142_不穏な空気
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この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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142_不穏な空気
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神殿との関係は悪くなっていく一方だ。俺が神殿建設に協力できないと返事をしたためだが、あからさまに嫌がらせをしてくるのはどうかと思う。
神殿の嫌がらせは、フットシックル子爵領内の転職や治療の代金(お布施という名目)を五倍に上げてきたのだ。
元々安くない金額だったが、10万グリル(100万円相当)はないわー。
「いや~、清々しいほどクズだな~」
腕を頭の後ろで組み、椅子の背もたれに体重をかけて呆れる。
「ローラ。箱モノは準備できているんだよね?」
「はい。問題なく用意できております」
「バナージ。例の件を実行に移すから、伝達を頼むよ」
「承知しました」
計画を実行に移すように指示を出すと、バナージは厳しい顔をして執務室を出ていった。これからは神殿と正面を切って対抗することになる。緊張するなというほうが無理か。
現在のフットシックル子爵領には、人口1万人を超える町(地域)が5カ所ある。
ボーズンが3万8355人(周辺5村含む)、アゴラが3万5689人(周辺6村含む)、テンザンが2万7412人(周辺3村含む)、イフィーナが1万6732人(周辺3村含む)、そしてトリアンジュが2万5238人(周辺3村含む)になっている。
広大な領地をこの5地区に分け管理しているのだが、その多くで王家と公爵家からやってきた文官が働いてくれている。
フットシックル子爵家としてはトリアンジュだけで手いっぱいだから、ほぼ丸投げ状態だ。
さて、トリアンジュの人口より多い都市が3カ所も増えたが、そのうちの1カ所―――最も人口の多いボーズンに神殿があって幅を利かせている。
うちと王家と公爵家が多くの神官を育てているのはまだ知られてないが、そろそろ計画を実行に移す時期にきているということなのだろう。
神殿がわざわざ敵対行為をしているのだ、こちらが遠慮する必要はなくなった。
バナージに王家と公爵家にいってもらい、計画を実行すると伝えてきてもらう。
そして各神殿にコーガの忍者たちを送り込む。同時にジョブ・探索者を各ダンジョンに送っておく。
探索者ギルドがスズカダンジョンのある洞窟内に建物を建築していたのだが、財力があるおかげか建物がすぐにできてしまった。
うちはヤマトとイツクシマさんのおかげで、コンクリートブロックを使って兵の詰所を建設したが、探索者ギルドのほうは完全な人海戦術だ。大量の職人と運搬人を雇って、突貫工事でやり遂げたのだ。
どうもこういったノウハウが探索者ギルドにはあるみたいで、かなりスムーズに建設した。
探索者ギルドが木材を大量に消費してくれたことと、探索者が増えると見込んで数軒の宿やその他の店の建設が始まったことで、トリアンジュは好景気に沸いている。建設ラッシュだ。
今後人口はもっと増えるだろう。だからトリアンジュの町からスズカダンジョンへの道を整備し、区画整備を行っている。忙しくて目が回りそうだ。
神殿よりももっと重大な問題がある。
トリアンジュでは海に近いほど井戸を掘っても塩水しかでないのだ。今まではまだ良かったが、この先人口が増えていくと明らかに水不足になる。
だから、塩水を真水にろ過する施設を建設することにした。水問題は都市化するトリアンジュにとって、最大の問題点になってしまった。
「ヤマト。ろ過装置のほうはどうなんだ?」
「問題ないよ。そもそもろ過装置の構造は大して難しいものではないからね。それよりもメンテナンスをしやすくするほうが面倒だったよ」
面倒なメンテナンスをできるだけ簡単にし、頻度を少なくできるような改良をしてもらった。俺は言うだけだから簡単だけど、ヤマトは大変だ。
