57. St.Iridescent
「――初めまして。いや、『久しぶり』と言った方が正しいか?」
そこはまるで孤独を形にしたような場所だった。
垢抜けた様子の木造の床材は、古ぼけてはいるが、埃ひとつない清潔さに保たれており、視界の奥では季節外れにも煉瓦製の暖炉がパチパチと音を立てている。
インヘルの意識の眼前に座していたのは、既視感のあるプラチナブロンド。どんな財貨を積み上げても我が物とすることが出来なさそうな、ゴールデンセクションの美貌と、どこか空虚な雰囲気と非現実感を併せ持つ、幻覚の中で出会った女性だった。
彼女の口調はやや高圧的だが、その不快さを補って余りある気品と純潔があるように思える。インヘルは現状に対する疑問を吐き出そうとしたが、声を上げることも、視線を動かしたり、まばたきをするようなことも許されていないかのように、身体が硬直して動かない。
自らの内側から響くはずの心臓の鼓動や呼吸音すら聞こえず、自身の命がいま、本当に生きているかどうかすら疑わしいような機能不全に至っていることだけを理解した。
「私の名前は◼️◼️◼️◼️……チッ。まだ名前は口に出せないか。やはり私のことは、貴様が自らの力で思い出すしかないようだ。私の蒔いた種だな」
彼女が自分の名前を告げようとしたところ、その部分に言葉を逆再生したかのような不可解なぼやけが生じてしまい、インヘルはそれを聞き取ることが出来なかった。
ブロンドの女性は不機嫌に舌打ちをしながら、出す言葉を選択するかのように一考した後、見えない規則に抵触しないような口ぶりで話し出す。
「今、貴様は動くことすら出来ないだろうが……それは自分の状態を知らないからだ。私からしてみれば、確かにその様子で動くとは思えないような見目をしている。故に、これから呟くのは私の独り言だ」
女は魔力の質を感じる白い前掛けを揺らしながら、ゆっくりと立ち上がり、視線すら固定されたインヘルを観察するかのように顔を近付けた。
「貴様は器が弱い。此度は敵が強力であり、やむなく再生能力の扱い方を教えたが……多用しないことだ。それは命を削る。今の貴様は、命が魂に何とかしがみついているだけの、成れ果てた残骸のようなもの。肉体は治ろうとも過剰使用を続ければ、貴様を繋ぎ止めている『糸』は摩耗し、やがて途切れる」
要は再生能力の過負荷には危険が付き纏うということ。
今回、インヘルがその身体に異常を来しておらずとも意識を失ったのは、魂が大きく擦り減ってしまったからだ。肉体を治す魔法はあれど、失ってしまった魂を取り戻す魔法など存在しない。
死者蘇生が成立しないのは、肉体と化学反応と電気信号以外に、魂という代替不可能な構成要素が有るからだ。
仮に死者を呼び戻そうとしても、それは中身が空洞の「肉の入れ物」であり、他者からの入力が無ければ出力しない機械のようなもの。
そのような機械は人間とは呼べない。
「一度につき4〜5秒。長くて10秒の再生強化が線引きだ。それを今回は連続15分以上の稼働……そんな無茶をすれば倒れもする。同じ手は使わないようにしろ。次に同じことをすれば……魂が擦り減って死んでもおかしくない」
女は人差し指をインヘルの額に当てながら、そう宣告する。
インヘルは頷くことも、反論することも出来ず、ただ「独り言」を聞き入れるしかなかった。
「いずれ私についての記憶も取り戻せる時が来る。或いは、手掛かりは既に貴様のすぐ近くに有るか。……故に最後の魔女よ。探し求めろ。その眼窩の奥底を。それだけが、歪んだ摂理と忘却を弔う標べとなるのだ」
黄金のような彼女はそのままインヘルの額を軽く押しのけるようにして突き放すと、インヘルの景色は逆さまになった。しかしそこに浮遊感などの実感は存在せず、ただ無感覚のまま、底の無い場所へと落ちていく景色が視界いっぱいに広がった。
