39.Call of Atonement
魔女を捕縛した際の対応は、魔獣を狩ったときのそれよりも少しばかり面倒な手続きがある。
エリートの魔法使いたちが集まる騎士団魔法隊には「抗魔石」と呼ばれる、魔力を封じる特殊素材で出来た錠を取り扱う許しが出ているが、逸れ者とされる狩人たちがそれを保有することは出来ない。
そのため最も警戒をすべきなのは、狩人から騎士団に魔女の身柄を引き渡すまでの間だ。戦闘力を有した人員が常に見張り、厳重な拘束を施しておく必要がある。
「……あ、先輩。おはようございます。通信魔法で近辺の騎士団を呼びましたよ。到着は夕暮れ時になるみたいです」
別々の部屋を借り、それぞれが朝食を済ませたところでインヘル、ラストラリー、ハートショットの3人は合流した。2人が怪我をしてあまり動けないハートショットの部屋に入って行く。
インヘルが軽く手を上げて挨拶を済ませると、左腕にきゅっと抱きつくラストラリーもぺこりと可愛らしくお辞儀をした。そして2人は近くにあった椅子を手繰り寄せると、もどかしそうに胡座をかく怪我人の、ベッドの隣へと腰を据える。
ぼろぼろになった服は一旦修繕に預け、インヘルとハートショットは光沢のあるサテンの寝間着を借りている。そんなインヘルの姿を見て、ハートショットは意味も無く感心したような顔を一瞬浮かべた。
「ご苦労さん。昨日の夜から街の自警団とビナーが交代で見張りをやってたみたいだぜ。アイツ、帰れてねぇんだってよ」
「恐ろしいくらい仕事人ですよね。いつ寝てるんでしょう?」
「しばらく特別休暇を貰ったらしいんだが……」
「でもママ、さっき会ったよね。起こしに来てくれた」
ラストラリーのその言葉に、インヘルは「そうなんだよな」と悩むように両腕を組む。心配と言うよりも、それを遥かに通り越して、自分たちが自堕落なんじゃないかと疑ってしまう仕事ぶりだ。
ハートショットも思わず動揺し、腕と肋骨が折れてても出来ることは無いかと考え始めたが、この惨状では何を手伝ってもかえって迷惑になることを察したようで、お手上げとも言いたげに再びベッドに倒れ込む。
「あの人、何人も居るんですかね〜」
「阿呆か。あんなのが何人も居たら人類が職を失くすわ」
「ビナーさんが作ったお料理も、美味しかったね」
部屋で食べた朝食の内容を思い出しながら、ラストラリーは笑顔でそう呟く。献立は白パンに煮野菜にポタージュ、そしてスパイスの効いた焼き魚だった。
特に魚料理は海が近いということもあり新鮮だった。本来であれば保存に金がかかり、内陸部ではなかなか食べることができない珍品である。
「えっ!? ご飯もビナーさんが作ってたんですか!?」
「私、厨房に入ってくとこ見たよ」
「狩人は他の使用人にゃあんま歓迎されてないみたいだからな。多分、私たちの分はビナーが作ってたんだろ」
ハートショットはついに驚愕の表情を隠せなくなり、あんぐりと口を空けていた。暫くすると折れていない方の手を顎に当て、珍しく真剣に何かを考え始める。
「……あの人、うちのチームハウスで雇えませんかね。割とマジで欲しいです」
言葉通り、その表情はかなり本気で考えている様子だ。
しかしインヘルは現実がよく見えているようで、ため息混じりに答える。
「アイツの労働時間に見合った給料とか払えねぇよ。喧嘩ばっか得意なブルーカラーの詰所みたいな所だぜ?」
「パラノイヤさん言ってた……カツカツだって」
「カツカツ」などという言葉を子供が口走るくらいには切羽詰まっているようだ。ダメで元々な提案だったが、やはり現実的ではないことを理解したハートショットは「ですよね〜」と不貞腐れたようにベッドの上でごろごろと転がろうとする。
途中で肋骨が痛み、「ウッ!」とうめき声を上げてからはすぐに大人しくなったが。
