137_ラノベのタイトル
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この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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137_ラノベのタイトル
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夜中、俺はトリアンジュの外れの荒れ地にやってきた。アンネリーセとリン、数人の護衛だけしかいない。
腰に佩いている黒斬を抜き振りかぶる。
「はぁぁぁっ!」
斬撃が飛び、荒れた地面に一筋の傷を残す。それを4回繰り返し、2メートルおきに4本の傷痕ができた。
アイテムボックスから木箱を出す。その中にはクルミのような硬い種が入っている。
皆で手分けし、地面についた傷に沿って等間隔に種を置き、土を被せて埋めていく。
「ローズ頼む」
レベルが上がったローズは光の塊なのだが、ぼんやりと人型を模った光を放っている。
もっとレベルが上がると、ちゃんとした人型になると詳細鑑定が教えてくれた。最近、レベル上げとは無縁だから、どこかで上げられたらいいな。
詳細鑑定も熟練度が上がって色々と教えてくれることが増えた。
その中には、ジョブの暗殺者と転生勇者、英雄剣王、神速の英雄、報恩聖者で犯罪を犯してもジョブが盗賊にならないという情報もあった。
おそらく赤葉たちが罪を犯してもジョブが盗賊にならなかったのは、勇者だからじゃないかな。今度あいつらを見たら確認しておこう。あまり会いたい奴らではないけど。
ジョブのことは今はいい。それよりも今はローズが育ててくれた植物だ。
グングンと大きくなっていき、立派な木になった。そして枝に赤い実が生った。
「この実が食べられるのですか」
アンネリーセはこの赤い実が渋いと知っているようで、不思議そうに見ている。
「ああ、そのままでは食べられないけど、ちゃんと食べられるようになるよ」
この木々はビュシュターヌ。トリアンジュ沖にある名もない島に生えている植物で、漁師に頼んで実を採取してきてもらった。
赤い実はそのままでは渋くて食えたものではないが、干し柿のようにすれば美味しく食べられるんだよ、これ。
「明日、お義母さんたちに頼んで、実を収穫してもらおうか」
1つの木におよそ200個の実が生っている。それが100本あるから、収穫には人手が要る。
翌朝、マルハレータさんとリリス、そして2人が面倒を見ている子供たちを総動員して、実を収穫してもらった。もちろんマルハレータさんが面倒を見ている支配奴隷の少年たちもだ。
収穫した実は2万個を少し超えた。
イツクシマさんが干し柿を作ったことがあるというので、収穫した実を熟成させる行程をお任せした。マルハレータさんたちの先生として皆を指導してもらっている。
俺も詳細鑑定が教えてくれた熟成方法を文字に起こして渡している。細かいところが干し柿とは違うから、詳細鑑定の情報を優先してもらうことにしている。
冬を越して春になると、食べごろになるらしいから楽しみだ。もちろん、食べられるようになるまでに、それなりの手間がかかる。それはマルハレータさんたちがやってくれることになった。
ちなみにローズでは干し柿のような熟成はできない。どうしても人の手をかける必要があるのだ。
まずは2万個の生産だが、これを売ってみて反応がよければ、生産量を増やそうと思っている。
これが上手くいけば、子供や更生した少年犯罪者たちの働き場になるかもと期待している。
イツクシマさんが山に自生している植物を見たいというので、スズカ山脈に向かうことになった。
冬には冬の野草があり、山には季節折々の野草が自生している可能性がある。そういったことを長期的に調べるのが、イツクシマさんは楽しいようだ。
旧パルトン領の割譲を受け、スズカ山脈の全てがフットシックル子爵領になった。スズカ山脈に自生している植物は、うちが自由にできる。
俺、イツクシマさん、アンネリーセ、リン、近衛兵10人で山に入った。今日はアンネリーセがいるから、リンの近衛隊が護衛だね。
前回、ダイゴウたちに襲われた時とは違う場所から入って、山頂を目指す。
イツクシマさんは目新しい植物があると観察してノートにメモを取っていく。学生の頃も真面目でマメだったけど、こっちでもそれは健在だ。
イツクシマさんのノートをそっと覗いたけど、細かい文字でびっしりと情報が記入されていた。意外といったら失礼だが、絵がかなり上手い。
「へー、分かりやすいノートだね」
「あまり見ないで。恥ずかしいから」
ノートをパタンッとたたんで頬を染めた。
「面白そうな植物はあった?」
「うん。面白そうなものができそうな気がするわ」
「それは良かった」
イツクシマさんのペースで山を登る。
俺も適当に山の中を詳細鑑定していく。イツクシマさんと違う観点から見ているつもりだけど、特に目新しいものは……ん?
あった。昔の石垣かな。草や木に埋もれてしまっているが、人工的に石を積んだ跡がある。
「昔の砦か城の跡かな?」
イツクシマさんもそう思うようだが、何か違和感がある。
この違和感はなんだ?