「また会おう」
インヘルの全身は明らかに床より低い位置に落下して行き、段々と女の影と、正体不明の部屋の景色は遠ざかり――暗転した。
◆ ◆ ◆
明滅。
どうやらインヘルは、夢から覚めたようだ。微睡みの中で瞼の裏側を見つめるが、外界の光は惰眠を許してはくれなかった。
頭はまだぼんやりとしていたが、条件反射のように体を起こす。
辺りを見回してみると、ベッドの隣に座っていたのは、顔全体を覆うようなマスクをした医者だった。どうやらその人物は、何の前触れもなくインヘルが目覚めたことにまだ頭の整理がついていないかのように、彼女の顔を見つめていた。
しかしすぐに慌ただしく立ち上がると、部屋の隅にあった設置式魔力通信機に駆け寄り、部屋番号とインヘルの名前を口にする。
「……!」
インヘルはズキズキと痛む頭を押さえながら、自分が何故この部屋に居るのかということに関する記憶の混濁を徐々に回復させていった。
アーテローヤルで「逢魔」ビナー・ハイドランと壮絶な争いを繰り広げた記憶。そしてその余りにもあっけない顛末。ラストラリーとハートショットを守りきれなかった無力感。
それらの悪感情がなだれ込んで来るような感覚に目眩と吐き気を覚えたが、右の眼球に強く手を押し当てるようにしながら切歯することにより、一時的に嫌悪を飲み込んだ。
「(ラストラリー……ハートショット……そうだ。アイツらは……?)」
そう思い立ち再度周囲を見渡してみるも、どうやらこの部屋は特別な病室のようで、インヘルと、彼女の経過観察を任されていた医師以外は、窓も無い窮屈な無菌室が広がっているだけであった。
「ゲホッ……ゲホッ……!」
2人の居場所を尋ねようと、連絡を終え、栄養剤の用意を始めていたマスクの人物に声を掛けようとしたが、長い間言葉を発していなかったらしく、声帯が萎縮しきっていたインヘルは咳込んでしまった。
何度か喉を鳴らし、調子を整えていたところで、その病室の頑丈そうな扉が、物凄い勢いで開かれる。
「おお〜! 本当に意識が回復してるねぇ! ん? 栄養剤かい? あー、後はアタシがやっとくから、ほら貴方は医学室に戻った戻った!」
妙に頭に響く喧しい声だと感じたが、それもそのはず。
突然病室に乱入してきたその女は、経過観察の医師のようなマスクをしていなかった。彼女の声はくぐもらず、空気を揺らしてダイレクトに鼓膜へと届いてくる。
ただ、どうやらその身なりや言葉遣いからして、相当特別な立場に居る人物であることは容易に想像がついた。
ハーフアップの短髪は玉虫色とでも呼ぶべき不思議な色合いを醸している。
そしてインヘルと目を合わせたとき、彼女の虹彩は光の当たる角度によって黄色にも青にも見え、吸い込まれそうな煌めきを宿していた。
彼女――シャプワは、そそくさと忙しない動きでマスクを付けた医師を部屋から追い出すと、椅子の背もたれを前にするような形に方向転換させ、そこに肘を掛けながら、聖女らしからぬ振る舞いで目を覚ましたインヘルを見つめた。
「おはよう。2週間くらい眠りこけてたわね」
「……お前は?」
「アタシはシャプワ。急患の貴女たちを任された回復魔法使いよ。聖女の方が分かりやすいかしら」
「聖女……?」
「あれまぁ、狩人には無神論者が多いって本当なのね〜。いつもは求めてもないのに手を合わせられたりするんだけど……そういう反応は新鮮だわ」
韋駄天のような登場の反面、朗らかに語りかけるシャプワの空気に飲まれていたインヘルは、ここでようやくラストラリーとハートショットのことを思い出し、狼狽し始める。
「私の他に2人、負傷者が居たはずだ……! アイツらは……!?」
「……」