「レイジィの奴が殆ど働かないからな。部屋に篭って本ばっか読んでやがる。そして誰も金を出していないのに何故か増えてく蔵書。アレは一体何処からやって来たのだろうか……」
「怖い話ですか!? やめて下さい! 聞きませんよ!」
「(た、確かに怖い話かも……)」
質の良い紙はかなりの高級品だ。それを贅沢に使った本を大量に保有し、読書を趣味とすることなど、本来であれば上流階級だけに許された嗜みであるはず。
そんな本という資産が狩人たちのチームハウスに置いてあるという時点でそれはもう異常事態だ。インヘルはレイジィが非合法な何かを咎められる事態に陥ったとしても、とりあえず知らないフリをする予定でいる。
「ふふっ」
「……えっ?」「ん?」
そんな他愛もない話をする中で笑みをこぼしたインヘルを見て、ラストラリーもハートショットも思わず彼女の顔を凝視し、硬直する。ハートショットに至っては驚きのあまり、横になっていた身体まで思わず起こしていた。
そんな風に、突然2人にじっと見つめられたインヘルは少し戸惑いながら首を傾げる。
「……あ? 顔に何か付いてるか?」
「ママが……」
「笑っ、た……?」
インヘルはきょとんとした表情のまま、自身の顔に右手を当てる。意識しないまま、何の前触れもなく突然浮かんだ微笑みに対して、インヘルは自分でも訝しげであった。
人間というものが分からない、ただ不機嫌さを撒き散らすだけであろう自分自身には、とてもじゃないが考えられない表情だ……というのが、インヘルが真っ先に感じたことであった。顔をまじまじと見つめてくる2人分の視線に耐えかねて、彼女はぼんやりと虚空に視線を移す。
「ママ……もう一回! もう一回やって!」
「ここ数年で一番の衝撃です……! 一瞬誰だったか分かんなくなりましたよ!?」
ラストラリーがインヘルの裾をぐいぐいと引っ張りながら笑顔を催促するのに対し、ハートショットは目を丸くさせ、芝居じみた感じではなく、まるで本当に信じられないものを目撃したかのような様子だった。
「な、何だよ……私が笑っちゃ悪ィのか」
「悪くないよ! 悪くないから、もっかい!」
「ラストラリーちゃん、それじゃダメですよ! まずは笑わせる努力をしなければ! コホン……1番、ハートショット、モノマネします。えー、『おはよう』と鳴く猫」
動揺しながら目を背けるインヘルの顔色は、血色こそ無けれど、心の内では頬を真っ赤に染めていることが分かるほど、身振り手振りが露骨だった。
どうしてあんな風に笑えたのか、見当もつかない。血液を流さない心臓が、疑念半分のうちに高鳴るのを感じる。
「あ〜〜〜うっせぇ!! 私は魔女の見張りに行く! ビナーがやってんだろ!? 交代して来るから、2人で勝手によろしくやってろ!!」
そんな鼓動を誤魔化すように、インヘルは騒がしく足を踏み鳴らして部屋から出て行った。自分がサテンの寝間着姿のままだということにも気付かず、下唇を噛むその内側でぶつくさと小言を呟きながら、魔女を拘束している別棟の倉庫へと一心不乱に早歩きで向かって行く。
怒涛の勢いに対応する間もなく部屋に残された2人は静かに顔を見合わせ、同じタイミングで思わず吹き出してしまった。
「あっはははッ……痛だだだだ! うぐっ……アバラが……ふふっ……わ、笑っちゃいけないんでした……」
「くすくす……私、初めて見たなあ。ママがあんなに分かりやすく笑ってるとこ……」
「ラストラリーちゃんもですか? 私も、何だかとんでもない珍獣に遭遇した気分ですよ。……にしてもあの人、照れ隠しなのか、あんな可愛いパジャマ……パジャマで外に……ふふふっ、痛たたたた……!」
込み上げる笑いと骨折の激痛から出た涙を指で拭う。怪我で少しナーバスになっていた彼女の気分は、昨晩とは比べ物にならないほど晴れていた。
