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097_ヤマト

★★★ 2023年7月25日 小説1巻発売予定! ★★★

★★★ Amazonなどで予約受付中 ★★★


 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。


 四章、見切り発車! (((o(*゜▽゜*)o)))

 ■■■■■■■■■■

 097_ヤマト

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 僕は藤原大和(ふじわらやまと)

 今、僕はとても不思議な体験をしている。


 お爺さんの姿の神様が言うんだ。僕が異世界に召喚されることになったって。

 ははは。笑える。僕が召喚? しかもクラスメイトたちと? あんなクズたちと一緒に別の世界に飛ばされて肩を寄せ合って生きていけと? 冗談言わないでほしい。


 僕を勇者にだって? 僕に人助けをしろ? なんで僕がそんなことをしなければいけないの?

 そもそも異世界の人間が僕たちを呼びだす理由は何? 魔王でもいるの? は? ダンジョンからモンスターが溢れ出しそうだから、僕たちに駆除してほしいって? そんなもの自分たちでなんとかしてほしいよ。


 ねえ、聞いていい? この召喚は拒否できるの? へー、できるんだ。

 どうしようかな……。


 いいよ、召喚に応じるよ。でもさ、僕は生産職でいいよ。便利な道具が作れる生産職にしてくれるかな。

 勇者? なんで僕が戦わないといけないの? 僕に争いは無理。

 大嫌いなあいつたちと召喚されるのは嫌だけど、退屈なこの世界に残るよりはいい。

 物語のようなチートの力はなくてもいい。生きていけるだけの力があればいいんだ。力があっても慎重じゃなければいけないと思うから。最悪は異世界の実力者に取り入って生きていくさ。

 だからこれから行く世界で生きていくだけの、知恵を生かせる職にしてほしい。


「………」

 僕は異世界に召喚された。

 笑ってしまいそうになったけど、あの赤葉たちが勇者だ。あの神様も冗談が過ぎる。精神崩壊しそうなくらい笑ったよ。涙がちょちょ切れるよ、ホント。


 そして僕たちのクラスは35人だったはずだけど、ここには34人しかいない。

 僕以外に召喚を拒否できることに思い至ったクラスメイトが居たのかもしれない。それとももっと別な方法でこの世界にやって来ているのかな?

 クズは全ていたから、そうか藤井君が拒否したんだ。あのクズたちと一緒なら拒否するのも頷けるね。


 僕のジョブはアイテム生産師。

 赤葉たちは生産職をバカにしていたけど、僕の望み通りのジョブにしてくれた神様には一定の感謝をしたい。


 この世界での僕は、アイテム生産師のヤマト=フジワラ。

 この国の王女は僕のような生産職は、ダンジョンに入らなくてもいいと言った。自立できるようになるまで、城で面倒を見るとも。ラノベの悪役王女のように、悪い王女ではないようだ。性格はややキツそうだけど、人柄は悪くないと思う。

 勇者召喚も僕たちが同意して召喚されているのだから、拉致にもならない。そういった選択肢があることを王女が知っているのかは分からないけどね。


 僕たち生産職が城から出る際は、必ず護衛がつく。それだけ危険がある世界なんだと思うけど、護衛と一緒だと息が詰まる。あの人たち視線が鋭く、怖いんだよね。

 早く自分で自分の身を護れるくらいになりたいものだ。幸いなことに僕たち召喚された人にはユニークスキルというものがある。


 僕のユニークスキルは、生産の極意というものだ。

 このユニークスキルはジョブがアイテム生産師限定のユニークスキルで、材料は必要になるけどイメージしたアイテムを生産できるというとてもいいスキルだ。


 ただ材料を入手するのに、城の人に頼まなければいけない。どういったアイテムを作るから、こういう材料がほしいとね。

 これが意外と厄介で、僕は材料を少しずつ多めに頼んで余った材料で僕のためのものを作るという面倒なことをしていた。簡単に言うと、ちょろまかしていたわけ。


 僕が試行錯誤してアイテムを作っていたら、赤葉グループが分裂したのを知った。この世界は赤葉の父親の威光が届かないから、三下たちが調子に乗って赤葉から離れたようだ。まあ、彼らがどうなろうと僕にはどうでもいいことだね。


 それよりも気になるのは厳島さんだ。彼女は毎日朝早くから夜遅くまで錬金術で何かを作っている。彼女を見ていると、鬼気迫るものがある。

 クズの多かったクラスメイトの中で、彼女はまともな人だった。そういった人が毎日疲れた顔を隠しもせずに必死に錬金術に没頭している。

 それほど錬金術が楽しいのかと思ったけど、どうもそういった雰囲気ではない。そこで気づいたのが、僕たちのクラスメイトの中で1人だけ召喚されなかった藤井君の存在だ。


 彼の名前はたしか藤井雄二だったと思う。赤葉に逆らって、赤葉たちから酷い嫌がらせを受けていた生徒だ。厳島さんは藤井君のことが気になっていた。それは彼女の行動を見ていれば分かる。その藤井君と離れ離れになった彼女は、藤井君を探そうとしているのかもしれない。


 藤井君がこの世界に召喚されていない可能性は十分にあるが、彼女はそうは思っていないようだ。ちょっと情緒が不安定なところから、彼女の藤井君に対する気持ちが窺い知れてしまう。

