069_王都ダンジョン7階層ボス戦
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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069_王都ダンジョン7階層ボス戦
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7階層はレイスの他に、ゾンビとマミーという包帯をグルグル巻きにしたミイラ男(男かは知らんけど)が現れる。単体で現れる時もあるが、多くは5体以上の集団だ。ホラー映画のように通路を埋め尽くすこともある。
レイスは俺とリンが交代で対応。アンネリーセも優先的にレイス対応。ゾンビとマミーは物理攻撃が効くからガンダルバンたちで対処する。
ソリディアが召喚したスケルトンやグール、ゴーストも活躍している。死霊系と死霊系の戦いはちょっと不気味だったが、眷属合成した眷属はどれも強くモンスターを圧倒した。
7階層を進んでいると、前方から探索者の一団がやってきた。15人の集団だ。
探索者はパーティーを組むが、15人のパーティーは初めて見た。
「7階層ともなると、複数のパーティーが合同で探索することもあると聞いたことがあります」
ガンダルバンが警戒しながら小声で教えてくれた。
「通してもらうぞ」
「こっちも通るぞ」
向こうの代表者とガンダルバンが言葉を交わす。
通路の端と端に分かれて通る。広い通路だから、肩がぶつかるなんてことはない。
それでも彼らの臭いが漂ってくる。昔体育の授業で何度か着て汗べっとりの体操服を洗濯するのを忘れて何日も湿ったまま放置したような酷い臭いだ。10メートルくらい離れていても漂ってくるのだから、相当な臭いだと思う。
15人の中には女性も混じっている。この臭いの中に居るのに慣れた感じに見える。
俺たちがこのダンジョンを駆け足で進むと、1階層は1時間くらいでボス部屋まで行ける。2階層は1時間30分、3階層は2時間、4階層は4時間、5階層は5時間、6階層は6時間くらいだ。
これは高レベルの俺たちが最短距離を移動した時間だ。探索しながらモンスターと戦えばそれだけ時間は増えるし、休憩もするから参考にはならないかな。
俺たちのようなレベルになると、低階層なら1日で複数階層を駆け抜けることができるけど、一般的にはしない。走ればそれだけ疲れるからだ。
ダンジョンの中では何があるか分からないから、余力を残して進むのが普通だ。たとえ2階層や3階層のような低階層でも、罠にハマって死ぬことだってあるのだから。
俺たちは疲れたらダンジョンムーヴでダンジョンの1階層へ移動して、ダンジョンの外に出て休むことができる。屋敷に帰って風呂に入って、暖かいベッドで休むことができる。
しかし一般的な探索者は、ダンジョンの中で何日も野営する。そうすると彼らのような臭いがするのは当然なんだろう。
ダンジョンの中では水や食料の補給はできない。モンスターが肉などの食料を落とす場合もあるが、火を通さなければいけないものは食べない。焚火などできないから食べられないのだ。
だから水と食料は、探索する日程分を持ち込まなければいけない。アイテムボックスがあればいいが、そうじゃなければ大きな背負い袋に詰め込んで持ち込む。
アイテムボックスがあっても枠数には制限があるから、なんでもかんでも持ち込めない。必要なものを厳選して持ち込んで、水や食料を消費して空いたスペースにドロップアイテムを入れて持ち帰るのだ。大変だよ。
「あなた、アンネリーセなの!?」
どこかで聞いたようなフレーズだ。向こうのパーティーの女性剣士が声をかけたようだ。
「はい。アンネリーセです。お久しぶりです。シャロンさん」
「あなた呪いが解けたのね。良かったわ」
あのグリッソムという奴がおかしくて、これが仲間だった人の言葉だ。うんうん。
その女性剣士は本当に良かったと言って、パーティーと共に離れていった。彼女の目じりに涙が浮かんでいたし、その雰囲気から本当に心配していたようだ。
「なあ、ガンダルバン」
「なんでしょうか?」
「7階層を15人で探索して、収入は多いのか?」
「7階層に何日も留まってアイテムを回収していれば、そこそこ多いはずです」
多少の余裕を持って、留まれるだけ留まる。持ち帰るアイテムが多ければ多いほど、取り分は多くなる。
ケルニッフィの『バルダーク迷宮』の7階層は、属性リザードのノーマルドロップ品の魔石が1個2万5000グリムで換金できた。
15個持ち帰れば、均等割りで1人当たり2万5000グリムが手に入る。7階層を往復するだけで何日もかかるから、もっと換金額はほしいところだな。半月くらい入っているのかな。あの臭いなら半月以上か。大変だな。
俺は簡単に考えていたが、探索者って過酷な仕事なんだな。あって良かったダンジョンムーヴ。本当にそう思うよ。
死霊系モンスターを屠りながら進んだ俺たちは、変な部屋に出た。
「これはまた……」
ガンダルバンが苦笑している。
その部屋は半分以上は床がない部分がある。直径1メートルくらいの柱がいくつもある。その上を進めというのだろう。クマ獣人で体が大きいガンダルバンは、こういうのは苦手そうだ。