シャプワはその質問を受けると、努めて明るく振る舞っていた表情を唐突に真顔に変化させ、さっきまでまじまじと見つめていたはずのインヘルから視線を逸らした。
それはインヘルに最悪の報せを予感させる。彼女は呼吸を震わせ、居ても立ってもいられず、裸足のまま強引に立ち上がった。
「何処だ……!」
焦燥を孕んでいるインヘルの表情を見たシャプワは、恐る恐る口を開く。
「子供と白髪の患者よね。廊下を出て左、突き当たりの部屋よ……運ばれてきた時にはもう、既に手遅れの状態で――」
「ッ……!」
言葉の先を待たずして、インヘルは駆け出した。
願わくばその突き当たりの部屋が、遺体安置所ではないことを渇望しながら、病み上がりとは思えない速度で通りがかる医者たちの間をすり抜けるように躱す、人目を気にしないほどの決死の疾走。
やがてそこに辿り着いたインヘルは、シャプワの入室の勢いが可愛く見えるほどの勢いで、「571号室」という札が掲げられた部屋に飛び込んだ。
「ラストラリー!! ハートショット!!」
そんな彼女の目の前に広がった光景は――
「んえ? ……あっ、ママ」
「病院ですよインヘル先輩。そんな怒鳴らないでくださいって」
「やっと起きたのかいインヘル? このボクがお見舞いに来てやったよ。感謝したまえ」
病室中央の卓を挟んで、貸出されたトランプゲームに興じるラストラリーとハートショット、そして見たこともないような格調高い服装をしたレイジィの姿だった。
負傷した2人はインヘルと同様、病衣姿ではあったが、外傷の痕などは一切見られず、健康体そのものに見える。
しばらくその状況に整理がつかず、キョトンとした表情で硬直するインヘルの背中を軽く触れるようにしてポンと叩いたのは、走り出した彼女の後ろを余裕綽々のスローペースで追って来たシャプワであった。その手には調合途中であった栄養剤と乳鉢を持っていた。
インヘルは尚も疑問符を浮かべたまま、ゆっくりと隣に立った聖女の横顔に視線を向ける。
「手遅れの状態だったわよ。まっ、アタシが治癒しなきゃだけど。超焦っちゃって……可愛いトコあるじゃない! んははは!」
「(コイツ……!!)」
「ほい、ボクあがり〜。昨日から15連勝だねぇ」
「ん〜……こっち!」
「ぬわああああああ! 何でババ引かないんですかァ!?」
「顔に出てるから」
「ハーティさんって分かりやすいね」
ようやく自分が一杯食わされたことを解したインヘルは、悪戯好きの子供のように無邪気に笑うシャプワ対する憤りと、無駄に目立つような真似をしてしまったという気分に満たされる。
「真剣に言うと、後遺症が無いって訳じゃないわよ。ハートショットさんは右目は無事だったけど、左目の表面を削られててね。心筋と感覚器官の不全は時間が掛かるの。暫くボヤけて見えると思うわ」
「……それでもああやってババ抜き出来るくらいには回復したのか」
「YES! まあ、アタシにとって何より嬉しいのは――」
急に疲れがぶり返したインヘルに対して、シャプワはババ抜きをしていた3人の中の1人、レイジィに視線を向けると、我慢していた表情を綻ばせるようにして笑顔を浮かべる。
それに気が付いたレイジィは背筋に寒気を感じた。彼女が聖女シャプワに会いたくなかったのは、ここに理由がある。
「レーーーーーイジィーーーー! 結構長く泊まってるってことは、もう合意って事よね!? あーもう決めましたー、アタシはレイジィに大人のキスをしまーす。ちゅっちゅっ!!」
先程まで知的さと「只者じゃない感」を振り撒いていたシャプワは、すぐさま顔を緩ませると、瞬間移動とも見紛う猛烈なダッシュでレイジィに接近し、そのひどく残念な部分を露わにさせた。
レイジィは大層迷惑そうに、ハグというかベアハッグをかましながら接吻を迫るシャプワの顔面を、両腕を使って本気で押さえ付ける。