町の発展を考えると、あれが必要、これも必要、それもとなってきりがない。本当に大変だよ。
もうすぐ年末。オーダ王国でも南にある俺の領地は、北の地域に比べれば大した寒さではない。それでも寒さが一層増している。
寒さが増すと、干しビュシュターヌがいい感じに引き締まって熟成していく。スズカ山脈から海へ抜ける、スズカおろしが干しビュシュターヌを乾燥させるのにいいみたいだ。
年が明けると、王都で国王に新年の挨拶が行われる季節になる。
あっちこっちの貴族が自領を離れて王都へ向かうが、俺はギリギリまでトリアンジュにいるつもりだ。というか、一瞬で王都に移動できる以上、地上を移動なんてしたくない。
最初はダミー行列を仕立てようかと思ったが、他の貴族に挨拶する際に俺がいないといけなく、それならダミーの意味がないから止めた。
ジョブ・探索者が公にできればいいのだが、最近は色々と問題があることに気づいた。
ジョブ・探索者はスキル・ダンジョンムーヴでダンジョン間の移動ができるのだ。つまり、ダンジョンムーヴで軍隊も移動ができてしまう。そうなると、防衛の面で問題が起きるのは当然のことだ。
だから、ジョブ・探索者の有用性が広く知られる前に、うちの探索者たちを各ダンジョンに送っている。これで、どのダンジョンにも一瞬で移動が可能になる。
ジョブ・探索者の取得条件はダンジョンの10階層のボス討伐という無理ゲーのようなものだけど、もう一つ条件がある。ダンジョン探索初日に単独でモンスターを20体倒すことだ。
こういった条件のため、今まで誰も探索者の存在を知らなかったようだ。もしくは探索者というジョブがあることを知っていても、取得条件を知らなかったか。
正直言って、こんな条件の探索者になるのは、不可能に近い。
俺は王都ダンジョンの10階層に入ってモンスターを狩ったが、ダブルジョブがある俺でさえ厳しいところだった。それなのにボスを討伐とか、命がいくつあっても足りない条件だ。王都ダンジョンは他のダンジョンに比べて難易度が高いということだが、それでも10階層というのは簡単に到達できる場所じゃない。
また、もう1つの取得条件の『初めて入った時に20体を単独討伐する』というのも、一般的には難しい。どちらかと言えば、こちらのほうが取得条件のハードルは低いが、難題なのは変わらない。そもそもそれを意識してダンジョンに入らないと、取得ができないものだ。
王女がこのことを知ったら、国内外のダンジョンに探索者を送り込んで、その都市の防衛網を無効化するかもしれない。
聞くところによれば、ダンジョンの多くは首都や大都市にある。裏を返すとダンジョンがある場所に都市を築いたわけだ。そんなダンジョンからいきなり軍隊が現れたら、防ぎようがないだろう。
しれーっと外国のダンジョンに探索者を送り込んでしまえば、色々と悪さができるからね。
俺は国内にあるダンジョンに、探索者を送っている。悪さをしようとかではなく、何かの時に移動ができるようにね。その何かが何かは俺にも分からないけど。
話は逸れたが、そもそも道を整備すれば少しは移動が楽になるのだ。
「もっと道を整備して、自動車でも走らせてくれたらな~」
「それこそ軍事を含めて大きな変化になるよ」
ヤマトに言われるまでもなく、分かっていることだ。
「でもさー。うちの領内だけでも道を整備したほうがいいと思わないか?」
「道の整備はいいけど、自動車は考え物だね」
「自動車じゃなくても、振動の少ない馬車を作ってくれ」
「まあ、そのくらいなら、そんなに時間はかからないよ」
サスペンションがどうのとかヤマトは言うが、俺はあまり詳しい話は分からない。なんでヤマトはこんなに色々と知っているんだろうか。
「お前、なんでそんなに色々知っているんだ?」
「え、普通じゃない?」
「俺が普通じゃないと言いたいのかよ?」
「異世界転移はラノベ読者の憧れだからね。備えておくのは当然じゃないかな」
「………」
どうやらライトノベルというジャンルの小説で得た知識らしい。そんな知識でここまで詳しい知識を得られるものかね?
