表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/152

049_精霊の力

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

 ■■■■■■■■■■

 049_精霊の力

 ■■■■■■■■■■



 ガンダルバンとアンネリーセの説教の後、2人の立ち合いの下で精霊は何ができるのか検証することになった。

 精霊を詳細鑑定すると、こうなる。



 ▼ 詳細鑑定結果 ▼


 ・下級茨精霊Lv20 : 固有名称はない。トーイ=フットシックルの契約精霊。召喚、送還できる。送還時は元々住んでいた場所で過ごす。能力は次の通り。植物を操り、成長させる。精霊憑依して使役者を強化できる。



 植物でも茨の精霊だったようだ。あのつるを見たら、バラ系の植物なのは納得だな。

 そんなわけで能力検証は、植物を育てるところを見せてもらう。


 と思ったんだが、下級茨精霊が自力で出せるのは茨のみ。だから植物の種を色々購入することにした。

 こういう時は、なんでも揃うゴルテオ商店が便利です!


「これはこれは、トーイ様。ようこそおいでくださいました」

「ゴルテオさん。お久しぶりです」

 貴族になった後、ゴルテオさんのところで使用人の服やガンダルバンたちの鎧や武器など色々購入させてもらっている。

 モンダルクの話では、酒や食料、その他色々なものをここで購入しているとのこと。ちょっとしたお得意様になっている。


「今日は植物の種とか苗などを見に来ました」

「植物の種ですか? たしか今回の悪魔騒動でも大活躍され勲章を授与されると聞いております。領地でも下賜されたのですか?」

 さすがは大商人。耳がよろしいようで。


「いやいやいや。家庭菜園でもしようかと思っているだけです」

「家庭菜園ですか……?」

 あまり深く考えないでくださいと言い、種のある場所に連れていってもらう。


「聞いておりますよ、アンネリーセのこと」

 歩いていると、ゴルテオさんがそう切り出してきた。


「アンネリーセは悪魔の撃退に大活躍してくれましたから。そのご褒美だと公爵様が仰ってくださいました」

「それはようございました。こちらが植物関連のものを扱うエリアです。ごゆっくり見て行ってください」

 棚が区切られ、種や球根などが置いてある。苗はないか。


「おお、そうでした。トーイ様は例の話を聞きましたか?」

 例の話? なんのことだ? 自慢じゃないが、こちとら噂話に敏感じゃないんだ。


「いえ、どういった話ですか?」

 ガンダルバンたちに買い物を任せて、俺はゴルテオさんの話を聞こう。どんな噂なんだろうか。


「勇者の話です」

 そう言えば、あいつらもこの国に居たんだったな。

 バルカンのしごきを受けている時に、騎士や兵士が噂話をしていたのを聞いた。あいつらはこの国の王都で召喚されたらしい。


「勇者相手に商売でもしましたか?」

「ははは。その逆ですよ。勇者がうちの王都の店にやって来て、魔剣を献上しろと言ったらしいです」

「はぁ?」

 魔剣ってあの数百万グリルするやつだろ。それを献上? バカじゃないのか? いや、あいつらはバカだった。少なくともクズだ。


「それで魔剣を献上したのですか?」

「もちろん、丁重にお断りしました」

 ゴルテオさんは笑みを浮かべているが、目が笑ってない。


「勇者シンジ様のパーティーがダンジョンに入り始め、1カ月半以上経過していますが、全然探索が進んでいないそうです。なんでもダンジョンに入り始めて1週間で14人だったパーティーは4つに分裂したそうです」

 この世界の1週間は6日、1カ月は5週間30日、1年は12カ月。


 それはともかく、仲間割れしたんだな。

 元々全員が自己主張が強く、協調性がない奴らだった。異世界に来てジョブを得たことで、シンジの腕力に対抗できるようになって空中分解したってところだろう。


「シンジ様をはじめ、元パーティーメンバーの方々はダンジョン探索が進まず、荒れているとか。おかげでうちの店にやって来て魔剣を出せという始末です」

 勇者ならスキル・聖剣召喚が使えるんじゃないか。勇者の名を騙る他の奴かもしれないけどさ。


「進んでないと言うと?」

「シンジ様のパーティーは、ダンジョン探索を始めてすぐに3階層まで到達したようですが、今も3階層止まりだとか」

 3階層でくすぶっているわけか。あいつらの性格じゃあ、苛立っているだろうな。


「シンジ様のパーティーでないパーティーのほうは、順調らしいですよ。そちらのパーティーはしっかり訓練を積んでからダンジョンに入ったようで、今は5階層を探索しているとか」

 シンジの取り巻きじゃなかった奴らの集まりだな。あいつらは俺がシンジたちに暴力を受けていても止めようともしなかった。俺もあいつらに頼ろうと思っていなかったから構わないが、だからと言って応援する気はない。


「そうそう。生産系ジョブの方々は素晴らしい成長を見せているとか。熟練とまではいかないものの、最近は良いものを作っておいでのようです」

 たしか生産系ジョブの奴は6人だったか。誰が戦闘系ジョブで誰が生産系ジョブか知らないが、せいぜいがんばってくれ。俺は応援しないが、お前らが活躍することをこの国の人たちは願っているはずだ。