逆に得意なのはネコ獣人のリンでピョンピョンと柱の上を移動していった。
俺はアンネリーセを抱っこしながら、柱の上を移動した。俺には暗殺者のスキル・立体機動があるから、最悪は空中に足場をつくることができる。気楽なものだ。
7階層のボス部屋に到着した俺たちは少し休憩してから入った。
「うわー、バイ●ハザードだ」
「何か仰いましたか?」
俺の呟きにアンネリーセが首を傾げる。
「いや、なんでもないよ」
さて、モンスターはざっと数えて30体ほど。1体1体は大したことないけど、これだけの数を捌くのは面倒くさい。
「トーイ様。ここは私に任せていただけますか」
アンネリーセが胸を張った。その際に胸がプルンプルン揺れる。眼福だ。拝んでおこう。
「それじゃあアンネリーセに任せようかな。進化したジョブの威力を見せてもらうよ」
「はい。ありがとうございます」
杖を掲げたアンネリーセから魔力の奔流が発せられ、彼女を幻想的に包み込む。
「綺麗だ……」
心の底からの言葉だ。
魔力の光も美しいが、何よりもアンネリーセが美しい。
「サークルサンダー」
愛の賢者にジョブが進化した時に覚えた、スキル・魔法創造で創ったサークルサンダーだ。
閃光が迸り、雷鳴轟く。
無数の雷が複数の敵を穿つ。
雷から発せられた衝撃波が俺たちを貫いていく。すごい迫力だが、威力はもっと凄い。
「うへー、ほぼ壊滅かよ……」
「愛の賢者に進化したら、魔法の威力が数段上がりました」
良い笑みだ。モンスターのほとんどは、その笑みを浮かべるアンネリーセが蹂躙した。笑みと、やったことが合ってないんですけど。
「それじゃあ俺も行ってくるよ」
「はい。お気をつけて」
すでにガンダルバンたちが残ったモンスターに攻撃を開始している。
残ったモンスターはデュラハンが1体とハイレイスが3体。デュラハンがボスの中のリーダーのようで、一番レベルが高い38だ。
この王都の『ジョルズ迷宮』はケルニッフィの『バルダーク迷宮』よりもややレベルが高い。7階層のボスのレベルを比べると、『バルダーク迷宮』のライトリザードLv35に比べて3レベル高い38になっている。レアボスのダークリザードでもレベルは37だから、それよりも高い。
俺とリンでハイレイスを1体ずつ受け持つ。デュラハンはガンダルバンたちが殴っているが、盾と剣で攻撃をいなされている。かなりの腕前だ。
さらにロザリナの攻撃が当たると硬質な音がする。拳を壊さないか心配になる。
「せいっ」
ミスリルの両手剣を振る。ハイレイスはゆらゆらしていて動きが緩慢に見えるけど意外と速い。まさか躱されるとは思ってなかった。
黒い霧が伸びてくる。これに触られると、痺れることがある。
「セイントアタック」
後方に飛んで聖魔法のセイントアタックを放つ。聖なる光に貫かれたハイレイスが断末魔の叫び声を残して消えていく。
元々アンネリーセのサークルサンダーに貫かれていたから、1発で倒せてしまった。
同じ頃合いでリンのほうもハイレイスを倒し、俺たちはデュラハンの攻撃に参加する。
俺の攻撃は盾で受けられてしまったが、リンの聖槍の攻撃は嫌がって距離を取られた。
「リン。かましてやれ」
「はい」
リンを主とする攻撃を組み立てる。聖槍を異様に警戒してくれるおかげで、俺たちの攻撃は当てやすくなった。
リンが引きつけてくれるから、俺たちはスキルを発動させてデュラハンに叩き込む。
怒ったデュラハンがコマのように回り、俺たちを剣と盾で攻撃する。
「うぉぉぉっ」
ガンダルバンがスキル・鉄壁を発動させて、デュラハンの動きを止めた。
「これで最後だ、セイントクロス!」
聖魔法のセイントクロスがデュラハンの胴体に吸い込まれる。刹那、デュラハンの胴体から聖なる光が飛び出し、無残に破壊した。
消滅したデュラハンは、盾を残した。どうやらこれがドロップアイテムのようだ。
他にも全モンスターがアイテムを落としたが、その中に金属の塊もあった。この金属はどのモンスターが落としたか分からない。そもそも金属を落とすモンスターは居なかったはずだ。これが噂に聞くハイレアドロップか!
正式にはハイレアドロップアイテム。不特定のモンスターから極極極稀にイレギュラーなアイテムがドロップする。魔導書もその1つだと言われている。
・デスナイトシールド : DEF+35 VIT+5 MIN+10 盾術発動時即死攻撃が10パーセントの確率で発動する HP自動回復(低) 自動修復(低) 耐久値100/100
・ゴルモディア : ミスリルより硬く、劣化に強い金属。
すでに俺がエンチャントしたディフェンスシールドがあるんだが、デスナイトシールドのほうが面白い。能力も悪くないし、何よりも即死攻撃があるのがいい。発動率10パーセントは低いが、それをメインに考える必要はないから、ガンダルバンに装備させよう。
「デスナイトシールドはガンダルバンが使ってくれ」
「ありがとうございます」
さて、このゴルモディアはバッカスに頼んで剣を打ってもらおうかな。ドワーフだけあってバッカスのジョブは鍛冶の匠だった。ただの酒好きのおっさんではないのだ。
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