オタクという言葉で済ませてしまっていいのだろうか? しかし、よくも異世界転生に備えたな、お前。その考えに俺は脱帽だよ。
「もっと魔法使いが多くいたらいいのに」
そうすれば土魔法で道の整備をしてやるのにさ。今の数ではそうはいかないもんな。
「魔法使いじゃないけど、なんとかなるかも」
「それはどういう?」
ヤマトがニタリと笑う。気持ち悪いから止めろよ。
「今、イツクシマさんがあれを作っているじゃないか」
「あれ……ああ、あれか!?」
スズカダンジョンで手に入る魔法石を錬金術で加工している。試作はほぼ成功しているらしい。
錬金術を使わなくてもマジックアイテムにすることはできるが、それだと威力に問題があるらしい。だからよいものを作るために錬金術で加工してもらっているんだ。
「イツクシマさんはもう少しでできると思うと言っていたよ」
「了解。道の整備に関してはそれを待とう」
ある日のことだ、ソドンがしょんぼりして現れた。
「ツクマンデス侯爵の屋敷に入れなくなったんだよ」
「ん、ソドンでも入れないくらい気配感知に長けた奴がいるのか?」
そんな奴がいたら、うちにスカウトしたいくらいだ。何せ、ソドンが本気で気配を消したら、俺でも感知が難しいからな。
「違うだよ。屋敷に入ろうとしても、入れないんだよ。何か見えない壁があるようなんだよ」
「つまり、結界のようなものがあるというのか?」
「結界か何かは分からないだよ。でも何かがあるだよ」
ツクマンデス侯爵がうちの小麦と塩の不買を、各貴族に働きかけているのは知っている。
俺が探っているのに感づいたか? ソドンが何かヘマをしたとは思えないが……?
しかし結界のような何かか。面倒な。
「ソドンはしばらく休んでくれ。働きづめだったから、丁度いいだろう」
「オラ、平気だよ」
「いいんだよ。少しは休め」
後のことはコーガたちに任せよう。ソドンでも入れない何かがあるなら、人海戦術でツクマンデス侯爵の屋敷を見張るくらいしかできないからな。
▽▽▽ Side エルメルダ王女 ▽▽▽
「それはどういうことですか?」
「はっ、サダオ=ツチイ、ハヤテ=ウチダ、そしてシンジ=アカバの奴隷三勇者がダンジョンから帰ってきません」
「同行した者たちは?」
「同様に帰っておりません」
ダンジョン内で全滅したということでしょうか。
「アカバ殿らは、たしか6階層のボスに挑戦すると聞いていましたが、間違いないですか?」
「はっ。間違いありません」
3名は奴隷のため命令された範囲の動きしかできませんが、それは人に危害を加えないという最低限のものだったはず。モンスター相手なら、十全にその能力を発揮できるはずです。
そのおかげで6階層のボスに挑むくらいに探索が進んでいました。それなのに全滅ですか……。
魔法使いと斥候、そして運搬人の3名と、奴隷とはいえ勇者が3名、戦闘力は相当なもののはず。これで全滅したとなれば、諦めるしかないのでしょう。ですが、どんなモンスターに負けたのでしょうか。そこが気になります。
「調査を行いますか?」
今は神殿とツクマンデス侯爵が不穏な動きをしています。特にツクマンデス侯爵は数日前に当主が死亡し、その子が家を継いだばかり。しかも当主の死因は病死とのことですが、殺しても死にそうになかった侯爵がいきなり死んだとなると、不穏なものを感じずにはいられません。
本当はダンジョンに精鋭を送って調査したいですが、ツクマンデス侯爵家に何かあると思うと時期的に無理なのです。
「6階層を調査できる者は限られています。今は大事な時期です。残念ではありますが、全滅ということで処理をしてください」
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
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来週の更新できるかは……。
ガクガク( ;∀;)ブルブル
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