そしてラストラリーも、初めて目撃したインヘルの顕著な「変化」というものに対し、とても満足そうに笑っている。彼女のそんな喜ばしい変化を、我が身のように感じている様子だった。
「――ふぅ……それにしても不覚です。まさかインヘル先輩に萌える日が来るなんて……」
「それは……ほらっ、ママは元から可愛いから」
「異議あり! 喋らず動かずだったらそうでしょうけど!」
◆ ◆ ◆
「交代の時間だオラァッ!」
冬に備えて食糧を貯蔵しておく為の倉庫の木製扉が強引に開かれた。
突然の爆音と差し込む光に、流石のビナーも一瞬だけ肩をビクッと跳ね上げさせると、恐る恐る声の主の方を向く。
案の定、倉庫の入り口にはインヘルが立っていた。それもやたらと不機嫌そうな表情で。そんな苛烈な訪問客は、開口一番で手短に要件を伝える。
「流石に休め!」
「は、はあ。では、お言葉に甘えて。あの、ところで……交代時間には少々早いのは良いとして……」
「どうした!」
「何故寝間着なんです? 服は修繕を済ませ、洗濯籠に入れておいたのですが」
刹那の沈黙。インヘルがゆっくりと、自分の身体を見下ろすように顔だけを足下の方へ向ける。寝起き感丸出しの、とても外出には向かない服装。
自らの格好を顧みた彼女は暫くの間フリーズしていたが、やがてその言い訳を探り当てたようで、何の変化もない不機嫌な声色のまま、堂々とこう言い張る。
「魔女へのハンデだ!」
「んん……? な、成程?」
ハートショットたちとのやり取りで恥じらいに支配された脳では、やはりまともな判断など出来るはずもなく、必死に捻り出したこれが限界だった。ビナーは頭の上に疑問符を浮かべながらも、とりあえず休憩時間が確保出来たとして、インヘルに会釈をし、倉庫を後にしようと歩みを進める。
「……では、私は休憩に入らせて頂きます。お気を付けて」
最後に意味深にそう呟き、彼女は丁寧に、倉庫の扉を音を立てないよう優しく閉めると、その足音は遠ざかって行く。
インヘルは思いがけず乱されてしまった態度を軽いストレッチで整えながら、倉庫の奥の柱にくくりつけられ眠る魔女の姿に視線を向けた。
そういえば初対面だ。ハートショットから大雑把な容姿の特徴は聞いていたが、やはり又聞きだけでは腑に落ちなかったところも、こうやって実際に顔を合わせてみると、彼女の説明は適当なものではなかったのだなと分かる。
曰くインクブルーの長髪が特徴的な、とても殺戮のプロとは思えない小柄な女。立ち居振る舞いまでは見ていないが、どことなくハートショットに似ているという印象を魔女に対して抱いていた。
「(スゲェなコイツ。どうしてかは分かんねぇが、一発でカタギじゃねぇことが伝わってくる……ああ、そういう事か。妙に呼吸が落ち着いてんだ)」
雷の魔法に打たれたというのに、身体がそれを一刻も早く回復させようと余計な運動を排除している。その合理的に練り上げられた肉体と精神がインヘルの直感にまともではないイメージを刷り込んだ。
大きく損耗しているというのに、どこかで平常を取り繕おうとする。きっとこれは強いられた技術。そうしなければ生きていけなかった者たちの生体反応である。
◆ ◆ ◆
置きっぱなしのオリーブの実が入った樽を椅子代わりにして見張りを始めてから、1時間ほどが経った頃だろうか。取り乱した気持ちを漸く完璧に抑え、集中している時にそれは起こった。
通常、気絶した人間は唾液の分泌量が極端に落ちるとされている。本当に意識を失っているかを表す指標の一つだが、インヘルは魔女がそれを嚥下したことを正確に捉えた。
「……」
両腕をフリーにしてだらりと脱力すると、横目でクラメルのことを睨み付ける。その視線に痺れを切らしたのか、はたまた諦めたのか、魔女は暫く大人しくしていたが、やがて直ぐに本性を現した。