「うっ……ぐぐぐ……! おいインヘル! 君の回復が遅れるから、このトンマに頭下げて滞在させてもらったんだ! その結果がコレだよ……! 責任を取りたま……え、ちょっ、力強い……ヤメロォ! 唇をタコみたいにニュッとさせるな!」
「アンタが出て行ったから『姉』を遂行出来なかったんですぅ〜! 栄養補給よ! どうせまたすぐにアタシを捨てるんでしょ!? ゆえに静脈から、種々の成分を吸い上げてやるわ!」
「のわぁぁぁぁぁ!?」
「また始まりましたね」
「うん……もう4日連続でこんな感じだね……」
今世紀最大のスキャンダルにでもなりそうな光景を、ハートショットとラストラリーは呆れた様子で眺めていた。どうやらレイジィとシャプワは顔を合わせる度、恒常的にこんな状態になるらしい。
「……姉?」
ほっぺたから何かを吸収されながらげっそりとするレイジィを横目に、インヘルはシャプワの「姉」という言葉に反応した。ハートショットはそれに補足を加えるようにして口を挟む。
「聖女シャプワ・モントーバン。公爵家次女。特司枢機卿。回復魔法の天才……で、レイジィ先輩の、血縁上の姉らしいですよ。私も初めて聞いたときはチビりました」
「こ、公爵家? 公爵って……えっと……公爵ってコトだろ? ってことは……公爵じゃねぇか……!」
「先輩。落ち着いてください」
狩人からしてみれば……というより大衆からしてみれば、公爵家など「一生に一度は顔を見られたら良いな」くらいの、さながら御伽噺の一節に登場するような幻の生物だ。
その血縁者が、あろうことか身近な場所に居た。その事実は冷静なインヘルすらをも錯乱の渦に叩き込むのに十分な衝撃だった。
「あと、これもレイジィ先輩から聞いたんですが……モントーバン家の7人姉妹は皆揃ってイカれてるとか」
「レイジィさん、家族のこと『頭のネジが飛んでる』とか言ってたしね」
「長女が騎士団長で、次女は聖女で、三女は文化勲章叙勲者で、四女はシンクタンクで、五女は魔獣総研会長で、六女はレイジィ先輩で、七女は可愛いらしいです」
「……これ以上起きがけの私の脳を酷使させるんじゃねぇ」
インヘルは額に手の甲を当てると、足に力が入らなくなったかのようにして壁に体重を預けた。それは情報過多のせいかと思われたが、実際は抜群の体調不良がそうさせていたのだ。
それを見抜いたシャプワはレイジィの拘束を解き、「おっといけない」と両手に持っていた薬剤の調合セットを卓の上に置いた。
シャプワは手早く薬草を固めた簡単な丸薬のようなものを完成させると、肩で息をするインヘルの顔を強引に上げさせ、それを彼女の口に強引に捩じ込んだ。
「むぐッ……!?」
「噛むとクソ苦いわよ。いつもなら飴玉みたいにコーティングするんだけど、そんな手間をかける時間も惜しいからね」
噛まずとも口いっぱいに広がる薬草特有の鋭い苦味と、ケミカルな香りがインヘルの顔を曇らせる。それが極力口腔内に滞在する時間を短縮すべく、インヘルは丸薬を口に放り込まれた勢いのままに飲み込んだ。
「再生能力見せてもらったわよ。注射針が皮下組織に埋もれる危険性もあったし、みすみす栄養補給の点滴も出来やしない。……ってかそもそも、アナタの体に薬って効くの? 体液が一滴も無かったんだけど」
「……分かんねぇよ。病気になった事ねェしな」
「その顔を見るに、味覚はあるのよね。ということは食事は摂れる。消化は? 排泄は? 子供とか出来るのかしらン?」
「お姉様」
そう言いながら迫り来るシャプワに若干のレイジィの面影を感じていると、周囲の景色が見えなくなる一歩手前であった彼女を呼び止めたのは、他でもないその妹だった。
