旅の仲間 その2
「そして、こちらが魔法使いのポップルと賢者のピクル様です。
この二人には召喚の儀式を手伝っていただきました」
続いてリリアナは自分の後ろにいる二人の人物を紹介してくれた。この二人は最初に目を覚ました時にいたので少し見覚えがあった。
紺色のローブを着た方がポップル。古代ギリシャ人のような服を着ているのがピクルというらしい。リリアナが名前に様をつけていたことが少し気になる。立場的にはこのピクルという人物が一番偉いのだろうか、とぼんやりと思った。確かに、ピクルの短く整えられた髪には少し白いものが混じっていて、紹介された者の中では一番年長者に見えた。
「賢者ピクルと申します。大勇者様、よろしくお願いいたします」
「俺はポップル。
まっ、大勇者様は俺の後ろに控えていてくれればいいさ。雑魚は俺の魔法ででみんな消し炭にしてやるからさ!」
「ポップルは大魔法の使い手です。特に炎系の魔法を使わせたら右に出るものがないと言われています。
そして、ピクル様は神聖魔法以外のあらゆる魔法を自在に扱えるます。魔法理論、古代魔法語の専門家でもあらせられます。
さあ、大勇者様からもなにかお言葉をお願いします」
突然、リリアナからキラーパスがきた。
「えっ? えっ? 僕から?!
そんな、僕なんて無理だよ」
「そんなことありません。英雄様は大勇者として選ばれたのですから、自信をもって下さい」
リリアナに励まされ、僕は改めて目の前の人たちの方を見た。リリアナ、ポップル、ピクル様が期待を込めた視線を返してくる。さっきまで追いかけっこをしていたガイナックとシャンリーさえ動きを止めて、僕の言葉を待っている。頭が真っ白になりそうなのを必死に堪えて、僕は口を開いた。
「えっと、翌檜英雄と言います。2、26歳です。
ここに来て、魔王を倒せって言われて、なんか良く分からないですけど、と、とにかく頑張ります」
パチ パチ パチ パチ
えっ?
なんかみんな笑顔で拍手してくれた。あんな、噛み噛みでしどろもどろな自己紹介をちゃんと受け止めてくれたんだ。
胸の中に熱いものが込み上げてきて、視界がぼやけた。
「どうされたんですか?
なんで泣いているのです」
リリアナが驚いたような声をあげた。
僕は慌てて袖で涙を拭いた。
「いや、なんでもないよ。ただ、仲間っていいな、って思っただけさ」
「仲間?」
リリアナは少し驚いたように目を見開き、ガイナックたちと顔を見合わせた。ガイナックとシャンリーはニヤリと笑い、マドーラは微笑み、ピクル様、ポップルは小さく頷いていた。
リリアナは改めて僕の方へ満面の笑みを返し、言った。
「ええ、そうですとも! 私たちは仲間ですわ」