 そう言えば、彼女もこっちに来ているんだろうな。イツクシマさんだけは俺を気遣ってくれた。彼女には無事に過ごしてもらいたい。あとの奴らはどーでもいい。


「面白い話を聞かせてもらいました。ありがとうございます」

「いえいえ。こんな噂話ならどこでも聞けますから」


 ガンダルバンたちのほうも買い物が終わったようだからお暇する。

 色々あったから、全部買ったらしい。兵士4人で担げる量は持ち帰り、後はゴルテオ商会が屋敷まで届けてくれることになっている。

 アイテムボックスを使えば全部持ち帰れるけど、さすがにここでは使えない。


「今日はありがとうございました。また、戦功をお立てになり、本当におめでとうございました」

 店を出る時にゴルテオさんに丁寧に送り出してもらった。また買いにきますから、よろしくです。





 屋敷に帰って、さっそく下級茨精霊の能力検証を始める。


「これらの種を蒔けばいいのか?」

 庭の空いているとこに、種を蒔けと下級茨精霊はジェスチャーで伝えて来る。


 豆の一種だと思う種を10粒ほど手に取って植えようとしたら、下級茨精霊はばら撒けばいいと伝えてきた。

「本当にばら撒けばいいのか?」

 ふよふよ上下する。


「ご主人様。私が」

 アンネリーセがやると言うので頼んだ。

 綺麗な所作で種を撒くアンネリーセ。何をやっても絵になるね。


「よし。下級茨精霊。豆を成長させてくれ」

 上下して了承の意を表現。


 種を蒔いた辺りの上をひゅーっと飛び回ると、鱗粉のような光の粉が地面に落ちていく。それは種に纏わりつくようにコーティングした。


 ん? これは……俺の中から何かが抜けていく感覚がしたからステータスを確認すると、MPが減っていくのが分かった。

 どうやら植物を成長させるのには、俺のMPを消費するようだ。


 地面に落ちている種から芽がでてきて、どんどん大きく育っていく。

「おおお」

「凄いです」


 ニョキニョキと大きくなって、青々とした葉をつけ、さらに枯れていく。

「ゴゴップです」

 ゴゴップという豆らしい。大豆に似ているが、大豆よりちょっと小ぶりの豆だ。


 20個ほどの種を成長させたが、消費MP量は大したことない。これなら10倍でも問題なく成長させられる。この屋敷の食料なら軽く賄えそうだ。


「収穫します」

 アンネリーセが腕まくりして、農機具を持つ。


「どうやるんだ?」

 自慢ではないが、俺は都会っ子だ。農業なんてテレビで田植えをしているところを見たことがあるくらいだ。


「私にお任せください。幼い時は両親の手伝いで農作業をしていましたから」

 元村人のアンネリーセの親は農家らしい。手際よくゴゴップを収穫していく。


 しかしこんな寒い日に、耕してもない地面からゴゴップが収穫できるのか。食料チートだな、これ。


「ゴゴップはこんな冬に収穫できるのか?」

「だいたい9の月の後半から10の月にかけて収穫できたはずです。冬に収穫できる野菜や穀物は少ないですよ」

 俺の常識と同じだ。普通はできないことも、精霊の力があればできるわけか。しかも下級精霊でさえこれだけのことができる。


 メインジョブをエンチャンターにしサブジョブを暗殺者にしている俺のMPは460ポイントあるが、今回の20粒のゴゴップを刈り取れるまでに20ポイントしか消費してない。

 1粒から数十、数百のゴゴップが収穫できるが、消費MPはたったの1ポイントということになる。精霊はパナい。


 ガンダルバンとアンネリーセが説教するだけのことはあるということか。2人が言うように、人前で見せるものではないな。


「てか、下級茨精霊じゃあ言いにくいな。名前つけていいか?」

 いいらしい。


「それじゃあローズで」

 イバラもバラと言うくらいだから、ローズでいいよな。


 なんか嬉しそうに大きく動いている。気に入ってくれたようだ。良かった、良かった。


 

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


また、『ブックマーク』と『いいね』をよろしくです。


気に入った! もっと読みたい! と思いましたら評価してください。

下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。

『★★★★★』ならやる気が出ます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★★★ 2023年7月25日 ★★★
★★ 小説1巻発売予定! ★★
★ https://mfbooks.jp/product/kakuretensei/322303001895.html ★

小説家になろう 勝手にランキング

↓↓↓
こちらもお楽しみください
↓↓↓
マイホーム・マイライフ【普通の加護でも積もれば山(チート)となる】
― 新着の感想 ―
[気になる点] 生産系チートって感じだけど戦闘ではどうなんだ?茨のムチで攻撃してくれるのか?
[良い点] 名前をつけましたね? そのうちバラの似合う妖艶なおねいさんが訪ねて来たりするんじゃないかな! え、ローズさんとおっしゃる?
[一言] これは自家消費だけにしておかないと不審がられる案件 冬でも夏野菜など食べているの見られたら確実に怪しまれる
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