不意の呼び掛けにシャプワはぴくりと肩を反応させると、眉を上げて、おどけたような表情でレイジィに顔を向ける。聖女の妹の顔は真剣だった。ここへきてシャプワは、ようやく自分が「今はあまり触れるべきではない部分」に片足を突っ込んでいたことに気付き、演技じみた素振りでインヘルに詰め寄っていた足を止める。
「あ〜……そうね。今は休んで、英気を養ってもらうのが良いわ。ほらっ! 2人の快復も目の当たりにしたところだし、自分の病室に帰った帰った!」
「……そうする」
シャプワが踏みとどまり、インヘルが項垂れた様子で病室から去って行ったのを見て、まず最初に安心したかのようにほっと息を吐き出したのは、ラストラリーだった。
次にレイジィが、しゃんと伸ばしていた背筋を丸めて頬杖をつく。シャプワは申し訳なさそうに頭を掻いていた。
「お姉様は相変わらず、人の身体には詳しいけど、心の方は専門外なんだねぇ」
「ソーソーリー。返す言葉も無いわ〜」
「……ママ、落ち込んでたね」
「そりゃあ……そうですよ。私たちが助かったって事は、インヘル先輩はビナーさんを……」
この場にいる全員が何処となく、インヘルは「無敵」だという感覚を持っていたが、今の時間でその考えを改める必要があることが判明した。
彼女は確かに弱っていた。体の面でもそうだが、特に内面は、彼女たちには想像もつかないほどボロボロになっている可能性もある。レイジィが姉を諌めたのは、「今は放っといてやれ」というメッセージだ。
事情を知っているラストラリーとハートショットも、知己であるレイジィも、ほぼ初対面のシャプワも……誰もが今のインヘルにかけるべき言葉を持ち合わせていない。
彼女の表情にはただひたすらに重苦しい影が差し、先行きの不安を掻き立てるような雫で、全身を満たしているようだった。
「……とりあえず、ババ抜きでもしましょうか!」
それを振り解くように、ハートショットは空気の入れ替えを提案した。レイジィたちも最初はキョトンとしていたが、結局インヘルの問題を解決してくれるのは「インヘル自身」と「時間」の2つだけだ。
そんな結論に至った面々は、引き絞っていた表情を撓ませると、肩の力を抜いた。
「お姉様も一緒にどう?」
「ほう? 良いでしょう……諸君らは『挑む側』に回ることになるがなぁ……!」
「私は早急に15連敗の汚名を濯ぎたいです」
「ん……私も頑張る……!」
「聖女様」
ふと、病室の入り口からシャプワを呼び止める荘厳な女性の声が響いた。その正体は扶翼室のエキスパルテ――パパラチアだった。彼女の穏やかな微笑を目の当たりにしたシャプワは体を硬直させた。
時折笑顔の方が怖い人物というのは居るが、パパラチアはまさにそれだった。
「非常に『お喧しい』ところ申し訳ありません。急患ですわ」
「ぱ、パパラチアさん……いやっ、あのっ……急患だけじゃなくてアタシにも偶には休暇を……」
「命が天秤にかけられないから、私たちが居るのですよ?」
「ご――」
有無を言わさぬ態度で、パパラチアはシャプワの首根っこをむんずと引っ掴み、御年51歳とは到底思えぬ腕力で、彼女の体を引きずって病室の外へ出た。それはまさに「連行」とでも表現すべき光景だった。
「ご無体なぁぁぁぁぁ!?」
「参りましょう。せっかく游魂院に立ち寄ったのですから、溜まっていた仕事分は働いてもらわなければ」
「妹との再会ですよ!?」
「ええ、良かったですね。重症患者とも再会できますわよ」
「嫌だ〜〜! 助けてレイジ――」
救助を求め終える寸前で、病室の扉がバタンと閉められた。
「……」
「……」
「……カード配るよー」
「はーい」「負けませんからね」
台風のように過ぎ去った時間はまるで存在しなかったように扱われ、とうとう部屋に残された3人は、ババ抜きを再開するのであった。
投稿遅れました、三章です。たぶんレイジィが主役です。