やはり彼女の魔法の初動は尋常でなく早い。しかしハートショットの予測回避とは異なり、人外じみた動体視力と反射神経という人間性能の部分で遥かに上を行くインヘルは、間一髪で眼球のすぐ真下を掠めた水の刃を回避すると、魔女の身体に残った痺れによる隙に乗じて、右手を相手の額に突き付ける。
「ッ……あー、はいはい。降参。この調子じゃあ逃げ切れそうもない」
「見切りが早いようで助かるよ」
眼窩の近くを軽く傷付けられても瞬きひとつ見せなかったインヘルの様子を見てクラメルも観念したらしく、両手脚を麻縄でぐっと締め付けられた状態のまま息を吐き出して、仄かに無抵抗の意志を示す。
そんな中でクラメルは、インヘルの眼球のすぐ下に付けたはずの傷が瞬時に塞がる様子を見て、何かにピンと来たかのように納得する素振りを見せた。
「まさか、キミが葬儀屋? 不死身で粗暴で子連れの、陰気なローブ姿っていう噂だったハズだけど……随分と洒落っ気のある格好じゃないか」
「オフの日はだいたいコレだぜ」
「……冗談を言う性分だとは驚きだよ」
「抜かせ。驚くなら眉のひとつくらい動かせってんだ。人形みてーな奴だな」
闘争の意志が消え失せた光の無い瞳を見て、インヘルも敵の額に突き立てていた右手を下ろす。
「……噂は信じるものじゃないね。キミは話に聞くよりも随分と表情豊かだ。人間味がある。どちらかといえば僕寄りな奴なのかと思ってた」
「チッ……余計なお世話だ」
自嘲気味に口走るクラメルのそんなむず痒い言葉を耳にして、インヘルはさも迷惑そうな表情を浮かべた。
賞賛寄りの台詞に、何故ここまでインヘルが嫌な顔をしているのか、クラメルには見当もつかなかったが、やはり少し人間味というものが強くなった表情というのは非常に読みやすい。インヘルの表情の裏側に「自覚」と、ほんの僅かな「充足感」というものを、クラメルは敏感に感じ取っていた。
「それで、話に聞く『子連れ』ってのもデマなのかい?」
「連れてくる訳ねぇだろ。手前の判断力は異常だ。一瞬で人質になって終わりだぜ」
「……成程ね」
つまりその「子供」には、人質としての価値があるということだろう。クラメルはその事をつい指摘しそうになったが、自分が不利になりそうな情報を漏洩させることを、無意識の貧乏性が許さなかった。代わりに彼女は、またしても自虐的に鼻を鳴らす。
「っと……変なペースに乗せられる所だったな。どうも今日は調子が悪ィ。聞きたいことがあるのは私だ」
「僕のような敗残者に何を聞くんだい。もう……僕は疲れ果てた。気力の無い会話しか出来る気がしないよ」
どうやら冗談ではなく、クラメルは憔悴しきっているようだった。
敗北したのだ。彼女にとって「負けること」とは、自分の積み上げてきた技術も、覚悟も、全てが否定されたに等しい。
吐き出す言葉の軽さとは裏腹に、悔しさだけが全身を支配している。後悔のない悔しさは、その思いをした事がある者にしか分からないのだ。
本調子であれば、先ほどの不意打ちでインヘルの眼球か耳のどちらかを抉っていただろう。しかし見限られたような思いに満たされた頭と、抜け殻のようになった身体は、どうしても上手く機能しない。
どれだけの想いを乗せていたとしても、それを推し量ることなど、赤の他人はしてはくれない。涙を流し、何処かの騎士の物語のように「殺せ」とでも言い放ってしまえれば……そしてそのまま死んでしまえれば、どれほど楽だったか。
それを赦さなかったのは他でもない自分自身。
まだ抗い、生きようとしている。自分の「生きたさ」にしがみつく、か細い生存本能だけが、今のクラメルだけを繋ぎ止めていた。
「思うに、こういうのには因果がある。物奪りは金持ちにはなれないし、傲慢な奴は満足が出来ない。それと同じように、人殺しは結局、永遠に幸福にはなれないんだよ。いよいよ僕にも順序が巡ってきた」