 彼女は危うい。他のクラスメイトたちならそのまま放置するけど、彼女に悪感情はない。腐ったリンゴの中にあって唯一綺麗に熟成したリンゴのような彼女を、僕は見守ろうと思う。


 さて、僕たちが研鑽の日々を送っていると、どこかの都市に悪魔が現れて誰かが討伐したという話を聞いた。その人が王都で褒美をもらうそうだ。

 僕たちもその式に出席した。そして僕は驚いた。

 僕たちの前に現れたトーイ=フットシックルという少女のような容姿の彼は、僕たちのクラスメイトで唯一行方が分かっていない藤井君だと僕は考えた。


 その理由はいくつかあるけど、トーイって藤井ってことだよね。それにフットシックルは『鎌足』つまり中臣鎌足や藤原鎌足と言われる人物のことを表していると思う。

 中臣鎌足は藤原家の隆盛を築いた歴史上の人物で、僕はその藤原の血を引いている。おそらく藤井という姓は藤原の傍流なんだと思う。その証拠に彼は紋章に藤を使っていた。藤原一族の家紋に藤が多く使われるのは有名だ。……よね?


 しかし顔がまったく違う。彼は召喚(転移)ではなく転生してしまったのかもしれない。だから僕たちと違う場所へ送られたのだろう。

 さすがに想像が飛躍していると思ったけど、赤葉たちへの対応を見たら彼が藤井君だと確信に近い考えに至った。


 僕はすぐに動いた。彼と一緒にいたらこの城に居るよりは居心地がいいんじゃないかな。城の人は僕たちを大事にしてくれるけど、それがどうも居心地の悪さに繋がるんだ。

 彼と交渉して、僕がこれまでに作って隠していたアイテムを対価に、この城から出してもらおうと思う。


 僕はトーイ君の庇護を得ることができた。彼は簡単にOKしてくれた。アイテムを出さなくてもOKだと言ってくれた。

 彼は交渉が下手だと思う。お兄さん、ちょっと心配になったよ。僕が導いてあげよう! なんちゃって。


 王女のエルメルダさんは、ダンジョンの魔物の駆除をトーイ君がすることで、僕と厳島さんをトーイ君の家に置くことを認めた。あの王女様は状況を冷静に判断できる強かなところがある。僕たちをダシにしてトーイ君を上手く使おうと思ったようだ。


 トーイ君は彼の上司の公爵の屋敷の離れに住んでいた。大きな屋敷だ。

 僕はゆっくりと今後のことを考えることにした。厳島さんは彼のそばに居ることで精神的に安定しているから、もう見守る必要はないだろう。


 なんとトーイ君はジョブを自由に変えることができるらしい。しかもジョブを二つセットできるんだって。何そのチート!

 羨ましいと思うけど、そういうのは面倒も多く転がり込んでくる主人公補正があるから要らないや。


 僕はアイテム生産師で楽しくアイテムを作って自由に暮らせればそれでいい。そのためには良い素材を集める必要がある。だからトーイ君にダンジョン内で良い素材が手に入ったら僕に譲ってほしいと頼んだ。


 彼は「ちゃんと金を払えよ」と言ったが、拒否はしなかった。そうこうしていたら、貴族や官僚の腐敗だとかアンネリーセさんに呪いをかけたクズをぶっ飛ばすための活動がメインになってしまい、ダンジョン探索はあまりしていない。それでも9層へ至っているのだから、本当にチートだね。


 しかしアンネリーセさんのような綺麗で優しい人に呪いをかけて老婆にするとか、赤の他人の僕でもクズだと思うようなことをしたグリッソムに腹が立った。


 そしたら王女さんがトーイ君を利用して腐った貴族や官僚の排除に乗り出して、かなり風通しがよくなった。彼女も強かな女性だね。

 最後には悪魔に憑りつかれたグリッソムを討伐する大活躍を見せたトーイ君は、王女さんから褒美をもらうことになったんだけど、そのことで僕たちに相談があると皆が集められた。


「王女は俺を陞爵させて子爵にしたいようだ。俺は貴族に大した魅力を感じていないが、俺が陞爵することで皆の身分というか立場が上がる。男爵よりも子爵の家臣というほうが、ステータスシンボルになるだろう。そこでガンダルバン。お前はどう思う? 俺に気兼ねすることはない。思うところを言ってくれ」


 指名されたガンダルバンさんが立ち上がった。彼はクマの獣人なだけあって大柄な人で、トーイ君のパーティーのタンク(防御)を務めている重要な人物になる。家臣の中では最も立場が上の騎士長で、トーイ君の家臣や仲間の要と言うべき人物だ。


 

★★★ 2023年7月25日 小説1巻発売予定! ★★★

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これからも本作品をよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
ヤマト個人視点の話から入ったのは面白いと思いました。 王女がトーイを使ってじゃなくて、トーイが王女を使ってなんだけど、第三者視点からだと、そう見えるんですねー 実は神の選択肢は、藤原一族の血が成せる話…
[気になる点] 拒否権の確認や勇者ではなく生産職を選択するあたり、ヤマトは思慮深いし自分の性格をよく分かってるな まあ、そこはかとなくウザさが滲み出てるけど…… それはそれとして、美人女神じゃなくて…
[良い点] ヤマトいいキャラだなぁ
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