「なんか日本の城の石垣ににているね」
「それだ!」
イツクシマさんの言うように、石垣が妙に日本っぽい。
こっちの城や城壁は大きな石を積み上げているのが多いが、目の前にある石垣は10から30センチメートルくらいまでの不揃いな石を積み上げている。
もちろん、前世の城もこういった石垣ばかりではないけど、妙に似ているんだ。
昔この世界にやってきた異世界人が造ったのか、それともまったく関係ないのか。ちょっと興味が湧いた。
石垣のそばには土塁と空堀と思われる山と溝がある。高低差は10メートルくらいか。こうやってちゃんと観察すると、なかなか堅牢な感じだ。
1メートルくらいの石垣に飛び上がり、アンネリーセの手を取り引き上げる。
石垣は東西300メートルくらい続いていて、その当時の建物の跡もあった。家は木造だったようで、すでに朽ちて原型をとどめてない。
「トーイ様。あれを」
アンネリーセが何かを見つけ指差した。しなやかな指の先には、穴があった。
塹壕のようなものかと、中を覗く。真っ暗だが、サブジョブを暗殺者にしたら視界は開けた。
「とりあえず洞窟か坑道跡って感じだな」
入口は人工的に補強された痕跡がある。
「中に入ってみるから、アンネリーセはここで待っていて」
「私も一緒に」
そんなことを言われると、嫌とは言えない。
彼女の手を取って足元や頭上に注意しながら入っていく。
「ライト」
アンネリーセが魔法で視界を確保する。
木で組んだ補強の名残がある。完全に人工的な穴だ。
いくつかの部屋を探索したが、お宝はない。そこまで期待してないが、こういった遺跡(?)探索は楽しい。
さらに奥へと向かうと、床に直径2メートルほどの大きな穴が開いていた。
穴を覗き込む……。
「は?」
「どうかしましたか?」
「ちょっと意外なものがいたよ」
「意外? なんでしょうか……え?」
アンネリーセも穴を覗き込んで唖然とした。
穴の先は広大な空間が広がっている。そこに……。
「あれはモンスターではないですか?」
「ああ、間違いなくモンスターだ」
モンスターはダンジョンに住む生き物だ。つまりここはダンジョン。いや、壁や床を詳細鑑定で確認したが、『スズカ山脈の廃坑』と出る。ダンジョンのダの字もない。
とはいえ、十数メートル下には多くのモンスターがいる。
「一度出て、しっかりとした調査隊を組織しよう」
今はこの廃坑がダンジョンなのか分からない。多分違う。詳細鑑定嘘つかない。
ダンジョンにはダンジョンに繋がる出入口がある。禍々しい渦の出入口だ。それを俺たちは通った記憶がない。
うちの裏山にダンジョンがありました!
ラノベのタイトルになりそうなシチュエーションだ。
洞窟から出た俺たちは、リンたちと合流した。
洞窟の中にモンスターがうようよいると言うと、目の色が変わった。
「すぐに屋敷へ戻りましょう」
野草のスケッチに夢中だったイツクシマさんが、リンの声に反応して立ち上がってこちらを見た。
「どうかしたの?」
「この奥にモンスターの住む洞窟があるんだ」
「え、本当に? 面白そうね。いってみましょうよ」
イツクシマさんはアクティブだった。
ヤマトならすぐに帰ろうと言うだろう。
ガンダルバンが30人の配下を連れてやってきた。
モンスターの姿を見て、驚いている。
「本当にモンスターですな」
「ああ、間違いなくモンスターだ」
「しかしダンジョンに入った認識はございませんぞ」
「ああ、ここはダンジョンじゃない」
「つまり……」
「この先にダンジョンがあって、モンスターはそこから溢れ出ていると考えるべきだろう」
俺がこの世界に召喚―――実際には転生したのは、王都ダンジョンのモンスターが溢れ出しそうだったからだ。
「まさかこの奥にダンジョンの出入口が?」
「あると思うべきだろうな」
「これは大変なことですぞ」
ダンジョンからモンスターが溢れ出ているんだから、大変なことだ。
これを放置すると、この穴から這い上がって来ないとも限らない。そんなことになったら、領民に被害が出るだろう。
「すぐにモンスターを駆除し、ダンジョンを正常な状態に戻さないといけないだろう」
「すでにこれだけのモンスターが溢れ出しておりますれば、簡単なことではないですぞ」
「簡単でなくてもやらなければいけない。命がけだぞ」
穴の下の広い空間を埋め尽くすくらいのモンスターがすでに放出されている。手を打つのは、早い方がいい。
眼下で蠢くモンスターは、レベル10から20台くらいが多い。
この空間がどこまで続いているか分からないが、もっと高レベルのモンスターもいるだろう。気を引き締めて対処しないと、大変なことになる。
洞窟の前で会議を開く。ガンダルバンが進行役だ。
「まずは洞窟内の穴を補強。これは魔法使いにやってもらいます」
床に空いた直径2メートルくらいの穴が崩れないとは限らないから、これは大事なことだ。
「承知しました」
魔法部隊長のソリディアが頷く。彼女の指揮下にある土魔法が使える魔法使いに、穴の補強をしてもらう。
「次は穴付近のモンスターを駆除します。これはジョジョクの部隊にやってもらう」
「はっ!」
突撃部隊の面目躍如を期待しているよ。
「入口付近のモンスターを駆除した後は、洞窟内に橋頭堡を築きます。これは運搬人が石や木材を運び込み、出入口の確保を行います」
「それは俺が指揮をします」
バースが指揮を執る。
非常事態ということで、フットシックル子爵家の全戦力を動員する。
パルトン家が攻めてきたなど、これに比べればそよ風が吹いたくらいの衝撃でしかない。
「バナージには王都へ行ってもらう。王家に今回の経緯を報告してくれ」
「ダンジョンについてはどのように?」
「現状、ダンジョンはまだ確認できていない。調査中とだけ報告してくれ」
「承知しました」
バナージへの指示をし、俺は全員の顔を順に見ていく。
「今回のことはフットシックル子爵家の存亡をかけるくらいの覚悟を持って対処する。そのつもりでことに当たってくれ」
「「「はっ!」」」
直ちに皆が動き出す。
洞窟がどれほど広大なのか、ダンジョンはあるのか、モンスターの強さはどうなのか、心配事は尽きない。だけど本当にダンジョンがあれば、不謹慎かもしれないがそれはそれで嬉しいかもしれない。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
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次の更新は12日の予定です。