彼女は厭世的なことを呟きながら、かつての自分の同僚たちの顔を思い浮かべる。行方どころか生きているかも分からないということは、つまりそういう事なのだろう。自分の為に他人を殺すことを選んだ時点で、いずれ順番が回ってくる運命なのだ。
「キモいな」
「……へっ? いま4文字で否定した? 僕の話聞いてたよね?」
そんなクラメルの言説を、インヘルは呆けたような顔でぶった斬る。
火を見るよりも明らかに頭の上に疑問符を浮かべ、「本気で意味がわからない」とでも言いたげな表情だった。
「この世に永遠に赦されないことなんて無ェよ。償いも出来ないことをしでかして、誰かに赦されない為に生まれてきた訳じゃねぇだろ。私ゃそんな狭っ苦しい世界なんかで生きたくない」
「……」
「『仕方ない』は在るよ。人が生まれ持って平等じゃねぇ限りはな。恨まれもするし、赦してくれない奴だって居るけどよ……死ぬときくらいにゃ、誰かが手前を赦してくれるぜ」
サマルの村での一件は、インヘルの考えをここまで大きく変貌させていた。人を弔うことの意味するところ。その片鱗を味わったインヘルは、もはや死をただの「停止」だとは考えていない。
弔いとは即ち、継承と贖罪の形のひとつだ。自分の役割や、心の内に抱く「魔獣を狩る」という使命感は、弔いすらされずに奪われていく人々の命を守るために存在しているのかもしれない。インヘルは暗闇の中で迷うだけの魔女ではなくなったのだ。
「(誰かが……赦してくれるだって? なんて馬鹿馬鹿しい。僕は……取り返しのつかないことばかりしてきた。間違いの選択肢を進み続けた。分かってる……そんなの、分かってるのに……)」
それを聞いたクラメルの脳裏に浮かんだのは、幼かったあの日、自分に小さな幸せをくれた少女のことだった。
シャルル・フォン・パルマ。
クラメルに心を与え、同時にその心を狂気の雫で満たすきっかけともなった、愛しい人。
――彼女は、果たして僕のことを赦してくれるのだろうか。
頭の中では否定していた。
きっと彼女はとても怒って、拗ねて、口もきかなくなって……
しかしクラメルのインクブルーの瞳に映ったのは、最後には仲直りをして、自分を抱きしめてくれる、痩せ細った少女の幻影だった。
「(……都合の良い幻覚だ。でも、どうして……ああ……僕はまだ……シャルルにこうしてもらいたかったんだ……)」
光も届かない深海のような瞳に、淡く光が差す。
彼女の頬を伝うのは、その訳すらもハッキリしない涙だった。
「あ、あれ? 僕……?」
「……オイ。しみったれてんじゃねーぞ。いい加減、あの魔獣のことを話しやがれ」
「いや……あ、あはは……ごめん……何か、キミの話聞いてたら急に……」
「私の話は説教じゃねェ」
「分かってるよ……だけど……ああもう、分かんない!」
縛られた手では拭えない。とめどなく溢れてくる感情の波に身を委ねるだけだった。しかし不思議と絶望が胸を支配することはなく、ただどこか、自分の役割という重荷を、ひとつ下ろしたような気分になっていた。
「だけど……ありが、とう……?」
「はぁ〜? 私の方が意味不明だわ。何でとっ捕まえた奴の一味に礼なんか言うんだ。ほら話せー、口を割れー」
面白い、続きが気になる、などと感じて下さったら、ぜひブックマーク・評価・感想などお待ちしています。
また、本作は第二部です。もちろん第一部を読まずともお楽しみ頂けますが、第一部を読んでいると気が付ける様々な内容が隠れているので、よろしければそちらも是非どうぞ。
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完結済みです。4000文字30話くらいの構成で短めです。




