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091_王女に騎士団強化を提案してみた

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 091_王女に騎士団強化を提案してみた

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 翌日、身支度を整えた俺は、アンネリーセとロザリナ、そしてジョジョクを連れて登城した。

 控室に3人を残して、俺は1人で王女の部屋に向かう。相変わらず王女の部屋の前の控室には多くの官僚が順番待ちをしていた。

 俺もこの順番待ちをしなければいけないのかと思うと、辟易する。


「フットシックル男爵様。お入りください」

 あれ、順番待ちはいいのか?

 官僚たちに睨まれながら王女の執務室に入る。俺の意思で順番を抜かししたわけじゃないから、そんなに睨まないでくれ。


「王女殿下。ご無沙汰しております」

 久しくしてなかった貴族の礼。記憶から削除されていた礼の仕方を練習しておいてよかったよ。アンネリーセに指摘されなかったら、貴族の礼なんてしてなかった(笑)


「久しぶりですね、フットシックル男爵」

 王女は化粧で誤魔化しているけど、目の下のクマは健在だ。まだ忙しい日々を送っているようだね。


 さて、この部屋には王女を守るように騎士が詰めているが、その中にあの病んでいる鑑定士がいるんだよね。俺を鑑定しようというのか?

 まあ、鑑定されて困ることはないからいいけどさ。


「本日お呼びしたのは、ダンジョン探索の件です。どの程度進んだかお聞かせ願いますか」

 なんだ、ダンジョン探索のことか。何もしてないのに呼ばれたから、色々自分の行動を振り返っていたんだよ。それならそれと言ってくれればいいのに。


「はい。8階層を踏破し、9階層に入ったところです」

「まあ、もうそんなに探索が進んでいるのですね。フットシックル男爵は優秀だと思っていましたが、わたくしの想像を超える優秀さですね」

 そんなに褒めても何も出ないよ。


 それにどうせ俺が8階層のモンスターの素材を大量に換金したことを聞きつけて呼んだんでしょ。

 王女としても王都ダンジョンの攻略具合は気になるはずだから、それくらいの情報網は張っているはずだ。


「この分ですと、10階層のモンスターを1000体間引くのも、すぐですね」

 いい笑みで問いかけてくるが、すぐかどうかは分からないよ。モンスターもそうだけど、9階層や10階層が探索しにくいフィールドになっていたら進行速度は極端に落ちるからね。


「ご期待に沿えますように、努力します」

 俺も無難な返事ができるようになった。少しは大人になったということかな。


「時に、フットシックル男爵。王都に屋敷を購入したとか」

 耳が早いね。使者が来たから、知っているのは当然か。


「はい。いつまでも公爵様の屋敷にお世話になっているのも心苦しかったので、あばら家を購入しました」

「平民街の屋敷と聞きましたが、わたくしに言ってくだされば屋敷くらい用意しましたものを」

 そんなの絶対に嫌だよ。それにそれをしたら公爵がブツブツ言いそうだし、王女の紐つきなんてごめんだ。


「それに子供たちにゴミ拾いをさせているとか?」

 む、どうしてそれを知っている?


「ゴミを拾った子供に食事を与えていると聞きました。それはどういった思惑なのですか?」

 視線が鋭いぞ。王女でもそんな目をするんだね。


 さて、どう答えるのが吉なのか?

 厭味たらしく王家がしないから、慈善活動をしているとか?

 それとも王都の美化活動?


 まあ、正直に子供に食事を与えるための方便だと言うか。


「王都には食事をまともに摂れない子供が多くおります。その子に食事を与えるのは簡単ですが、それでは何もしなくても食事がもらえると勘違いすることでしょう」

「ですからゴミ拾いをさせて、その報酬として食事を与えていると仰るのですね?」

「そうです」

 王女が顎に手をやって考える素振りを見せた。


「フットシックル男爵。些か王家に対して不敬ですぞ」

 王女の側近のドレンが睨んでくる。いったいどういう意味だ?


「何か失礼なことを言ったでしょうか? 元は平民ですから礼儀を知らないもので、多少のことは大目に見てもらえるとありがたいのですが」

「礼儀作法の話をしているのではないですぞ」

 不敬と言うから礼儀作法のことかと思ってしまったじゃないか。じゃあなんだよ?


「今のフットシックル男爵の話では、子供に食事を与えるのは王家がしないからだと聞こえますぞ」

 なんだそんなことか。王家がそれをしてないのは事実だろ? 言われるのが嫌なら、言われないようにやればいいだけだ。


「ああ、子供の話ですか。何が不敬なのか……私には分かりかねます」

「王家が子供の対策をまったくしていない。そう言っているように聞こえますが?」

 何もしてないとは言ってない。親のいない子供を集めて養育する施設があるのは俺でも知っている。王家か国か知らないが、対策を行っているのは理解している。ただし足りないとは思っているけどね。


「まったくしてないのですか? それはいけませんね」

 いちゃもんをつけられて、それを買ってしまう俺はまだ子供だな……。


「孤児を集めて養育する施設を運営しておりますぞ」

「で?」

「……で、とは?」

「施設があればいいのですか?」

「王家は対策を」

「それで餓死や凍死する子供がゼロになったのですか?」

「いや……それは……」

 言い淀むなよ。あんたがこの話を大げさにしたんだぞ。その責任をとって俺を言い負かしてみろよ。


「別に貴族や王家がなんでもかんでもできるわけがないので、私は何も王家に思うところはないですよ」

 嘘だよ。対策をもう少しがんばってほしいと思ってる。ただしどんな国家でも、できることには限界があることも理解しているつもりだ。

 あんたが大げさにしなければ、王女がスルーして終わっていたんだよ。分かる?


