なる神官ペトラ。

豊満な身体と亜麻色の髪、雪のように白い肌、つぶらな瞳。

その長い耳がなければ、誰もが人間族の若い女性だと思うであろう。

名高い英雄の住む家としてはとても控えめな山奥の庵で、私は神官ペトラに取材をしていた。


「本と何が違うかよくわからないわ。 ダメね。 新しいものにどんどんついていけなくなっている」


ため息をつきながら神官ペトラは新聞を机に置いた。


「……ああ、それで何の話だったかしら」


「ずばり、貴女から見て勇者とはどんな人物だったかについて教えていただきたいのです。 弊社の新聞で大きな掲載枠を取って、連載します」


神官ペトラは私の顔をしばらくじっと見ると、少しの間をおいて口を開いた。


「あなたにとっては、勇者ってどんな人物なのよ」


私はその返しに戸惑いながらも答える。


「魔王を倒した救世主、滅魔騎士団の団長、異世界から召喚された最強の戦士。 そして何より、勇敢なる者、といったところでしょうか」


神官ペトラは私の答えを、心ここに在らずといった様子で聞いていた。

そして、聞き終えるとフッと笑ったのである。


「我々が事績から想像する勇者と、実際は異なる、ということですか」


「……いえ。 あってはいるんだけど、なんだかあの人の事であって、あの人の事でないというか」


神官ペトラは薄く笑っている。


「異様な人だったわ。勇敢ではあったけど、英雄とか正義の味方とか、そういう感じではなかった。 何を考えているかわからなくて、怖いと思うこともあった……でもね」


神官ペトラは、一呼吸間を置いてつぶやいた。


「あの人は最後に、私の前で言ってくれたのよ」


神官ペトラの目はどこか遠いところを見つめていた。


「詳しくお聞かせ願えませんか」


私が記すのは、勇者の仲間のうちで存命する最後の一人、神官ペトラより聞き取った勇者の真実についての物語である。

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