「ですから私の手の届く範囲で子供たちに食事を与えることで、働く意味を教えているだけです。それの何が不敬なのか。それを不敬と言うのであれば、全ての子供を助けてからにしてもらいたいですね」

「ぐっ……」

「フットシックル男爵。その辺りで」

 王女に話が切られた。


「フットシックル男爵は王家の政策から漏れた子供たちに救いの手を差し伸べているだけ。わたくしたちはフットシックル男爵に感謝をすることはあっても、決して文句を言ってはいけませんよ。分かりましたね、ドレン」

「はっ。申しわけなく存じます」

 その謝罪は誰に向けているのか? まあいい、俺だって全員を救えるわけじゃないのだから。


「フットシックル男爵。王家としても多少ですが、資金援助をしましょう」

 大した金額じゃないから別に構わないよ。そこに金を使うなら、もっと良い使い方があるからさ、それに使ってくれないかな。


「王女殿下に1つ提案があります」

「なんでしょうか?」

「これはあくまでも提案ですから、却下されても問題はありません」

「聞きましょう」

「親があろうがなかろうが、貧しい子供を集めて訓練を施してはいかがでしょうか。剣士や槍士、弓士、その他のジョブへの転職条件は、ある程度分かっているのです。探索者を引き抜くのもいいですが、兵士を自前で鍛えたほうが騎士団の強化に繋がると思いますし、勉強ができる子供がいたら官僚にすることもできます」

「魅力的な提案ですが、予算などの問題がありますね」

 さっき資金援助すると言ったじゃん。もっとも俺がやっていることに比べると、かなり多くの資金が必要になると思うけどね。


「別にできなくても私は何も思いません」

 最初から期待しなければ、やらなくても失望することはない。




 ▽▽▽ Sideエルメルダ ▽▽▽


 フットシックル男爵が部屋を出ていったのを見送ったわたくしは、鑑定士のサムダールに視線を向けました。

 この国でだけでなく他の国を含めても最高の鑑定士であるサムダールに鑑定できない人はいません。


 フットシックル男爵には失礼かと思いましたが鑑定させてもらいました。

 彼のジョブは剣豪だと聞いております。実際に彼は剣を使って勇者のアカバ殿らを圧倒しました。


 ジョルズ迷宮―――俗に王都ダンジョンと呼ばれているダンジョンを、短期間で8階層に至っているフットシックル男爵の強さの秘密を知っておくのは、国を率いる者として避けて通れないことです。

 こんなことをしなければいけないなんて、為政者とは因果な立場ですね。


 それにわたくしはフットシックル男爵はユニークスキル持ちだと考えています。いくら剣豪でもこんなに短期間で8階層に至るのは難しいはずです。

 彼の部下が優秀であっても、そんなに簡単に8階層に至るはずはないのです。だからユニークスキルを持っていると、わたくしは考えました。


「どうでしたか?」

「は、はい……」

 サムダールの顔色が良くありません。どうしたというのでしょうか?


「どうしたのです。早く報告を」

「フットシックル男爵のジョブは英雄剣王です」

「英雄……剣王……。間違いないのですね?」

 英雄と名のつくジョブは、勇者と並ぶ最強のジョブです。しかも剣王とつくからには、剣においては右に出る者がいない。そう考えるほどの剣の使い手なのでしょう。


「はい英雄剣王で間違いありません。レベルは35でした」

「レベル35ですか。8階層を踏破するには些かレベルが低いようですね……スキルはどうでしたか? ユニークスキルは持っていましたか?」

「スキルはどれも英雄剣王のものばかりで、ユニークスキルは持っておりませんでした」

「ユニークスキルを持っていない……それは間違いないのですね?」

「何度も確認しました。間違いありません」

 ユニークスキルを持っていると思っていたのですが、わたくしの勘が外れましたか。

 しかしジョブが剣豪ではなく英雄剣王とは。ん、おかしいですね。そんなジョブに転職したのなら、わたくしの耳に入らないはずがないです。

 まさか神殿と何かの繋がりがあるのでしょうか? しかしフットシックル男爵の周囲を探っても神殿との繋がりはまったくありませんでした。


「フットシックル男爵の部下に、神官がいる?」

 思わず声に出てしまいましたが、それこそ神殿が黙っていないはず。神殿で転職する際、神官になった者は強制的に神殿に所属させられます。


 でも神官長騒動のどさくさに紛れて神官が市井に下った可能性はあります。

 もし逃げた神官をフットシックル男爵が匿っていて転職しているのなら、わたくしのところに情報が上がってこないのも納得できます。

 いえ、それではレベルが35もあることが説明できません。あの事件からまだそれほど時間が経っていないのに、レベル35はあり得ないことです。

 では、フットシックル男爵はかなり以前から英雄剣王に転職していたということになります。まさかガルドランド公爵がそれを隠した? 調べなければいけませんね。

 はぁ……問題が次から次へと出てきます。わたくしはいつになったらゆっくり寝ることができるのでしょうか?


 わたくしはフットシックル男爵と友好的につきあいたいのですが、彼は謎が多すぎます。その謎が王家にとって危険ではないと判断できるまでは、警戒を続けなければいけません。摂政なんて、因果な仕事ですわね。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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[気になる点] 国内不正の為に大量誘拐を目論む王家(不正の原因は自分の嫁)な無能王家に敬意を持てという方がおかしいだろ
[一言] 知らないことはあれど、虎の尻尾ならぬ、ドラゴンの尻尾を踏まないようにね。
[良い点] 確かに、知らないことがあれば心配だよねぇ(*´ω`*)
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